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シリーズ:オソロシサマの塚
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オソロシサマの塚

作者:砂神 桐

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    登録ユーザー星:2 だれでも星:0 閲覧数:77

    オソロシサマの塚 3306文字

     

     じいちゃんもばあちゃんも近所に住んでるとかいう人達もみんな言ってた。
     ここには決して近づいちゃいけないって。
     そんなの知るもんか。
     呪い? 祟り? バカバカしい。そんなものが現代にある訳ないだろ。っていうか、昔からある訳ない。非科学的もいいとこだ。
     だから俺は言いつけになんか構うことなく、木々が開けた空き地にぽつんと立った石の側へ近づいたんだ。


     夏休みに入る少し前、父さんと母さんが死んだ。
     死因は交通事故。
     通夜だの葬式だの、周りが色々やってくれて、残った俺は父方のじいちゃんばあちゃんに引き取られることになった。
     そして連れて来られたのが、この、東京から電車やパスをどう乗り継いでもほぼ一日かかるど田舎だ。
     正直、こんな所で暮らさなきゃならないなんて、いやでいやで仕方がない。
     ケータイは電波が届かないし、持ってきたゲームも、何故かどれも調子が悪い。
     コンビニどころか店らしい店もないからろくにお菓子も買えないし、夜は真っ暗で遊びに行ける場所もない。
     おまけに、ここいらは過疎地域とかで子供なんかいないから、誰かをからかって小突くとかすらできやしない。
     ここでできる憂さ晴らしは、せいぜい、近所の窓ガラスを割るとか、家畜をイジメるとか、作物を勝手に引っこ抜いて捨ててやるとか、その程度だ。
     あーあ、小学生なんて不便だ。せめて中学生になってもう少し体が育ってたら、自転車で隣町に行ってもう少しあれこれできるのに。

     そんな不満を抱えながらやることもなく森を歩いていた。そこの木々が開けた位置に、ぽつんと石が立てられているのを見つけた。
     あれってもしかして、じいちゃん達が言ってた『オソロシサマの塚』って奴か?

    「森には入ってもいいが、もしも注連縄のついた石を見かけたら、それには絶対近づいちゃダメだぞ。ましてや触るなどもってのほかだ」
     何でと聞いたら、祟られるからと真剣な顔で言われた。それがおかしくて大笑いしたら、じいちゃんもばあちゃんも、元々皺っぽい眉間にさらに皺を寄せてたっけ。
     二十一世紀も十年以上過ぎたこのご時勢に、何だよ、祟りって。
     そんな迷信、信じませーん。

    「ほぅ、度胸のよいワラシじゃな」
    「え?!」

     塚の近くへ寄るとふいに声がした。
     辺りを見回すが誰もいない。蝉の声が暑苦しく響いているだけだ。

    「ワラシ。もっとこっちへ来い」
    「…いやだね」

     やけに優しげな声を、俺は問答無用で突っぱねた。

    「お前、オソロシサマだろ」

     口にすると蝉が一斉に鳴きやんだ。
     これって、図星を差されて沈黙したって意味か? だとしたら随分間抜けだ。
     迷信じゃなく、本当にこの塚に何かがいるとして…声がした以上、疑いようもなくここには何かがいるんだろう。それが認識されているからこそ、この塚には近づくなという言い伝えが広まっているのに、来いと言われて応じるバカはいない。

    「よく知っておるな」
    「お前、有名みたいだからな。悪い意味で」

     何となくだけど、姿の見えない化物が焦っている気がした。
     騙して近づかせようとした子供に総て見抜かれていて、怖がられもせずに軽んじられてる。
     これってもしかして、化物的には屈辱なのか?

     ここいら一帯の人間がひたすら怖がるオソロシサマ。俺がからかってやったと知ったら、みんな、どんな顔をするだろう。
     その反応を見てみたい。

    「ワラシ。近寄れ」
    「い、や、だ」

     嘲るように、一文字ずつを区切って口にする。その間も目は決して塚から離さない。

     じいちゃんには絶対に近寄るな触るなと言われている。
     化物は近寄れと言う。
     つまり、近づきさえしなきゃ、コイツは俺には手出しできないってことだろ?

     ざっと見て、塚と俺の距離はだいたい五メートル。この位置では手が出せず、もっと寄れと言うからには、化物が危害を加えられる射程距離はそれ以下ってことだ。
     いいや、単純に、塚に触った人間にしか攻撃ができないとかもあるな。
     どっちにしろ、これ以上近づく気なんてない。むしろ塚からは離れる。もっと距離が空いたって、充分俺からの攻撃は可能だから。

     軽く倍は距離を取った。その位置から塚めがけ、足元の小石を投げつける。
     リトルリーグとか、あんな熱血臭い真似はバカらしいから入ったことなんてないけど、それでも俺、あくせく練習してる奴よりコントロールはいいんだ。クラスでの体育の時とか、手が滑ったふりでいくらでも誰かの顔面にボールを当てることができるし。この距離て塚に石を投げ当てるくらい楽勝。
     
     カツーーン。
     はい、ストラーーーイク。
     思ったより小気味のいい音がしたな。もっと投げてどんな音がするのか試したくなった。

     次々小石を拾い、投げる。でも化物の声は聞こえない。
     もしかして、さっきが声を届かせられる範囲の限界だった?
     それとも、イジメられていじけちゃったとか?

