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シリーズ:永遠の愛を
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永遠の愛を

作者:カール(絵ノ森 亨)

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    あなたはパートナーひとすじですか?


    登録ユーザー星:5 だれでも星:0 閲覧数:122

    永遠の愛を 6925文字

     

     盛大な拍手とともに、大きな花束が贈呈された。
     今日は寿退社する後輩の送別会なのだ。その場にたくさんのお祝いの言葉がばら撒かれる。後輩は何度もお礼を言って会社をあとにした。
    「あーあ、とうとう真紀ちゃんも結婚かぁ」
    「ジューンブライドってやつだね〜」
    「あんたもそろそろなんじゃないの? 彼氏35歳だっけ?」
    「どうだかねー。こっちからあんまり言うのも焦ってるみたいでイヤだし」
    「でも、正直20代後半にかかってくるとちょっと考えるよ。男はいつまでも現役かもしれないけど女には子供を産める年齢ってもんがあるじゃん。それを焦ってるとか言われてもさぁ」
     終業時、ロッカールームで同僚の話を小耳に挟みながら、麻衣子は事務の制服から私服へと着替えていた。
    「あー、私はもうそんな心配はないでーす、って顔して聞いてるよ、麻衣子は」
     同僚はいたずらっぽく笑いながらこちらに話をふる。
    「やだ、そんなわけないじゃん」
    「一人だけ先に結婚しちゃったもんねー」
    「どうやってそこまでこぎ着けたのぉ?」
    「こぎ着けるも何も……健太が結婚願望強かっただけだよ」
    「そっかー、そういう男を探せばいいのかー」
    「探して見つかるもんならね」
     そんな話をしながら麻衣子は、結婚て本当にいいものなのかな、と考えていた。
     麻衣子自身はそれほど結婚願望は強くなかった。が、仕事も今のまま、子供はすぐ作らなくていい、次男だから実家に入る必要もない、という健太の説得で23歳のときに籍を入れた。いずれ結婚するなら健太とだろうな、とおぼろげに思っていたからだ。
     だが、2年もすると健太の様子が変わってきた。お互い正社員で仕事をしているので、家事は分担制、突然の残業は臨機応変に、と決めてあったのだが最近はおざなりになっている気がする。食事は惣菜や弁当が多く、洗濯物のたたみ方もいい加減。食器を洗えばまだ泡が残っている始末。
    「俺はこれでも一生懸命やってるんだよ。男だからうまくできないだけじゃん。お前なんか女のくせに料理の腕も上がらないし、アイロンがけもよく忘れるだろ」
    「えっ、女はできて当然なの? だったら花嫁修業した人とでも結婚すればよかったじゃない!」
     麻衣子は、思わず手元にあった目覚まし時計を投げつけてしまった。
     その頃からだろうか、健太の残業が増え始めたのは。今までなかった休日出勤や、1〜2日の出張も入り始めた。
    「それってさぁ〜、浮気なんじゃないのぉ〜?」
     ついうっかり、よく行くスナックでグチをこぼした。カウンターの向こう側で、髭の剃りあとがうっすら青くなっているママが面白そうに言う。
    「ママぁ、はっきりしないのに煽っちゃダメよぉ」
    「麻衣子ちゃん、大丈夫よ。あんたが選んだ旦那さまでしょ」
     自称女の子たちが口々にフォローを入れた。他に客がいないため、こぞって麻衣子の話を聞く形になっている。
    「そうだけどぉ、ちょっと怪しくな〜い?」
     それは各々が感じていたことだったらしい。誰もが口をつぐんでしまった。
    「領収書とか見た? 家計簿つけたりはしないの?」
    「うち、家賃や光熱費は先に出し合うんだ。給料の差があるから、アイツの方が少し多めだけどね。それ以降の財布は別々なの」
    「でも、本当に出張だったりしたら経費で落ちるわけだし、奥さんに見せる必要はないわよね」
    「そうねぇ……」
     麻衣子がひとつため息をつくと、グラスの中で溶けた氷がカラン、と小さく音をたてた。

