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シリーズ:ライバル会社のツンデレがきになります
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ライバル会社のツンデレがきになります

作者:名榛孝

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    社会人もの。年下攻め。綺麗めヤンキーな未成年×外面良し青年。2台ならんだライバルメーカーの自動販売機を担当するセールスマン同士の恋です。すこしですが性描写もありますので、ご注意ください。(1/1)一部修正。整えました。


    登録ユーザー星:22 だれでも星:41 閲覧数:2497

    ライバル会社のツンデレがきになります 22224文字

     

    1.
     39℃のとろけそうな日。
     昔そんなことを言っていた歌があったけど、残念ながら人は39℃ではとけないようだ。その代り、ぱたぱたと汗が肌を伝っていく。営業端末がはじき出した補充数をカートに積み込み、それをひとつひとつ自動販売機に落としていく。補充が終わったらゴミの回収、周辺の掃除。地道な仕事だし、猛暑が続けばたまったものではない。いかに効率よくこなせるかにかかっている。性に合わず辞める同僚も少なくないが、幸いオレは合っているようだった。
     我ながら、昔から何事もそこそこ出来る。そこそこの成績でそこそこの大学に進学し、楽しく4年間を過ごして今の仕事についた。入社3年目、限りなく埼玉な東京のはじっこを担当して、飲料のルートセールス。やりがいも手抜きも覚えて、そこそこ大変でそこそこ楽しい日々。
     ぱたぱたと流れ続ける汗を制服の袖で拭いながら、小日向修一はあらためてそんなことを思う。それは、隣に並んで補充をしている、若い男のせいだった。東京から埼玉に続く街道沿いの小さな会社、そこの玄関脇に設置された2台の自動販売機の1台が修一の担当で、もう1台がその男の担当だ。
     建物の小ささに反して社員の多いその会社は、ベンチャーか何からしく、社員の若い男女が頻繁に自動販売機を利用してくれる。昼夜問わず利用があるので、売り上げは良い。だから修一はその自動販売機を朝イチで補充すると決めている。しかし最近の猛暑では補充が追い付かず、営業所で在庫を積みなおした後、夕方にもう一度補充にくることも増えていた。
     そしてその自動販売機を訪れるたび、かなりの確率でその男に会っていた。かち合う度、半ば睨みつけるように会釈をされ、そのあとはひたすら無言だ。同業他社だから大げさにいえばライバルにあたるので、別に仲良くなる必要も無いが、態度の悪さが鼻につく。修一はその男をなんとなく嫌っていたが、同時にすこし認めてもいた。
     男は大抵、修一より先にその場に居たし、欠品も殆ど見たことがない。そして何より、掃除が丁寧だった。ゴミの回収だけでなく、周りの掃き掃除、甘い飲料が地面にこびりついた跡まで綺麗に清掃して、それから次の現場に向かって行く。修一からしたら仕事が楽になって有難い限りなのだが、自分の仕事が甘いと言われているようで恥ずかしくもあった。おかげで男の名前も覚えた。大島敦というらしい。彼の乗るトラックの名札を見た時、何故だか盗み見るようで修一は緊張した。――自分よりも若そうな彼を見ると修一は、尊敬というか嫉妬というか悔しさというか、うまく説明できない感情がぐるぐると腹に渦巻かせていた。

