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シリーズ:アイムホーム~あなたの家になりたい
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アイムホーム~あなたの家になりたい

作者:くろねこ8

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    住人×アパートの精のハートフル(?)ラブコメ。
    なぜかアパートの精が見えてしまう主人公。しかも、そのアパートの精にマジ好かれされてしまう。
    一方、主人公には別に好きな人がいて・・・


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:194

    アイムホーム~あなたの家になりたい 2147文字

     

    「ただいま」
     その言葉を口にしたのは何年ぶりだろう。
     少なくとも月島優人が記憶するかぎり、それは、もう十何年も前の話だ。
     それを今、ふと口にしてみようと思ったのは、いうなれば単なる気まぐれにすぎなかった。そもそも、恋人もいない一人住まいのアパートで、「ただいま」などと口にしたところで答える人間は誰もいないわけで。
     だから。
    「おかえりなさい。優人さん」
     思いがけず部屋の中からそんな声が帰ってきたとき、優人は文字どおり凍りついた。
    「……は?」
     靴を脱ぐ足を止めたまま、信じられない気持ちで顔を上げる。目の前の、誰もいないはずの暗闇に明らかに人間の気配がする。
     ――まさか、泥棒……?
     咄嗟にスイッチに手を伸ばし、明かりをつける。
     ぱちりと灯った蛍光灯の下、古ぼけた2DKのダイニングにその男は立っていた。
     身長はゆうに一八〇を超えているだろう。カジュアルなTシャツとジーンズに包まれたその長身は、モデルか何かのようにすらりと均整が取れていて、どこぞのショーウインドーに立っていても恐らく違和感はないだろう。整っているのは身体だけではなく、ほっそりとした色白の顔立ちに、研ぎ澄ましたように細い鼻筋、くっきりと整った眉目は、まるでどこぞの芸能人か何かのようだ。
     ぱっちりと見開いた二重瞼の奥には、くりくりと、やけに楽しそうに光る黒い瞳。
     男でも見惚れるほどの美男子だ。ただ――見覚えはない、全く。
     ……不審者だ。
     おもむろに優人は後退ると、うっかり洗面所でゴキブリを見つけてしまったときの要領でそっと玄関の戸を閉ざし、それから、ダッシュでアパートを離れた。
     一区画ほど離れたところでようやく警察を呼ばなければと思い立ち、スーツの懐からスマホを取り出し一一〇番する。
    「もしもし、警察ですか――」
     待つこと約十分。近所の交番から駆けつけた警察官とともに再びアパートに戻った優人は、しかし、そこで妙なシチュエーションに遭遇することになる。
    「いないですねぇ」
     そう言って、怪訝そうに部屋の中を見渡す中年警察官の背中を優人は信じられない気持ちで睨みつけた。
     ――目の前にいるじゃねぇか。
     そう。警官とともに今一度部屋を覗き込んだとき、例の不審者は相変わらず部屋の中にいて、あまつさえ台所で溜まった汚れ物なんぞをわしわしと洗っていた。
     しかも、無駄に手際がいいときている。
    「あ、おかえりなさい。んもう、どこに行ってたんですかぁ優人さん。 ――あれ? そっちの方はお知り合いですか?」
    「……あの、すみませんが」
     不審者の不審な挨拶に答える代わりに、優人は警官に声をかけた。
    「あそこ。いるじゃないですか。ほら」
    「えっ?」
     振り返る警察官に、さらに優人は言う。
    「いや、え、じゃなくて……ほら、台所で洗い物してるでしょ、今」
     言いながら振り返ると、すでに男は台所から消えていた。だが、不審者の確かな痕跡として、シンク脇に敷いた吸水マットの上には、洗い終えた食器が丁寧に重ねられている。
    「ダメですよ優人さん」
     意外な方向から声がして、見ると、例の不審者が今度は洗面所の引き戸から顔を覗かせていた。
    「忙しいのは分かりますけど、洗い物はこまめに洗わなきゃ。――あ、お風呂の方はいま沸かしていますので、もう少し待ってくださいね」
    「なに……言って……」
     きみ、と肩を叩かれ我に返る。振り返ると、いつの間に手帳を取り出した警官が、怪訝な目で優人を見上げていた。
    「よければ、君が見たという不審者の特徴を教えてくれないかな?」
    「え? と、特徴なら……」
     目の前にいるだろう、当の本人が――と、喉まで出かかるのを優人は慌てて止める。
     どうもおかしい。何かが決定的に噛み合っていない。
    「ああ、見えないんですよ、僕」
     またしても不審者が口を開く。その場違いな笑顔に、優人は腹が立つのを通り越してなぜか怖くなる。
     見えない? 何が?
    「あの、一つ伺ってもよろしいですか」
     おそるおそる、不審者を指さしながら優人は警官にたずねた。
    「見えませんか、あれ」
     警官は、はて、という顔で優人が指さす方を一瞥すると、なお一層怪訝な顔で優人に向き直り、はぁ、と肩で溜め息をついた。
    「今回は大目に見てあげるけど、あまりオジさんたちをからかうと、下手すると公務執行妨害っていう罪に問われちゃうから、きみ、気をつけなきゃダメだよ」
     そして、お酒はほどほどにねぇと言い残すと、アパート前に停めてあった自転車に跨り、きこきこペダルをこぎながら街灯の届かない路地の闇へと消えていった。
     どういうことだ……?
     今の警官がふざけていたようには思えない。が、部屋に目を戻せば、相変わらず例の不審者が不思議そうな顔で優人を見下ろしていて。
    「あれ? もう帰っちゃったんですか? さっきの人?」
     しかも、相変わらず場違い感の半端ない呑気な口調で声をかけてくる。まさか、幽霊か何かか? ……にしては、とくに輪郭がぼやけているわけでもなく、何より足もきちんと二本揃っている。
    「……なぁ」
     おそるおそる、優人は不審者に声をかけた。相手の実在を認めるようで、できることならかけずに済ませたかったのだが。
    「あんた……何者だ?」
     すると不審者は、
    「はい。優人さんが現在お住まいの、ここ朝比奈ハイツ一号室です」
     当たり前のように天井を指差すと、男にしては紅さの目立つ唇をニコリと緩めた。

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    コメント

    作者紹介

    • くろねこ8
    • 作品投稿数:126  累計獲得星数:165
    • ちょこちょこ小説書いています。
      好きなジャンルは歴史(ぶっちゃけ昭和、それもビフォ太平洋戦争←をい)。軍服とか特務機関なんて名詞を聞くとパブロフの犬的にハスハスしてしまう不届者です。あとBLが大好物。戦争×BLというクズすぎるマリアージュでシコシコ量産中。もちろん現代日本モノもあるよ!
      絵のほうはアレなので表紙を描いてくださる方絶賛募集中!(図々しくてサーセン!)
      文章関係のお仕事も募集中です!
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