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シリーズ:■鳥獣戯画
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■鳥獣戯画

作者:Hiro

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    周囲の人間が豚に見えてしまう少年のお話。

    コメントはお気軽にどうぞ♪
    表紙:ねこまんま様


    登録ユーザー星:11 だれでも星:0 閲覧数:176

    ■鳥獣戯画 5339文字

     

    「ブヒブヒブヒブヒッ!」
     教壇に立つスーツ姿の豚が僕を見て何か言っている。
     その目つきからして僕になんらかの不満があり、怒っているのはわかる。
     ただそれがなにかまでは判断できない。
     しかたないので、席を立ち「すみませんでした」と頭をさげると、もうひと言ふた言ブヒブヒ口にして背を向けて数式の板書をはじめた。
     向こうなにを言っているのかわからないけれど、こちらの言葉はちゃんと通じている。
     おそらくは許されたのだろう。
     周囲では学生服姿の豚たちが、背をむけた大きな豚にみつからぬよう、僕を盗み見てはあざけるように笑っている。
     そんな中、となりに座るスカートをはいた豚だけが、心配そうな目を僕に向けていた。


    ――放課後
     部活動に参加していない僕はバス停へ向かって豚たちの間を歩く。
     豚の運転するバスに乗り込むと、小説をカバンからとりだし、つり革を手にしながらそれを読む。
     いつの頃からだろう。気付くと僕の回りは豚ばかりになっていた。
     両親も、
     友人も、
     近所に住んでいた可愛い幼馴染みも。
     彼らはみな、いつのまにか豚になっていた。
     なかには豚ではなく、キーキーとわめく猿なども混じってるけれど、僕の周囲で人間の姿を残している者は極めて少ない。
     いまも人間の赤ちゃんを抱いた豚が僕と同じバスに乗っている。
     豚が赤ちゃんをあやす姿は人間のそれとまるでかわらない。
     けど、その赤ちゃんたちも次第に親と同じ動物へと変化していくだろう。
     そういう風景をこれまでも見てきた。
     世界が豚だらけになっても、それまで同様に回っている。
     幸いにして文字はそのまま読めるので、学生としての本分はまっとうできている。
     クラスメイトたちはおろか、学校の誰とも会話は成立しないけど、なんとなく顔色を窺ってそれっぽい言葉を発してやり過ごしている。
    「ブヒブヒ」
     となりに立つ小柄な豚が鳴きながら僕の袖を引く。
     小説から目を離し、窓の外に目を向ける。すでに自宅の近くまできていた。
     車内アナウンスでは判断できないけれど、そろそろ降りるタイミングらしい。
    「ありがとうフウちゃん」
     僕は小説をカバンに仕舞うと、幼馴染みの名を呼んで一緒にバスを降りた。


     家に帰ると、エプロンをした豚が僕を出迎える。鼻息荒くブヒブヒ言うそれに適当な返事をしながら、自室のある二階へとのぼる。食事や着る物の準備をしてくれるのはありがたいけれど、やはり会話の成り立たない相手から話しかけられるのは苦痛でしかない。
     制服を脱ぎながら、気まぐれにテレビをつける。そこに映る人々も周囲と同様に豚であることが多い。でも僕の周囲に比べれば、人間率はずっと高い。
     今日は政治家が自分を囲う豚たちに何かを訴えかける様子が映されている。豚たちは神妙な顔つきでソレを聞き、ブヒブヒと頷いている。
     気のせいかもしれないけれど、人間に見える相手は経営者とか政治家に多い気がする。それでも彼らと話してみたいと思わないのは、彼らの豚を見る目がとても冷たい――獲物をみつめる爬虫類みたいにみえるからだ。
     そんな寒気を誤魔化すようにテレビを消すと、ちょうど部屋の窓が開いた。窓の向こうには夜景を背負う小柄な少年が立っている。
    「よぉ、あいかわらずみたいだな」
     彼の名前は仁というらしい。
     夏だというのに長袖のパーカーを羽織り、ジャージの下をはいている。僕よりふたつ下で中学二年生らしい……学校にいっていればの話だけれど。
    「そっちはどうなの?」
     そう尋ね返す僕に「治るわけないだろ」と当然のように返す。しかし、そこに落胆などはない。彼は自分が社会復帰することに見切りをつけているようだ。
     仁くんも僕と同じように、周囲の人間が動物に見えるらしい。その共通項の影響なのか、僕にも彼が人間に見える。ただ、彼と僕の違いは、彼は動物となった相手の言葉もちゃんと理解できるということだ。
     仁くんは窓枠をまたぐと、勝手に部屋の中へと入ってくる。あたりはすでに暗くなりだしたとはいえ、二階の窓から忍び込む姿は泥棒と間違えられないだろうか。
    「そもそも、なんで俺たちが、レベルの低い連中とあわせなきゃなんねーんだよ」
     言いながら靴を脱ぐと、仁くんは床に腰を落として胡座を組んで愚痴る。
     彼の持論では、僕らが他人を動物に見えるのは、その思考力の違いに影響されているのではないかと言う事だ。
     何気ないものでも、大人同士の会話が子どもには理解できない難しい話と思えるように。逆に子どもどうしのたわいない会話の内に潜む言葉にならない機微を大人には理解ができないように。そんな差異が僕らと彼らの間にはあって、周囲との見え方や聞こえ方に大きな壁を作っていると言う。
    「でも、学校の成績が良くったって、所詮は学生の知識だよ。先生たちまで動物に見えるのは変じゃないかい?」
    「学校の勉強なんか、教科書繰り返し読んでりゃ誰でもできるようになんだろ。それに影響してるのは知識量じゃなくて、知恵の方じゃないか?」
     年下なのに、弁舌の立つ仁くんは偉そうに語る。
    「知恵?」
    「そう知恵。知恵の実を食べたアダムとイブが楽園を追い出されたように、俺たちも人間社会と言う名の楽園から追い出されちまったわけさ」
     追い出されたと言うわりに、どこか嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
    「……なるほど」
     彼は面白い事を考える。やはり彼は頭がいいのだなと感心するけれど、その全てに同意はできなかった。
    「でもさ、僕は楽園から追い出されたなんて思ってないよ」
    「なんでだよ」
     僕の言葉に仁は口をとがらせる。
    「だって、勉強だけしてれば食事にも睡る場所にも困らないんだ。それって十分楽園って言えるんじゃない?」
    「はっ、要求レベルが低いな」
    「そもそもとして、いまの世の中、人間の外敵と言える存在なんていない。狩猟という危険な行為をせずに、毎日美味しいご飯が食べられる。それは素晴らしいことだよ」
    「人はパンのみで生きるにあらず、って言うけどな」
    「それだって、パンが安定供給されていれば、その分それ以外にかけられる時間だって増えるじゃないか」
     持論に反発されたのが気に入らなかったのか、仁くんは口をヘの字に曲げると「帰る」と、来たときと同じように窓枠をまたいだ。
     いつもなら、そのまま姿を消してしまうのに、なぜだか今日はそのまま立ちっぱなしでいた。なんだろうと思ったら、唐突に仁くんが質問する。
    「明日暇?」
    「明日? 土曜日だから授業は午前中だけだけれど、どうして?」
    「明日、『人間』を探しにいこうぜ」
     それだけ言うと、彼は返事も待たずに夜の世界へと跳んでいった。