     少し飲みすぎたのだろうか、足元がふらふらしていた。歩いて帰るつもりだったが、タクシーを使った方がいいかもしれない。だが、駅前のタクシー乗り場まではまだ少し距離があった。麻衣子は酔いをさまそうと、駅ビルの隣に設置されたバス停のベンチに腰をおろした。
     すでにバスが走っている時間ではない。通りを歩く人もまばらになってきた。
    「島田さんじゃないですか?」
     突然名前を呼ばれて顔を上げると、見覚えのない男が立っていた。
    「え、誰……?」
     紺のスーツに赤っぽいネクタイ。街灯が後ろにあるため、逆光になってよく顔が見えない。
    「あぁ、この格好じゃわからないですよね。ほら、黒い作業着で配送にきてるじゃないですか。トーエイの及川です」
     トーエイ株式会社といえば、麻衣子が勤めている会社の取引先だ。確かに黒い作業服に黒のキャップをかぶった人たちが出入りしている。
    「えっ、ああ、あの、いつもお世話になっておりますっ」
     あわてて立ち上がったときに、ぐらりと視界が揺らいだ。
    「……っと……大丈夫ですか? だいぶお飲みになったようですね」
     体を支えられたときに、車道を走ってきた車のライトが及川を照らした。一瞬、麻衣子はドラマでも見ているのかと思った。目の前の大きなスクリーンに俳優がアップで映る、そんな感覚。及川は呆けている麻衣子をベンチに座らせると、自分も隣に腰掛けた。
    「あっ、も、申し訳ありません、ご迷惑をおかけしまして……」
    「ここは会社じゃないですから、畏まった言葉使いはよしましょう」
     そう言って及川は笑った。
     最近テレビでよく見かけるようになった若手俳優。彼の名はなんといったか。優しそうな目元や少し厚めの下唇がよく似ている。手で掬ったらさらさらと指の間からこぼれてしまいそうな黒髪が夜風にふわりとなびき、及川は少し長めの前髪を無造作にかきあげた。
     その仕草に鼓動が高鳴る。それを隠すように言葉を探した。
    「き、今日はスーツなんですね。いつも帽子をかぶってらっしゃるから、わかりませんでした」
    「みんな同じ顔に見えますよね。本当は、僕の部署はシステム開発なんです。でも現場の苦労も知らないと、ってことでいろんな部署のやつが交代で現場に出てるんですよ」
    「そうだったんですか……」
     交代でということは、いつもはいないということだ。現場に出なくなれば、この先会うことももうないのかもしれない。ちらり、と横顔を盗み見ると、きゅっと胸が締め付けられるような気分になる。
     一目惚れかもしれない、と麻衣子は思った。
    「最近は物騒ですよ。こんなところに女性が一人でいるのは危険です」
     視線に気づいたのかそうでないのか、及川が振り向いたのであわてて顔を伏せた。
    「は、はい、タクシーで帰ろうと思ったんですが、その前にちょっと酔いをさまそうと思って……」
    「それはちょうどよかった。僕も帰るところなんで送りますよ」
    「えっ、それは……」
    「あっ、ご迷惑でなければ、ですけど……」
    「そんな、迷惑だなんてとんでもない。すごく助かります」
     これで終わりかと寂しく思っていたところだ。内心は小躍りしたいくらい舞い上がっていた。
     及川の車が停めてある駐車場までは、駅から逆方向に歩いてすぐだった。時間で課金されていく、どこにでもある有料の駐車場だ。
    「どうぞ。あまりきれいじゃないかもしれませんが……」
     スマートな仕草で助手席のドアを開ける。麻衣子はドキドキしながら小さな声で礼を言い、車に乗り込んだ。車種はわからないが、大衆車とは違うちょっと高級感の漂う国産車。走り出しもとても滑らかだった。
     麻衣子の住所を聞いた及川は、「その辺りなら大体わかります。うちの配送ルートですよ」と笑った。
    「及川さんの家もこちらの方向なんですか?」
    「いや、僕は3駅隣の川の向こう側で……」
    「それじゃ反対方向じゃないですか! なのに……」
    「車ならすぐですよ。それに……僕があなたと一緒にいたかったんです」
     心臓が、一際大きく跳ねた。一瞬、今言われたことがどういうことかわからず及川を見る。心なしか顔が赤い。
    「今日会ったのは偶然じゃないかもしれないと思って言ってしまいますが、実は初めて配送業務で伺ったときに島田さんを見かけて……」
     それ以降の会話はよく覚えていない。あまりに信じられなくて、耳から入った言葉が頭に留まらないのだ。
    「それじゃあ、連絡待ってます」
     麻衣子をマンションの前でおろすと、及川はそう言って走り去っていった。
     酔いはそれなりにさめていたが、違う意味でクラクラする。マンションのエレベーターに乗り、5のボタンを押してさっきの記憶を必死に呼び起こそうとしたがうまくいかない。握りしめた手の中には、帰りしなに渡された1枚のメモ用紙があった。

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    コメント

    • ども、人と感性がだいぶズレているので、あてにならない感想になってしまいますが再訪です。

      ふむふむ、そんな意図があったんですね。
      私の場合、御作を読んでいて『女性が元の夫をうらぎり最後になんらかの報復を受ける』という展開になるんだろうなぁ~という構図が割りと早い段階で想像できました。この時点で私(読者)の興味はオチ(主人公がどう殺されるか、あるいはどんでん返しで助かるのか)に移っています。
      なので、すでに被害に会うとわかっているキャラクターが、どんな理由で殺されるのかには興味はありませんでした。
      • 1 fav
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    • ああ、返信になってなかったすみません(汗

      今回はぷちホラーということで、主人公が被害者になることは、ほぼ確定しています。(加害者になるパターンもあるけど)
      そういう状況下で、読者に『主人公が殺される理由』を売りにする作品を書いたのは、うまくなかったんじゃないかなと思います。

