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シリーズ:獅子の花嫁 -レーヴェンフラウ-
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1. おはようございます

作者:ひろゆみ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    1. おはようございます 0文字

     

     小鳥たちのさえずりが朝を知らせている。
     彼らの留まる枝は、広い庭園の樹木のひとつだった。庭園の主はそこからほど近い屋敷――古城じみた建物に住んでいる。
     そこへ最近、新たな住人が増えた。小鳥たちのおしゃべりの中心はその住人のことだった。
     曰く――


    「顔の造作がゆるんでいるよ、マイロード」
    「ッ!!」



     突然の声に、窓辺にたたずんでいた金の影が肩をふるわせた。


    「……おはよう、クリス」

    「おはよう、バロン伯爵閣下。本日もご機嫌うるわしいようでなによりだ」
    「ああ、君も」


     金の影――バロンのあいさつに人のいい笑顔でクリスと呼ばれた男は返す。


     この2人、とてもちぐはぐな印象をふりまいていた。


     まずは外見。
     バロンと呼ばれた男は、濃いサンイエローのぼさぼさ髪を後ろでひとつにくくっている。まとめているのはガーネットのリボン。前髪も長く目を完全におおい隠してしまっていた。
     浮浪者のようだが、体が大きくピンと伸びた背筋と細やかな仕草が彼を一流階級の人間に見せている。
     クリスも背が高いもののバロンほどではない。がっしりとしたバロンに対し、しなやかな細身である。短い髪はミッドナイトブルー、瞳はムーンイエロー。切れ長の目元、左目側に3つのホクロが弧を描いていた。
     上流の仕草の中に結構な出現率で下品なものが混ざるのが残念だ。


     そして関係性。
     一見すると、主人と執事である。
     事実そのとおりなのだが、2人の間に流れる空気や会話は親しい友人のもの、それなのだ。


    「小鳥たちの会話を立ち聞きなんて紳士にあるまじきことだね。話題が話題だけに気持ちはわからないでもないが」
    「すまない」



     特に敬意をもって接するはずの執事、クリスの態度があまりに気安く軽い。


    「ま、小さき者の声に耳をかたむけるのは良いんじゃないかな。上に立つ者としてはさ」
    「そうか。努力しよう」

    「さっきのは完全に盗聴だけど」

    「ぐ……」



     そして毒がある。


     広い肩を落とし心なし背を丸めて、落ち込みオーラを発するバロン。
     大変わかりやすいが、彼の場合、前髪が顔の半分以上をおおっていてその表情がわからないため、さし引きゼロである。


     そんな主人の様子などどこふく風、涼しい顔でクリスは思い出したように『そうそう』と会話を続ける。


    「その話題のお姫サマがね」
    「リアが?どうかしたのか」



     尻をけられたかのような俊敏な動きで顔をあげたバロンの目に。


    「朝のあいさつにきているよ」


     小鳥たちが噂していた少女――リアがドア向こうにたたずむ姿が飛びこんでくる。
     パールホワイトの長い髪にシグナルレッドの瞳、10代半ばほどのやせ型の娘は、ずっと彼らの様子を見ていたらしい。
     無表情だった。


     不様な姿を見せてしまったカーテンに隠れたい!という本音と、紳士然としなければという義務感とで寄妙なポーズの銅像となったバロンを尻目に、彼女はぎこちなくおじぎをする。
     その動作になれていないというよりは、体の関節がそう動くとは知らないといったふうだ。


    「おはよう、はくしゃくさま」
    「お姫サマ、僕にはないのですか?」

    「おはようクリス」

    「おや。名前、覚えてくれたんですね」



     にこりとあいさつを返しながら、クリスはリアの顔をのぞきこむ。
     先ほどから無表情は崩れない。
     ……否、クリスにのぞきこまれたことでその眉は不快そうによせられ、大きな目は半分のサイズになっていた。
     うん、と声に出してクリスは頷く。


    「やはり素直さは美点です。僕の心はザックリ傷つきましたが、気にすることじゃありません」
    「わかったわ。気にしない」

    「お姫サマ、そこは気にするところです」

    「さっきといっていることがちがうわ」

    「乙女はもちろんのこと、男心も複雑なんですよ」

    「クリスのこころじゃなくて?」

    「僕の心も、という話です」



    「……君たち」



     ボール競技然とした会話に置いてきぼりをくった、この屋敷で一番エラい地位であるはずの人物の声は、心なしか震えていた。
     寂しかったらしい。


     大袈裟に肩をすくめて、クリスは己の主へ場の主導権をわたす。


    「失礼。どうぞ、マイロード」
    「ありがとう、クリス」



     律儀に礼をのべてから、バロンはリアに向き合った。
     前髪で見えないが満面の笑みをうかべているのが、クリスにはわかる。片側だけ出ている犬歯が、朝日を鈍く返した。


    「遅れてしまったが改めて、おはようリア。調子はいかがかな?」
    「べつに」

    「なにか問題や困ったことは?」



     問われた少女は、くいくい、と自分のフリルで飾られた襟ぐりを引っぱった。


    「……まだ、ふくがきつい」

    「なんと!」



     バロンの叫び声で部屋がゆれた。
     その大きさに、耳のよいリアもふらりと体がぐらつく。バロンはさっと彼女を受けとめた。
     ひじを使い、やわらかく包むようにリアを腕に受け抱く彼は、正しく紳士である。


    「クリス! すぐ医者と仕立て屋の手配を。服の締めつけでリアが倒れてしまった……!!」
    「いやいや、原因は君だろ。どう見ても」


     いつ着けたのやら、耳詮をはずしながらクリスは彼らに背を向けた。
     これから起こることに興味はあるし非常におもしろそうだが、尊厳は守ってやらねばならない。


    (自分の身は自分でってね)


     薄情な執事の背後で事案は進んでいる……

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    コメント

    作者紹介

    • ひろゆみ
    • 作品投稿数:3  累計獲得星数:1
    • マンガとラノベに挑戦中。
      文章はまだ勉強し始めたばかりです。よろしくお願いしますm(_ _)m
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