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シリーズ:プレゼント ~ゴギョウハコシニ ホトケノザ~
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プレゼント ~ゴギョウハコシニ ホトケノザ~

作者:岡野 こみか

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    あたしの誕生日に、御形ハコは死んだ。
    ほんのり裕福、イージーに生きてきた鈴白鈴菜の誕生日に、彼女のGF、御形ハコが死んだ。
    それを気遣う芹なずなだが、鈴菜は思いもよらないトラブルに巻き込まれてしまった―ー
    ハコの死の真相は。
    ハコの「さいごにしてさいこうのプレゼント」とは。


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    プレゼント ~ゴギョウハコシニ ホトケノザ~ 34702文字

     

    プレゼント ―ゴギョウハコシニホトケノザ―


     ――これはわたしからあなたへの、さいごにしてさいこうのプレゼント――


    1.鈴白鈴奈の 誕生日

     あたしの誕生日に、御形 ハコ(ごぎょう はこ)が死んだ。


    「今日の始業式は延期です。皆さん一旦自宅に戻ってください」
     冬休み明けの気だるい空気は、突如として教室に踏み込んできた先生たちの裏返った声によって破られた。

     始業式の延期?
     だったらまだ冬休み?
     ラッキー!

     混乱する教室内に、更に先生の声が響く。
    「詳細は追って一斉通知メールで連絡します! だから、落ち着いて帰ってください」
     そんな先生の声は全く落ち着いていなくて、それが僅かな混乱をより大きく煽る。
     女子しかいない教室はあっという間に蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
    「……これって、ハコ?」
    「ねえ、せんせー、ニュース速報って、本当?」
     そんな中いち早くスマホで情報を見つけた数人の生徒のトーンの違った声が悪夢のようにあたしの耳に届いた。
    「御形ハコ、死んだの?」


     その日はみんな、浮かれた長い休み明け直後のどこか疲れた表情でもそもそと学校に集まっていた。
     あたしも同様に、いやそれ以上に重苦しい手足を引きずって登校する。
     1月7日は、あたしの誕生日。
     冬休みに絶妙に被らないこの位置のおかげで毎年誰かが覚えていてくれて、そして祝ってくれていた。
     いつもなら周囲から聞こえてくるであろううっとうしい祝福の声は耳を塞ぎたくなることはあれど、決して歓喜の対象にはならない。
     家で、学校で、17回も繰り返されたこの行事にいい加減あたしは飽き飽きしていたから。
     でも今年はほんの少し、揺らめく程度に足取りが浮き立っていた。
     なぜなら今年は特別に祝ってくれる約束をした相手がいて――

     だけどそれは全部吹き飛んでしまった

     ごぎょうはこが、死んだ?
     やけに非現実的な単語は容易には頭に入らず、言葉だけが意識の表層を滑る。
     ごぎょうはこって、誰?
     あたしの知ってるハコ以外にも、御形ハコが存在するの?

    「詳細は分かり次第、全校集会でお知らせします」
     先生は肯定も否定もしないままとにかく生徒に帰りを促す。
     そのせいで、ニュースはより真実味を増して全員にのしかかる。
    「鈴白さん……」
     背の低い少女が青い顔でこちらを見上げた。
     頬の所で切りそろえられた髪が揺れる。
     童顔に丸い瞳の緊張感のない造形の顔は、らしくないほど張りつめられていた。
    「大丈夫、なじゅにゃっ」
     噛んだ。
    「にゃじゅっ、なずなが、ついてますからっ」
     それでも口から出たのはあたしを気遣う言葉。
    「あんたね、噛むくらいなら自分の名前を一人称にするの止めたら」
    「いえこれはにゃじゅなのアイデンティティー」
     よく分からない主張をしながら、芹 なずなはあたしの顔を覗き込む。
    「それより鈴奈さん、大丈夫ですか?」
    「――別に」
     自然にそんな言葉が口から漏れた。
    「別に、どうってことない」
    「でも……」
     だるそうに反論するあたしの顔を、なずなはじっと見つめる。
     その大きな瞳にあたしが映る。
     うん。
     本当に大丈夫。
     たとえ大丈夫じゃなかったとしても、あたしは大丈夫に振る舞わなくちゃいけない。
     なずなの瞳の中のあたしを確認しながら、自分自身に言い聞かせる。
     あたしは、強いあたしだから。
    「帰ろう」
     スマホを取り出しながら、毅然とした風を装って言った。
    「乗ってく? 今なら車出して貰えると思うし」
    「あの……」
    「ああ運転手が居なくても、家には誰かいると思うから」
    「あ、はい!」
     いつもなら必ず遠慮するなずなが、今日は即座に頷いた。
     一人になるのが心細いのか……それとも一人にしておけないと思ったのか。
     どちらにしても、ムカつく。
     自分で誘っておきながら相手の反応に腹を立てつつ、家に連絡を入れた。
     前みたいに校門すぐ前に乗りつけるのは注目を浴びすぎるから、少し離れておいてときちんと言い添えて。
     車の種類なんて分かんないけど、でかくて黒くてやたら大きな車はさすがに威圧感があるから。