     あんなに怖がられてるってのに、石を投げられた程度でだんまりなんて、たいしたことないね、オソロシサマ。
     こっからの反論とか、ないの?
     ゴメンナサイやめて下さいもう許して、とかでもいいよ?

    「なる程」

     突然声が聞こえた。
     何だ、この距離でも大丈夫じゃん。
     でも所詮声だけだ。
     塚に触るどころか、近寄れ近寄れと言われた位置よりさらに遠い所に俺はいる。手出しなんかできないだろ。

    「判っておったが、確かにお前は鬼のようじゃ。つまり、ワシには餌じゃな」
    「はぁ?」

     化物がいきなり妙なことを言い出した。
     俺が鬼? 何言ってんだコイツ。オソロシサマとか呼ばれて祀られてる化物はそっちだろ。 

     そうツッコんで鼻で笑ってやろうと思った。なのに声が出ない。体も動かない。
     何だこれ? え? え? どういうことだよ?!

     焦るオレの視界に塚が映る。そこから薄ぼんやりと煙のような何かが立ち上った。
     漂うように近づいてくる。逃げたいのに動けない。叫びたいのにどうにもならない。

    「近づけと言ったのはお前をよく見るためじゃ。今からワシの餌になるお前をな」

     耳の側で響いた声に全身が総毛立つ。四肢がすぅっと冷たくなって、いやな汗が止まらない。

    「距離など必要はない。そんなものは無意味じゃ」

     見開いた目に、煙の中に穴が生まれるの光景が映った。
     どこまでも暗く深く穿たれた穴。それが広がった時、穴が何なのかを悟った。
     これは、オソロシサマの、口…。
     飲み込まれる。
     食われる。
     いやだ。
     いやだ。
     いやだいやだいやだいやだいやだ。
     ごめんなさい。
     もう二度と悪さはしません。
     今までしてきたこと、全部謝ります。
     友達にしたことも先生にしたこともそれ以外の人にしたことも、動物にしたことも物にしたことも、全部全部謝ります。
     そうだ! もちろんあれも…俺が車にイタズラをしたせいで父さんと母さんが死んだ、あのことも、どうせ小学生じゃ罪にはならないけど、バレて周りにあれこれ言われるのがいやで、素知らぬ顔で内緒にしてきたってこと、ちゃんと公表して謝ります。
     あれだけの保険金があったら一生オレは安泰だ。いい死に方してくれたって笑ったことも、本当に謝ります。
     じいちゃんばあちゃんの管理だと大人になるまで自由に使えないから、二人共早く死んでくれないかな。そうすればこんなど田舎で暮らさなくてもよくなるし。ああそうだ。いっそ、また車にイタズラしようかな。そう思ったことも心の底から謝ります。
     だから、許して。…助けて!

    「お前はワシの声を聞けた。それが鬼の証じゃ。…最初から、お前はワシの手のひらに乗る餌じゃった…」


    * * *


    「やはり、帰って来んか」
    「そうですね」
    「あいつは、オソロシサマの声を聞けてしまったんだな」
    「そのようですね」
    「どんな悪さをしても孫だ。それでももう、あれは鬼の片鱗を見せとった。…このまま育てばさらに人に仇為す。息子達のように命を落とす者がまた出る。あいつに、そんな真似をもうさせんためにも…」
    「…仕方がなかったんですよ」
     孫を失った老夫婦の声が静かに静かに夜に落ちる。仕方がないと言い合いながら、それでも涙に染まって落ちる。

     人の姿をしながら人の心を持たぬ者。幼き頃から人に仇為し、育てばさらに人を傷つける者。

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    コメント

    • ネタバレのためスペース。                                                                                  非科学的だから信じない、と言っていたのに声が聞こえたらあっさり信じてしまう、というところに矛盾というか違和感を感じました。きっと誰かがこっそり隠れてるんだ、みたいな状況で進めば別だったんですが・・・。
      それ以外は子供の心情やら口調やら、雰囲気あるし内容も面白かったです☆
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    • コメありがとうございます。
      文章読み返して、ご指摘下さった矛盾に赤面しております…。
      たいていの作品が、書いた上での勢い投稿なので、ほぼほぼ内容を見返しておりませんでした。…読み返すのって大切ですね。
      今後、踏まえて精進していきたいです。ありがとうございました!
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    • 砂神 桐
    • 作品投稿数:16  累計獲得星数:31
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