    2.
     何とかして貰わないと困るのよ、そちらもお仕事ですもの、わかっていただけるでしょう?
     今日も最高気温38℃と朝の天気予報が教えてくれた日。いつもの自動販売機に着くなり喧々とした女性の声が響いていた。敦が若い恰好をした女性のクレームを受け、黙々と話を聞いている。トラックを止め、売り上げ確認のため自動販売の前に立つと、修一は耳をそばだてた。女性の話は、ゴミ箱からペットボトルがあふれているからこまめに回収に来いということだった。これに修一は思わず苦笑する。というのもここは、2Lペットから食用油容器から一升瓶まで、明らかに自動販売機で購入したものでないゴミばかり出るので有名だ。修一の営業所でも、ゴミを持って帰るたび笑いの種になるくらい、マナーが奔放というか、変わっている。
     途切れ途切れの言葉から、敦も修一が考えたのと同じことを女性に伝えたいらしかったが、彼女に言葉を重ねられては口を噤んでいる。どうやら話は苦手らしく、ネズミに飛び掛かられて身を竦ませている猫を思わせた。そして修一はネズミよりも猫が好きだ。助け舟を出す気になった。
    「こんにちは、今日も暑いですね」
     まずはにっこり笑顔。『とにかく笑っておけ』の社訓のもと、修一の営業スマイルに隙は無い。相手が女性なら、まず話は聞いてもらえる。女性のきつい声など聞こえていなかったように笑顔のまま、自社商品を彼女に手渡した。
    「良かったら飲んでいただけますか。新商品なんです。いつものお茶より、カテキンが10倍っていう優れものです!トクホも取ってて」
     でも、ちょっと苦いから、僕はいつものお茶のほうが好きなんですけど。内緒話のように付け足せば、女性もほんのり笑う。試してみます、という彼女の言葉に、お礼と共にだめ押しのスマイル。明らかに溜飲を下げた様子の女性が、よろしく頼む旨を敦に向かって丁寧に告げるのに、頑張ります!と修一が応えて、その場は収まった。
     女性がガラス戸を閉じて社内に戻っていくと、敦はふっと息を吐いた。肩の位置も明らかに下がって、さっきまでの緊張が 手に取るようだ。修一は少しばかりの優越感に浸りながら自分の仕事に戻った。作業を始めた修一に気付き、敦は慌てて駆け寄る。
    「あの。ありがとうございます」
     制服の帽子をとって一礼。伸びた背筋が綺麗だ。明るい髪の色と大きく開かれた襟の、少しガラの悪い印象とはだいぶ違っていた。修一は意外性に内心驚く。
    「どういたしまして。俺が早く来てたら言われてたコトだろうし、気にしないで」
     修一は作業の手を止めないまま鷹揚に返す。実際、言葉の通りだったので、修一としては何をしたつもりも無かった。しかし敦にとっては窮地を救われた心地だったらしい。そのことに気付いたのは翌日のことだった。
    「おはようございます!」
     いつものようにトラックを止め、鍵を片手に自社の自動販売機に向かうと、すでに作業中の敦が跳ねるように頭を下げた。その勢いだけでなく、目の前の照れたような顔も含めて修一はびっくりする。
    「……おはよう。今日も早いね」
    「ここ、売れますから。オレの担当ではダントツ」
    「店舗はもってないの?」
    「もってますけど、売り上げはあんまり。……担当さんと上手く話すのとか出来なくて」
    「最初はみんなそうだよ」
     敦の挨拶をきっかけに、お互い自分の仕事をこなしつつ会話が続く。しかめ面をやめた敦は思いのほか感情豊かだ。修一の形ばかりな励ましにも、くしゃりと笑顔を見せる。気の強い野良猫を手なずけたような気分だ。理由もないのに上に立っているような、浮かれた気持ちになるのに、修一はオイオイ何様のつもりだと自分に突っ込む。自分が立って補充しているのに対し、敦がしゃがんでいて、見上げられているコトが理由かもしれないと気付いて、聞いてみる。
    「君のトコって、補充口が下なんだね。ちょっと大変そうだ」
    「ああ、そうなんです。チルド商品が主力っていうか、自社モノはチルドばっかりなんで。ペットとかはほとんど提携先のなんで、利益薄いんスよ。なんたってコレですから」
    「社名そのものだもんね。オレも子供のことよく飲んだ」
    「アハハッ、ありがとうございます?ですかね?」
     敦がコレ、と言ってちょっと持ち上げて見せたのは、小さな乳酸菌飲料。お馴染みのプラスチック容器は、確かに上から流しこんだら砕けてしまうかもしれない。とはいえ身を屈めながらの作業が毎度では大変だろうと同情するが、敦は苦にする様子もない。残業と暑さのダブルパンチで若干へばり気味の修一にはうらやましい体力だ。
    「あの、オレ大島っていいます。お名前きいてもいいですか?」
    「いいよ。小日向修一です」
    「小日向さん」
     一通りの作業をおえた敦が、ちょっとかしこまって尋ねる。君の名前はフルネーフで知っていますとは恥ずかしくてとても言えない。改めての自己紹介は照れくさく、確認するように名前を呼んでニッと笑った敦に、修一は妙にどきりとした。理由は、分からない。

    3.
     頭が痛くて吐き気がする。体は火照るのに背筋が冷える。修一はトラックを運転しながらも、耐え難い体調不良に負けそうだった。そもそも朝起きた時から、嫌な感じはしていたのだ。正確には昨日からかもしれない。というか、8時始業の24時半終業が丸10日続けば誰だって体調ぐらい崩すだろう。頭の中を愚痴がめぐるが、休むという選択肢は無かった。9月も間近というのに連日の酷暑で街角の自動販売機は大繁盛していて、それは嬉しいが、補充がさっぱり追い付かないのだ。社をあげて休日返上の超過勤務、残業代も休日手当も気前よく全額出ているが、人間には限界がある。ここ一週間でぼろぼろと体調を崩す者が増え始め、残った人間はさらにキツイ状況だ。入社3年目、まだまだ若手の修一にギブアップは許されない。

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    コメント

    • 話しの流れが自然で、とても読みやすかったです☆
      お互いに初々しい感じがして、とても萌えました(笑)♪
      • 3 fav
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    • コメントありがとうございます!萌えていただけて、とてもうれしいです♪今年の夏に「他社同士が並んで補充してるのってちょっといい」と萌えたのがキッカケだったので、自然な感じにできたかもです☆
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    作者紹介

    • 名榛孝
    • 作品投稿数:2  累計獲得星数:80
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