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シリーズ:ひきこもりマサオのはじめてのおつかい
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ひきこもりマサオのはじめてのおつかい

作者:かにゃんまみ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    ゲームの世界が彼のすべて


    登録ユーザー星:8 だれでも星:4 閲覧数:352

    ひきこもりマサオのはじめてのおつかい 7470文字

     

     ここはアメリカのニューヨークタイムズスクエア。高いビルが林立し、賑やかで色とりどりの企業の広告が目立つ。車の往来はなく辺はガランとしていた。透けるように空は真っ青だった。
     そこになにも予告なしに動物の着ぐるみ集団が現れる。手にはカラフルな風船を持ち、陽気な音楽と共にパレードが始まった。彼らの周りに何事かと人垣ができていく。
     陽気に歩く猫の仕草に人々は目を白黒させ、でっぷりした体のヤギが間抜けに踊るのを笑った。目の前を飛び跳ねるウサギの仕草に、同じように子供達が跳ねる。
     子ねずみたちの持っている風船をそれぞれ子供たちはねだる。そうしていつまでも楽しく華やかにパレードは続いた。
     金髪の少女の前にウサギが躍り出て風船を渡す。彼女は目を輝かせてそれを受け取った。ウサギは続けて後ろ手に陽気なダンスを踊り出した。みんなは笑う。しかしキラリと光る何かが少女の頭を掠めると、ぬめりとした赤い液体が一瞬で少女の髪の毛と顔、ピンクのシフォンワンピースに飛び散った。風船の代わりにウサギの白い手には鎌が握られていた。その切っ先には鉄の匂いがする血が滴っている。自分の背丈より高い大人達の首がなくなっていて、少女は悲鳴を上げた。
     パレードのあちこちで着ぐるみ達が陽気な笑い声を上げながら、鎌や斧で人間への殺戮を始める。
     首がなくなった大人たちの背中に姿を隠しつつ、混乱と恐怖で真っ青になっている少女の腕を俺は引っ張った。そして防御柵のある安全地帯になんとか逃げ延びる事ができた。
     しかしそこは資源がない。数キロ先の仲間のいるところへ物資を取りに行かなくてはならない。
     奴らは姿が見えたら攻撃してくる。潜伏班に任命された俺は息を潜め気配を消して行き、災害用のリュックで物資を運ぶしかないのだ。
    『マサオさん、水がここにはありません、助けてください』
     助けた美少女に俺はお願い事をされる。
    「任せなさい」
     トントン。
    「将生、でてきなさい。朝ご飯よ」
     突如現実に引き戻され、焦りと共に手元のマウスがぶれてしまった。その拍子に子ネズミ集団に俺は見つかりそうになる。俺がゲームの世界にどっぷり浸りたい時に、ドアの向こうからノックとともにやけにのんびりした母親の呼び声が聞こえた。パソコンの時計が午前七時丁度を指していた。
    (ちっ、ババァ。てめぇのせいでミッションが失敗するとこだったじゃねぇかよ)
     心の中で毒づいてしばらく俺は黙っていた。
    「……ここ、置いとくからねー」
     ドアの向こうから力ない声とガチャンと食器の置く音が聞こえた。
     一方、ゲームでは子ネズミ集団から逃れ、物資を運ぶことに俺は成功する。一つのミッションが解決すると安全地帯の美少女から俺は感謝された。実に照れくさくもあり誇り高い瞬間である。いつの間にか俺は使命感を感じるようになってきた。
    (さて、次のミッションへ行くか!)
    『マサオさん、次は食料を取りにここに行って欲しいの』
     美少女が手を組みながら瞳を潤ませて俺を見上げる。
    「任せなさい、君のためならどこまでも行ける俺なのさ」
     午前八時丁度。ババァの気配がして再び黙り込む。俺が飯を食わないでそのままにしておくと、ババァはなにも言わずにそれを引き上げた。