    ――翌日
    「おっ、きたきた、こっちだ」
     電柱の陰に隠れていた仁くんが、校門を出た僕をみつけ手をふる。待ち合わせ場所も決めないでどうするのかと思ったら、待ち伏せしていたのか。
    「んじゃ、さっそく行くぞ」
    「行くって、いったいどこへ。政治家が人間に見えると言ったことはあるけれど、まさか国会にいくんじゃないよね?」
     僕がそんなことを口にすると、仁くんはもっと自分達に関係ありそうな場所だと否定し、来たばかりのバスに僕の手を引いて乗り込む。
     その後、僕らはバスと電車を乗り継いでとある大学まで来ていた。都内でありながら広大な敷地を有したそこには大勢の人間がいた。いくらかの珍しい動物も混ざっているけれど、そこは僕にとって紛れもない人間の世界だった。
    「ちゃんと日本語を話してる」
    「ここの人間ならちゃんとしてるんじゃないかなって思ったんだ。正解だったな」
     どうやら仁くんは、先日否定されかけた、知恵云々の話を証明したかったらしい。大学生ならば知恵よりも勉強という名の知識、あるいは学力だろうと思ったけれど、超難関大学となれば、知識も知恵も豊富なのかもしれない。
    「ここに通えればさ、おまえも息苦しい思いをしないで済むんじゃないか?」
     受験の難易度を無視して仁くんは言う。
     その言葉に僕はその事に首を振った。
    「でも、僕は受験する気はないし」
    「どうして」
     驚いた顔で聞き返す。
    「どうしてって、大学に通う気はないし。それにさすがに、こんなレベルの高いところを受験したって受からないよ」

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    コメント

    • まさにぷちほらー!
      そうか、ホラーを書こうとするから「ガチ」になっちゃうのかな、自分は・・・。不思議な話を書こうとすればいいのかも。
      いや、人の作品を見ると勉強になりますわ~。

      思いっきり、ねこまんまさんのイメージで読みましたww
      カワイイ♡
      • 1 fav
      • Re 返信

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    • ご感想ありがとうございます♪
      ふふっ、イラストの力に助けられました♪

      >ガチ
      私は逆にガチなホラーを書こうとしても書けないんですよ。
      なので、なんちゃってホラーとか、ホラー風味な作品ばかりになってしまいます(涙
      • 1 fav

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    • ご感想ありがとうございます♪

      もうちょっとシンプルに「他人がなにを言ってるかわからない」の発展系のつもりで書いていたりします。
      なんでわからない、わからなくなったかについては…(ごにょごにょ
      でも、豚に見えるってことは、見下してる部分はやっぱりあるのかもしれませんね。
      • 3 fav
      • Re 返信

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    • 見下したり、心が通じないと思った人が動物に見えてしまうのでしょうか?
      本作を読んでいて、カフカの蟲を思い出していました。動物は豚が大半なので、鳥獣擬画とは少し雰囲気が違うかもしれない。
      • 3 fav
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