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シリーズ:BEAT~我が家の兄貴はロックミュージシャン
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BEAT~我が家の兄貴はロックミュージシャン

作者:斑鳩青藍

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    十三年前、メジャーデビューを前に一人のミュージシャンが世を去る。彼の三人の息子のうち、長男・海と次男・空はロックバンド『BROTHERS』を率いて父の夢、武道館ライブを目指すのだが。


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    BEAT~我が家の兄貴はロックミュージシャン 3981文字

     

     鎌倉市内、天道家―――。
    「りっくん、お父さんだぞ」
     「とーたん?」
     テレビの前で、まだ小学生らしい男の子二人と、三歳ぐらいの男の子がその時を待っていた。あるロックのライブをテレビ中継したものだが、幼い彼らに果たして理解できるのか疑問だが、そこに父親がいるとなれば一番幼い子供は眠そうな目を擦りがら、必死に目を開ける。
     「海(うみ)、まだ陸には無理だよ」
     「お前が見せてやろうといったんじゃないか。空(そら)」
     七色に輝くライト、観客のざわめき。薄暗いステージに浮かぶ四人のシルエット。
     その日、中継先のライブハウス『ZERO』は超満員だった。ロックバンド『SOULJA』のメジャーデビューが一ヶ月後に決まったと聞いた長年のファンで埋め尽くされている。
     「1(ワン)…2(ツー)…3(スリー)、4(フォー)!」
    ドラムステックのリズムに、ベース『RIKI』が音を重ね、ヴォーカル『KIRA』が歌い出す―――筈だった。
     何が起きたのか、誰にも理解らなかった。歓声は悲鳴に変わり、誰かがステージで叫ぶ。
     「『KIRA』!?」
     「兄たん、父たん何処?」
     兄の袖を引く下の子に、その兄も何が起きたのか理解らない。しかし、彼らの父親が家の玄関を開ける事は二度となかった。
     『SOULJA』ギター兼ヴォーカル『KIRA』、本名・天道吉良(てんどうきら)。
     ―――いつか、武道館のステージに立つ。
     そう夢を語っていた男は伝説となった。季節は巡り歳が過ぎ、『KIRA』と云う人間がいた事を覚えているのは減っていく。しかしそれから八年後―――。
     「リュウジ、天才ダヨ」
     「ケイン、いきなり何だ?」
     アメリカ・NYシティー―――。世界的ギターリストケイン・ロバートが興奮気味に、友人だという日本人を訪ねてきた。
     「ミスター・シイナから、このCD−Rが送られて来たんだけどね」
     「随分と懐かしい名前だな」
     「知り合いかい?リュウジ」
     「まぁな。だが、数年前音楽の世界から退いた筈だが」
     「あのミスター・シイナが俺に聞いて見てくれと送ってきた。驚いたよ。彼は天才だ」
     男には、云っている意味がさっぱり理解らない。そのCD−Rが、プレイヤーにセットされギターの音色が聞こえてくるまでは。
     「こ、これは―――…」
     「凄いだろう?」
     「誰なんだ?」
     「『KIRA』」
     「馬鹿な…」
     ケイン・ロバートは、嘗て『KIRA』と云うミュージシャンがいた事を知らない。『KIRA』は、もうこの世にいないのだ。では、この『KIRA』は誰なのか。男の知ってる『彼』とは、異なるギターテクニックを持つこの『KIRA』は。
     ―――そして、更に五年の歳月が流れる。
     「1(ワン)…2(ツー)…3(スリー)、4(フォー)!」
     歓声の中、ライブハウス『SUCCESS』のステージに颯爽と立つロックバンド『BROTHERS』。
     天道リキは、そんな観客達とは少し離れた場所で彼らを見ていた。
     「メジャーデビューおめでとう。リキ」
     「来ていたのか?涼子」
     「当然でしょ。あたしは嘗て貴方たちのマネージャーだったのよ。まさかプロデュース業に転身するとは思わなかったわ。貴方の腕なら充分やっていける」
     「よしてくれ。俺はもういい年した親父だ。それに、もうベースは弾けない。俺のミュージシャンとしての人生は、あの時終わったのさ。『KIRA』が死んだ時に」
     「そしてまた夢を見つけたってわけ?」
     「あいつと俺の夢は、あいつらが継いでくれる。俺は全力でサポートしようと思ってな」
     『KIRA』こと天道吉良の死から十三年後、彼の兄で元バンドメンバー天道リキは今は『BROTHERS』と云うバンドのプロデューサーをしていた。