      ハッピーそうなお話で、意外な理由をもって、殺されてしまったというのならば、評価は変わったのではないかと思います。

      なお、感想は、前述したように感性がズレた生き物が書いておりますので、内容の取捨選択にはご注意ください。
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    • いやいやいや、いろんな人の意見聞きたいですから問題ないですw
      人によって受け取り方っていろいろですからw ただの感想なら「そうですかーありがとう」で終わるけど、ここがどうあそこがどう、ってのは自分じゃ気づかないもんですからね~w

      つか、実はこれはぷちほらーに応募の予定はなかったんですが、ちょっと欲が出てタグをつけてしまったんです( ̄▽ ̄;
      けど、それがどうってんじゃなく、(言い訳にもならない)やっぱりホラーですから、Hiroさんの意見は正しいと思います。
      自分の意図はともかく、やっぱりいい意味で裏切らないとですよねーw 今までそうやって考えてきたのに、今回は多分、〆切に追われて妥協したんだと
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    • 思います。そこは反省ですね・・・。お金出して買ってくれる人もいるわけですし、もうちょっと責任感を持たないとと、初心を再確認させてもらいましたw

      改訂できるようになったら、また推敲していい作品にしたいと思いますw

      実はもしかしたら、これでコメに☆つけて終わりにされちゃうかなって思ってたんですけど、またコメ書いてくれて嬉しかったですw
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    • あっ、〆切ってぷちほらーことではなくリアルが忙しかった、ってことです(汗

      そして2度あることは3度あるってのがテーマとか書いてて、2回起こってないじゃん!と、自分に突っ込みを入れましたww
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    • 作者の意図と、読者の意図が大きくすれちがうと悔しいですよね。作品への低評価が、作品以外の要素が影響しての事だと特に(涙

      実はうちもバタバタしてて、ぷちホラー用の作品じゃなかったりして(爆

      鳥獣戯画の方は、もっとちゃんと推敲して、山場周囲の書き込みにも力入れたかったなぁ。<なぜここで後悔する。
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    • んー…私の場合、悔しいってよりは
      「あれっ、これじゃわかってもらえてない!?やべぇ!(゚Д゚;」
      っていう心境ですww まさに(゚Д゚;この顔ww
      そういや、「通り魔」でもそんなことがあって加筆した覚えがw

      でもやっぱり、作品以外の要素が影響・・・ってのは読者には関係ないことですから。

      今回悔しかったとすれば、今までミスリードとか考えて書いてきたのに、今回は何やってんだオレ!ってところですね~。
      だって読み返すと伏線すら張ってないもの・・・(汗
      確かにこれじゃあ伝わらないって思いましたよ(Д`;
      推敲は大事ですね!w

      気づかせてくれてありがとう!そしてありがとう!ww
      • 1 fav

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    • え~、あ~、う~ん…
      もったいないです。
      ちゃんと丁寧にホラーを書いているのに、あまりにも内容がオーソドックスすぎて、意外性に欠けたように思います。
      「ここで来るんだろうな、来るんだろうな……来た!」ってホラーはありですが、山場で盛り上がりが感じられなかったのが残念です。
      • 1 fav
      • Re 返信

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    • コメントありがとうございます!\(⌒▽⌒)/

      ありゃ、もしや意図したところが伝わってないかも?
      内容的には確かにオーソドックスなんですが、婚姻届に拘束力はないって事と、2度あることは3度あるってのを書きたかったんで「僕だけのものにしたい」って意味ではなかったんですが…もしかして私がうといだけ??
      あれー、巷には同様のものがゴロゴロしてるのかな(汗
      恋愛ものを読まないくせに書こうとしたのが失敗なのか…(-ω-;)ウーン
      んでも、伝わらないのは読み手の問題ではなくこちら側…。
      淡々と進む方が怖いかなと思ったんですが、これは再考の余地ありですな(Д`;
      貴重な意見、ありがとうですw
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    作者紹介

    • カール(絵ノ森 亨)
    • 作品投稿数:18  累計獲得星数:131
    • ☆コメント・フォローありがとうございます!
      忙しく、自分の新作はなかなか難しいかもしれません。皆さんの作品は時間作って少しずつ読ませていただきます(*´∀`)

      ※フォローされてもしばらく気づかないことがあります(汗
       あんまり面白い作品だと、☆を付け忘れてコメントに行ってしまうことがあります。どちらも気長に見守ってくださるか、「フォロー返しないよ!」とか教えてくださると助かります( ̄▽ ̄;
       あります、と言うより「多い」です。ゴメンナサイ(汗


      『時計』は、ある出版社で賞を頂いたもので、百円文庫→eブックランドと掲載させてもらっていました。フォーマットの関係で今は読めないのでこちらに載せます。
      著作権はもちろん私にあります。
      今後は無料で掲載します。
      以前100円で買っていただいた方には大変申し訳ありません。

      時計はシリーズ物になる予定です。2014/06/19現在パート2を執筆中です。

      2016年夏、忙しくて投稿はできていませんが、たまに覗いていますw
      ちゃんと動いていますのでご安心くださいw
    • 関連URL
      クランチマガジン:https://i.crunchers.jp/
      なんちゃって作家の青息吐息:http://ameblo.jp/itpo21/

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