     道中は気が狂った着ぐるみ達を次々と見かける。猫のヒステリーミは動きが早く、サバイバルナイフを振り回す接近戦が得意。ウサギのジャピングは跳ねながら鎌を振り回す。でっぷり太っていて動きは遅いがヤギのメメーンは斧の攻撃力が強い。そして奴らはある一定の動きをしている。手に持ってるスマホで街の監視カメラを見ることができた。アメリカナイズなスラムと化した街で奴らの動きを見ながら、時には建物の陰に隠れたり、ゴミ収集のバケツを被りながら俺は移動した。
     午前九時半。ドンドン。 
    「将生、学校へは行かないのかー」
     今度はかったるそうな親父の声が聞こえる。
    (うるせぇよジジィ、学校? 冗談じゃない。あんな奴らと一緒にいられるか)
     教室は沢山の生徒がいたけれど、誰ひとりとして俺に話しかけるものはいなかった。それはそれでいい。透明人間、空気でよかった。
     けれど、ある日俺が持ってた携帯のゲームを取り上げられ、抵抗したらボコられた。ボコられまくって気づいたら空が見えた。空は透き通るように青かった。そうニューヨークタイムズスクエアの空のように。
     「ウェルカーム!」と陽気な笑い声を上げながら鎌を振り回し、ウサギのジャピングが徘徊している。ヤギのメメーンを眠り薬のしかけで眠らせ、奴から奪った斧を持つ。そのまま建物の二階へ俺は忍び込んだ。
     背を向けているジャピングを窓から見つけ、すぐに斧を力一杯ブーメランのように投げつけた。斧は見事にジャピングの首に刺さり、その瞬間血が飛び散った。
     中途半端に切れたせいで首がおかしな方向に曲がりながらも、奴はまだ生きていた。そして跳ねながら「ウェルカームー!」と首をカクカクさせている。その格好が滑稽でパソコンの画面を見ながら俺は口を抑えて笑った。
     正午。しばらくしてまたババァが昼飯を持ってドタドタ上がってきた。
     トントン。
    「将生、ご飯よー。せめて顔だけでも見せてよー」
    (ちっ、クソッ、話しかけるから気がそれて奴らに見つかりそうになっちまったじゃねぇかよ! マジ殺すぞ、クソババアいい加減にしろ)
     午後一時。俺が昼飯を食わないので、ババァが食器を片付ける。そして必ず決まってこんな事を言う。
    「将生、コンビニに買い物に行ってくれないー?」
     それがなんとしてでも引きこもりの俺を部屋から引き出す口実だ。俺はドアを睨みつけた。
     階下のリビングではジジィがテレビを見ているらしく、時たまケタケタ笑う声が聞こえて俺は手元のマウスを震える手で握り締めた。
     午後三時。ジジィは決まってその時間にトイレに長居に行く。トイレの流す音も上の部屋に聞こえてくる。俺はパソコンのマウスのクリックを連打した。手当たり次第拾った爆弾やブーメランを奴らの背中に叩きつける。
     物凄い爆風が起きた。耳にしているイヤホンからは同時に爆音が聞こえる。奴らがバラバラに吹き飛ぶのを見て俺は心の中で爆笑した。
     午後六時。夜になると、またババァがガチャガチャと音を立てて食器を持ってくる。そしてガシャンとドアの前に置いた。どうも苛立ってるようだ。夕方になるにつれて行動が雑になってくる。
    「将生ー。晩ご飯だよー。ここに置いておくからねー。一口でいいから食べてー」
    (よく飽きもせずに持ってくるな。いらねぇってんだよ! クソが!)
     ババァを無視して、机の上の非常食用のお菓子やら飴などを俺は自分の口に放り込んだ。引きこもる前にもともと自分の部屋に置いてあったものだ。どれも賞味期限は過ぎていたが、食べてみるとそんなに悪い味はしない。なにもないよりマシだった。
     机の上にあるブタの貯金箱に手を伸ばして、下にあるゴム蓋を取り中を覗くと、五百円玉が一枚横たわっていた。穴からそれを取り出そうとしたら、うっかり落ちてコロコロとベッドの方に行ってしまった。
     ベッドの下をすぐに覗き込んで目を凝らした。こめかみから汗が滲んでくる。
     ふと奥の方にネズミ捕りの毒だんごが仕掛けてあるのを見つけた。
     埃だらけのベッドの下にもぐり込み、五百円玉を取るついでに毒だんごも持って出た。
     夜中には更に迷惑なことが起きる。夫婦喧嘩でもしているのか階下が毎日騒がしい。物が壊れる音やがなり声を上げているので増々ゲームに集中できない。机の上に置いた毒だんごを睨みつけながら俺は歯ぎしりをした。

