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シリーズ:アイムホーム~あなたの家になりたい
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アイムホーム~あなたの家になりたい

作者:くろねこ8

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    なぜか自分が住むアパートの精霊(しかも美男子)が見えるようになってしまった主人公の優人。人間の常識が通じない“家”との共同生活は、頭痛とイライラの連続だった・・・


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:94

    アイムホーム~あなたの家になりたい 1798文字

     

     優人がここのアパートに住みはじめたのは半月ほど前のこと。就職を機に一人暮らしを決意した優人は、隣県にある実家を離れ、職場まで四十分ほどで行ける今のアパートに引っ越した。
     築年数こそ二十年と年季が入っているが、大家の管理が行き届いているおかげで建物は小綺麗に保たれ、また、一階のわりには日当たりも決して悪くない。北側にキッチンつきダイニング。風呂とトイレは一人暮らしには贅沢なセパレートタイプ。南側の二間がどちらも畳の間というのが使い勝手として気になるところだが、おかげで家賃相場も低めに抑えられ、家計には優しい。
     そんなわけで優人は、この部屋に対しては不満らしい不満を一度も抱かずにここまできたわけだが……
    「で、要するにお前のことは、この部屋の精みたいなもの、と理解すりゃいいのか」
    「はいっ!」
    「はい、じゃねぇよっっ!」
     ヒーローショーの幼稚園児よろしく元気な返事をよこす自称部屋の精に、優人は全力で突っ込みを入れた。
     サービス残業を終えての仕事帰り。手元の時計はすでに夜中の零時半を指している。こんな状態で、得体の知れない侵入者を自宅で迎え撃つだけでも辛いのに、その上、相手が電波となると状況はさらにヘヴィだ。
     そんなくそったれな状況を跳ねつけるように、優人はさらに怒鳴る。
    「ふざけてんのかお前! 聞いたことねぇぞンな話! 地縛霊とかそういう話ならともかく、言うに事欠いて部屋の精って何だよ部屋の精って! つくならもっと真面な嘘をつきやがれ!」
    「だ、だって、本当のことですし、」
    「いいぜ。百歩譲って本当に部屋の精だったとしよう。じゃあ、俺がこの部屋に来てから今までの半月間、一体どこに隠れていやがったんだお前は!?」
    「い、いましたよ、ずっと」
     今にも泣き出しそうな顔で優人を見下ろしながら、自称部屋の精は答える。身長が一六〇と少ししかない優人に比べれば、その背丈は頭一つ抜けているのだが、だからこそ、この手の子供じみた表情を向けられると、優人の目には余計にフザけているように映るのだ。
    「本当のことを言うと、僕にも、どうしてあなたに僕の姿が見えてしまっているのか分からないんです。本来、僕は人には見えない存在ですし、実際、これまでの入居者さんの中に、僕の姿が見えたという人はいませんでしたから……」
    「嘘つけ。じゃあどうしてお前はこんなに平然としていられるんだ」
    「それは……まぁ、最初は僕も驚きましたけど、これはこれで僕としては嬉しい状況には違いないので、せっかくだからエンジョイしてしまおうと」
    「何がエンジョイだフザけんな! とにかく出て行け、今すぐ!」
    「無理ですよ、僕、部屋の精ですし」
     さも平然とばかりに答える自称部屋の精に、いよいよ優人は苛立ちを爆発させる。
    「ああもう! なんかお前と喋ってると頭おかしくなりそうだよ! いいから出て行け!」
     言いながら優人は、ほとんど力任せに男を玄関先に叩き出した。そのまま扉を閉じ、手早く鍵とチェーンをかける。
     とりあえず、これで安心だ……
    「あのっ」
    「え?」
     はっとして振り返る。瞬間、さすがの優人も今度ばかりは凍りついた。
     優人のすぐ背後に、たった今、外に叩き出したはずの不審者が悲しげにうなだれていたからだ。
     馬鹿な――
     南側の窓はすべて鍵をかけていたはずだ。よしんば窓の方、つまりアパートの裏手に回って鍵を破ったとして、こんなふうに一瞬で回り込むことはまず不可能だろう。
     唖然となる優人の内心はいざ知らず、相変わらず男はすまなさそうに俯いている。
    「すみません……ご迷惑なのはわかります。でも、ご覧のとおり僕は家の外に出ることができないのです。僕自身が部屋なので……部屋が部屋を出る、というわけにはいかないでしょう?」
    「じゃあ、あんた……本当に部屋なのか?」
     我ながら馬鹿な問いだと思いつつ問えば、
    「はい。先ほどからそう申し上げているのですが……あっ、」
    「な、何だよ今度は」
    「今ちょうどお風呂が溜まったので、ちょっとお湯を止めてきますね」
     そして男は、いそいそと風呂場の方に歩いてゆく。
     その背中を見送りながら、なぜか優人が思い出していたのは今現在の銀行の預金残高だった。言うまでもなく、引っ越しのための資金をどうするかという算段なのだが、どう考えても新しいアパートを契約し直すにはゼロの数が足りない。
     優人は心の中で、こんな事故物件を平然と紹介した駅前の不動産屋の人を食ったような狸親父を呪った。

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    コメント

    作者紹介

    • くろねこ8
    • 作品投稿数:126  累計獲得星数:165
    • ちょこちょこ小説書いています。
      好きなジャンルは歴史(ぶっちゃけ昭和、それもビフォ太平洋戦争←をい)。軍服とか特務機関なんて名詞を聞くとパブロフの犬的にハスハスしてしまう不届者です。あとBLが大好物。戦争×BLというクズすぎるマリアージュでシコシコ量産中。もちろん現代日本モノもあるよ!
      絵のほうはアレなので表紙を描いてくださる方絶賛募集中!(図々しくてサーセン!)
      文章関係のお仕事も募集中です!
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      pixiv:http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5765757

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