     ほどなくしてやって来た運転手つきの車に、あたしとなずなは乗り込んだ。
     やたら柔らかい座席が今日はなんだか気持ち悪い。
    「今日さ、うちに寄る?」
    「はい」
     淀みないなずなの返事にやっぱり苛立ちながら、近づいてくる大きな屋敷とその門を見つめた。
     あたしんちは、結構お金を持っている。
     どれくらいかって……ふと思い立って海外旅行にぶらりと行けるくらい。
     もちろんアジア以外でも。
     気付いたのは小学生のとき。
     よその家は運転手やお手伝いさんなんていないと知って、ずいぶん不便だと驚いた。
     おかげで人生イージーモード。
     趣味にも充分お金をつぎ込むことができた。
     別にそれは全然問題ないことだと思ってる。
     お金持ってる人は、使わなきゃいけない。
     世の中の経済を回さなきゃ。
     その代わり、それらしい態度を取らなくちゃいけない。
     常に一歩高い所に立って、友人知人にお金を惜しまず、偉そうにそして強そうに。
     決して弱味を見せちゃいけない。
     それが代々金持ちだったうちの親からの受け売りのひとつだった。
     それが功を奏したのか単純にお金のせいなのか、周囲の人間関係も良好だった。
     家が近所だったなずなはずっとあたしにくっついてるし、それ以外にも、友人も恋人も途切れたことがなかった。
     変な男が近づかないようにと女子高に入れられたが、そこには可愛い子が多くて女の子にばっか手を出してるって知ったら親はどんな顔するだろう。
     ハコも、その一人だった。
     ……あ、しまった。
     思い出さないようにしていた記憶が、ずるりと零れ落ちる。


    『――やっぱり、マッシュパインの間は素晴らしいですね』
     ずるり。
    『鈴奈さんのおかげでここまで来ることができました』
     ずるずる。
    『――髪の長い相手とキスは、好きです』
     ずるずるり。
    『――ね。私のこと、忘れないでください――』


     きっかけは、マッシュパインだった。
     いや、とりいそぎプディングだったかもしれない。
     それともハムピースだったっけ。

     とにかく、見てた。
     動画を、学校で。
     まだマッシュパインがブレイクする前だから、けっこうマイナーな動画だったのに。
     それが後ろから見えたのか、「あ」って反応があった。
     振り向くと鞄にレアなパインストラップをつけたクラスメイトがいて……
     それが、ハコだった。

     それまでハコはただの……いや、ただのじゃないけどあたしにとってはそう関わりのないクラスメイトって認識しかなかった。
     小さい頃からかなり可愛らしい子で、高校になって再会した時にはその印象をさらに上回るかなりの美少女になってて驚いた覚えがある。
     綺麗な黒髪にエキゾチックな顔立ちが奇妙なほど似合っていた。
     たしか、小さい頃ほんの少しだけこっちにいてすぐに転向していったんだっけ。
     そのまま学校を転々して高校になってからこっちに来たって聞いた。
     だからか妙に大人びていて、目立つ性格と顔立ちにも関わらず上手いことクラスに馴染んでいた。
     コツがある、って言ってたっけ。
     実際に話してみると、ハコはあえて周囲と同調してはいるけれどもそうでなくても一人で生きていけそうな強さを秘めてるように感じた。
     具体的に言えば、急に知人がゾンビになって襲ってきたとしても真顔で倒していけそうな……そんな強さ。

     そんな、ただのクラスメイトではないけどあまり接点も無かったハコと、共通の趣味を持つことが判明して急速に仲良くなった。
     あたしは劇場でチェックしてたけど、ハコは料理番組から入ったんだって。
     たしかに、料理番組とマッシュパインの組み合わせはすごい化学反応。
     相性ぴったりだと思ったし。
     マッシュパインのマッシュの方は料理が得意って聞いてたから、もしかしてそこまで狙ってのコンビ名だったのかもしれない。

     ……あぁ、分かるよね?
     マッシュパインくらい。
     なずなは理解するまでに40分くらいかかってたけど、最近じゃテレビで見ない日はないくらい売れてきたし。

     それで、時々は一緒にライブに行ったりした。
     あたしは欠かさず見に行ってたけど、ハコは金銭的時間的都合が合わないことが多かったから、時々。

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    • いきなり友人の訃報から始まったので、原因が気になり早々に☆(応援)押して、完成を待ってました。
      とても読みやすく、少し狂気じみた愛の形が良かったです。
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    作者紹介

    • 岡野 こみか
    • 作品投稿数:26  累計獲得星数:240
    • 『ゼロコンマ』シリーズが4巻までRentaさん、パピレスさんから配信中!
      デスゲーム×BL小説『ビースト・ゲーム』も配信中です。
      これらが形になったのは、全て皆さんのおかげです!
      心から感謝させていただきます。
      これからも、もっと、色々書いていきたいなと思います。
      よろしくお願いします。

      文章書き、の端っこの端っこです。
      BLもラノベも、まだまだ初心者です。
      現在、クリエイティブRPG「三千世界のアバター」(http://s-avatar.jp/)にてゲームマスター(ライター)をやってます。←皆様のキャラの活躍を小説にしています。
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