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シリーズ:てのひらあわせ
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インターン①

作者:あさい

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    作家×大学生。一週間の期間限定で作家の身の回りの世話をすること、また、完成原稿を貰ってくることになった優(さとる)。少し変わり者の作家・岡本とうじに振り回されるも、放っておけないため――。
    ※作家は亡き妻がいたりします。女性との絡みもあるので苦手な方は気を付けて下さい。


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    インターン① 12353文字

     



    「ただの説明会、みんなで仲良くグループワーク、なんて面白くないわよね。インターンなんて名ばかりで、正直そんなの受け入れるくらいならバイト雇ったほうがうちみたいな弱小出版社はいいのよ」


     △ ▼ △ ▼

     募集要項には私服でもいいと書かれていた。間違ってはいないはず。だがしかし、インターンに訪れた学生の大半がリクルートもしくはカジュアルスーツスタイルだった。ワイシャツとジーンズという超自然体なままでやってきてしまった自分を後悔する。こいつ、正気か? という目線が痛い。20人ほどの学生が控えの会議室で横並びになって座った。視線は合わないものの互いに意識しているのは明らかで、どこか空気が張りつめている。すでに彼らの中では就活戦争が始まっているらしい。そのような緊張感を少し分けて欲しいぐらいだ、園崎優(おかざきさとる)はネームカードを首から下げて息を吐く。
     想定していた人数よりも多い。あまり聞いたことのない出版社だったので、集まりが悪いかもしれないと考えていた。それは的外れのようである。大小関係なくこれも就職活動の一環として真剣に取り組んでいるのだろう。
     やはり、来るんじゃなかったと頭を掻いた。
     緊張していた雰囲気のなかで人事担当だろう社員が会議室に入ってくると、いっそう張りつめたものとなり胃が少し重くなる。

    「これから一週間、様々な部署を見てもらい、体験してもらいます。社会人になることとはどういうことか、水鳥(みどり)出版はどのような会社なのかよく知ってもらうため」

     挨拶もほどほどに、さっそくグループ分けが始まった。名簿片手に名前を呼ばれて、A・B・C班に次々と振り分けられていく。
     横でそわそわと落ち着きがない女の子が緊張で死んでしまわないか心配だ。時計をちらりと見て、一日がまだまだ長いことを確認した優はぼんやりと呼ばれるのを待った。

    「それから……そうね、貴方はちょっと別にいいかしら」


     名前を呼ばれたがどのグループに振り分けられることもなく、優は別室に呼ばれたのである。
     先ほどの人事担当であろう女性社員と二人きりの空間になり、もう帰りたい気分でいっぱいだった。眉間にははっきりと皺が刻まれ、目尻が上がり気味になっている。元から目つきが悪いのか、または、何かしら怒らせてしまってそういう風にさせてしまっているのか……甚だ見当はつかない。

    「それで」

     テーブルを挟んで向かい合う。手元の紙に滑らせていた視線をふいに上げた相手は短くそれだけを問いかけてきた。

    「はあ」

     間の抜けた声だ。それで、という質問はそもそも質問という体をなしていない。答えようがないじゃないか、意図を汲み取れない優は言葉を曖昧に濁して緩く笑う。
     見ていた紙、多分、インターンに参加する際に提出しなければならない応募用紙だろう。これは面接なのだろうか、そうであれば、お帰り下さいの一言で開放して欲しいものだ。

    「君まったくやる気ないでしょう?」

     やっぱり駄目じゃないか。
     やはり、スーツを着てくるべきだったようだ。朝、「別にいいんじゃない私服で」とテレビに視線を向けたままで適当に答えた母親を強く恨む。
     取り繕うことさえもできなくなった優は意味のない笑顔を浮かべ続けるしかなかった。


      ▼ △ ▼ △


     A3のコピー用紙四枚分のレジュメ。すぐ後ろのホワイトボードには、その補足的解説を黒のマーカーで書き綴っている。一通りの説明をし終わった優は一呼吸置いてから質疑応答に移ります、と告げた。
     誰もが面倒そうに顔を顰めている。内容を自分の頭で理解することにも一苦労、さらにはそこから何かしらの疑問点、主張を述べなければならないとなると軽々しく口は開かなかった。