     午前七時丁度。ドンドン。
    「将生ー、でてきなさいー朝ご飯よー」
     ババァの声が聞こえた。寝不足の体にこの声は堪える。ババァはこうして俺の引きこもり生活が始まってから、毎日イヤミなほど俺に食事を運ぶ。そして一時間程したら食器を下げにくるのだ。よく飽きもせず毎日毎日同じことを繰り返すものだ。こうなると嫌がらせに近い。
     部屋に掛けてあったカレンダーは今年の1月のまま放置してある。あの頃はまだ布団に包まっていた。しかし今はもう半袖のシャツが汗ばむ。
     パソコンと携帯の時計が奴らの行動を教えてくれる。呆れるほど時間に几帳面な奴らは毎日決まった時間に同じ動作を繰り返していた。

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    コメント

    • とても面白かったです。
      好きなお話です。
      主人公~~( ̄д ̄)って思ってたら、結構格好いい奴じゃん!!になってました。
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    • 能上さんだ~v
      ありがとうございます。
      えっ、格好いいですか?
      私には最後までしょうもない奴だと思いますが(笑)
      最初が酷過ぎるからかな(*´∀`*)
      • 5 fav

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    • 共に戦おうって思います。
      深刻な戦い方じゃなくてこういう戦い方もありです!
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    • ある意味シミュレーションとしてはばっちりですよね(笑)
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    • ワタクシ的に『ババァ』という直截な表現が、それそのものは卑下が込められた言葉なのに、なぜかとてもユーモアに感じられる作品でした♪ マサオの毒技見参(*^_^*)デスネ
       
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    • こんばんは。感想ありがとうございます! マサオは口は悪いのに度胸がないのがなんとも情けないと思っています。(´Д`;)
      しかし、ババァの言葉の中には、彼の中の強がり、恐怖、現実を直視しないという色々な意味を込めたつもりです。私の文章はどうしてもどこか何かを茶化したような軽い感じになってしまうなぁというのが、恋愛小説からのもっぱらの悩みなのですが、皮肉やユーモアをどこかで感じていただけるのであればそれはそれで良かったのかもしれません。(*´∀`*)
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    • 最初は『うわぁ』と思いましたが、一度読んでから最初のやり取りみるとゾクッとしました。
      途中まではだんだんホラーになってきた・・!
      と思っていたんですが・・
      これ以上はネタバレになるので割愛します、面白かったです!
      • 5 fav
      • Re 返信

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    • ねこまんまさんありがとうございます。
      そしておっしゃる通りにゾクッて感じに(笑)
      後半はどんな風に展開させるか悩んだのですが、もう少ししつこく あれ に執着させようと思います。そして後は文字数との戦いであります(´;ω;`)
      集中してたら文字数超えてしまって慌てて修正しました。
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    作者紹介

    • かにゃんまみ
    • 作品投稿数:37  累計獲得星数:309
    • 初めまして。2014年の3月末位から初めてここに投稿させていただきました。

      ツイッターかにゃんまみで登録しました。BL小説書きの方とフォローしたいです。よろしくお願いいたします。

      長い間BLの小説を趣味で書いています。
      絵を描くのも好きですが、小説を書くのも大好きです!
      職業はゲームのドットやアイコン背景画のデザイナー?(^^;しがない絵描きです)
      フロンティアワークスさんのゲーム。三千界のアバターのシナリオのお仕事もさせていただいています。

      BLサイトはhttp://bluemoonlight.sakura.ne.jp/です。
      不束者ですがよろしくお願いいたします。

      最近好きな物。あいうえお順。種類雑種;



      アガサクリスティー
      阿部寛
      イトケン
      エルキュールポアロ
      小山慶一郎
      堺雅人
      指原莉乃
      志倉千代丸
      鈴村健一
      筒井康隆
      仲間由紀恵
      羽生結弦
      ユリアリプニツカヤ
      ポルノグラフティ
      (他にも色々あるけど……)
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      帰還~moonlight~:http://bluemoonlight.sakura.ne.jp/

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