    「はい」

     たった一人を除いては、の話だが――優は眉間に皺を寄せてしまいそうになるのを何とか誤魔化して挙手した人間に視線を向ける。

    「どうぞ、坂木くん」
    「二つの疑問点があります。まず初めに、二番目の論点の判断過程の――」

     さっきまで欠伸を漏らして、教授から見えない位置でスマートフォンを弄っていた姿はどこにいったのか。水を得た魚のごとく饒舌に話し出した男は重箱の隅を突くような質問を始める。それは質問というよりも、演説に近く、これが一旦始まってしまうと中々終わりがこない。これを鬱陶しく思うのは発表者である優、ゼミの残り時間を潰してくれるという意味で喜々とするのはその他ゼミ生。
     ああ、地獄だ。優は早く終わってくれまいかと願いつつ、相手が言わんとする意図を汲み取り、これ以上の質問を遮るための答えを頭で捻り出す。しかし、現実は厳しく、ここで優がどんな良い答えを出そうとも相手は黙って引き下がらないだろう。

    「それについてはさっきも説明したように」

     丁寧に一つ一つの疑問点を潰していく。一つ片付けるたびに相手の顔には面白くないという表情が浮かび上がった。最終的には怒りに変わるその様は毎度のことながら顔を背けたくなる。
     すべて言い終わった瞬間にさらなる追及を試みようとしたが、第三者の介入によりそれは妨げられた。

    「それはさっき私が口頭で説明しました。同じことの繰り返しになっていますので、その質問はもう一度2−1の部分を読み返し下さい。それでも納得がいかないというのなら、私に質問して頂けますか?」

     ばっさりと坂木を切り捨てたのは同じく共同発表者である青葉だ。
     先ほどから質問してきていた箇所は青葉が担当した部分なので本来答えるべきは彼女である。優が答える必要はなく、坂木もそれを言われると押し黙って、渋々と頷いて見せた。それから、青葉の言葉で質疑応答が再会されて比較的円滑に残り時間を乗り切る。
     青葉の頼もしさに感謝しながら気付かれぬよう息を吐いた。




     ゼミが終わり、ほっとした優はホワイトボードを片付ける。

    「お疲れ様」
    「お疲れ、さっきは助かったよありがとう」

     背後から声をかけられる。青葉だ。優の手からボード消しを取るとホワイトボードの文字を消し始めた。仕事がなくなったため、とりあえずテーブルに散乱している自分の資料を集めることにする。 

    「いいの。だってあそこは私のところなのになんで園崎くんにばかり質問するのかしら」

     その理由はいたって簡単だ。坂木が優のことを嫌っているからである。
     なぜ、嫌われているのかは知らない。坂木に対して何をした覚えも、そもそも親しい間柄でもないのだが――無条件に最初から嫌われていた。無理矢理、理由をつけるのならば、坂木の慕っているゼミの瀬野教授と優が仲が良いこと。教授に評価されたくて堪らないらしい。事あるごとに質問をしたり研究室を訪ねているようだ。彼に比べてやる気も少なく、適当にみえるだろう優が教授になぜか気に入られているとなれば腹が立つのもしかたなかった。それぐらいで、一々目くじらをたてる坂木のことは嫌いとまではいかないが理解できない人種である。

    「俺がもう少しちゃんと発表してればよかったんだ。ごめん、青葉に迷惑かけたかな」

     そんな彼との関係を青葉にいったところでいらぬ波風を立たせるだけだろう。
     綺麗に片付け、冷房機器などの電源を落したことを確認する。部屋の鍵を閉めて、その鍵を返すために学部の事務室へと急ぐ。夕方、事務室を閉める時間を過ぎると事務員がいい顔をしないために時間厳守だった。
     スカートをふんわりと翻しながら、階段を軽快な足取りで降りる。彼女がその細い足を跳ねさせるのを見ていると簡単に折れてしまいそうで怖い。ゼミで疲れ切った優は、飛び跳ねるような元気はなく重たい足取りで降りた。

    「ううん、いいの。それよりこれからご飯いかない? せっかく前期も終わることだし」

     待ちわびていた様子の事務員に一言礼を告げて鍵を返す。
     青葉は扉が閉まるのも待たずに優を食事に誘った。

    「ごめん、今からバイトで……また今度」

     すると明るかった表情が一変、無にも等しいぐらい顔から感情が消え失せる。辛うじて口元だけは笑いを作っていた。

    「そっかー残念だなあ。園崎くんっていっぱいバイトしているけど、なに、彼女とかのため?」

     探るような目、何気ない質問を装っているが何かしらの情報を引き出そうという意図が作ったような笑顔から透けて見える。

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    コメント

    作者紹介

    • あさい
    • 作品投稿数:1  累計獲得星数:1
    • まったりゆったり。腐っていてどうしようもない。湿っぽい話がすきです。
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