     ―――夢は、諦めたらそこで終わりなんだよ。

     昔、天道吉良が言っていた言葉である。諦めなければ、努力をすれば道は続くのだと。
     だが、天道吉良の息子達が父親の夢を引き継ぐとはリキは予想していなかった。
     「そういえば―――彼が帰って来るわ」
     吉良とリキがいた『SOULJA』の元マネージャー・橘涼子は、唐突に切り出した。
     「誰が?」
     「神崎竜二―――」
     「何だって…!」
     「リキ、いくら貴方たちの昔のライバルだからってそんなに驚く事?確かに昔は問題だらけだったけど」

     江ノ島電鉄、通称江ノ電の極楽寺駅を降りて徒歩八分圏内に、天道(てんどう)家はある。極楽寺は紫陽花の季節となれば観光客で賑わう場所の一つだが、別の意味でやって来る者もいる。
     音楽業界に颯爽と登場したロックバンド『BROTHERS』、そのメンバーである天道海と天道空の双子が、暮らしているという。
     天道家の周りには『BROTHERS』メンバーの私生活を覗いてやろうと言う雑誌記者、ファンが今日もウロウロしている。
     幸い、詳細な住所までは掴んでないらしく自宅の前で鉢合わせする事はなかったが、それよりも相手に本人だと気づかれないようだ。特に、この男は。
     「―――あら、海(うみ)ちゃん。今日も早いのねぇ」
     「おばさん、俺もう二十三だよ?その《海ちゃん》はやめてよ」
     「いいじゃないの。あんた達が赤ちゃんの頃から知ってるんだから」
     天道家の隣に住む田中夫人は、ゴミ出しに来た青年を前にケラケラと笑う。
     天道家長男・天道海は金髪碧眼の美丈夫だが、普段はその金髪を無造作に束ね、保育園の保母さんかと思うようなクマやらウサギのアップリケ付きエプロン姿だ。まさかこの男が、今人気のロックバンド『BROTHERS』のベース『KAI』だとは田中夫人も理解らない。
     「そう言えばまた『BROTHERS』探し、最近増えたわねぇ。本当に住んでるのかしら?海ちゃん知ってる?」
     「さぁ、どうだろうね」
     海の見事な惚けっぷりに、田中夫人はそれ以上追求してはこなかった。まさか隣に昔から大物ミュージシャンが住んでいたとは知る由もなく。
     天道家のキッチンでは、丁度朝食用のパンが焼け、天道家の末っ子・陸(りく)が今起きたとばかり入って来るなり固まった。
     「…う」
     キッチンには珍しい人物が既に席にいたのだ。いつもなら、彼が登校してから起きてくる天道家次男・天道空(てんどうぞら)が。次兄は露骨な反応をした弟に、珈琲を啜りながら眉を寄せる。
     「―――俺がいちゃあ、悪いのか?」
     「そ、そんな事はないよ。ただ驚いただけ。空が、こんな時間にいるなんて何年ぶりかなぁと…」
     そう言いながら、陸の笑顔は引き攣っている。朝食に三人揃うことの減った天道家ではある意味貴重だが、陸はどうもこの次兄の前では緊張する。海とは一卵双生児で、彼も金髪碧眼だ。海より長い金髪は腰まで伸びて、こちらは一発で『BROTHERS』のヴォーカルだと理解ってしまう。ただ双子と云っても、性格は真逆だ。
     海と空は、日本人と父親とアメリカ人の母親の間に生まれたハーフで、陸とは異母兄弟である。日本人離れしたその容貌は、これでもかと云うほどのイケメンだ。
     そんな兄たちを持つと、陸は陸で苦労する。
     「おやまぁ、珍しい。空が起きているとは」
     ゴミ出しを終えた長兄が、からかうとように言ったので彼の機嫌は更に低下した。
     「どいつもこいつも、人をなんだと思ってる?」
     「鉄仮面」
     「海兄ぃ」
     陸が以前、空の感想を海に漏らした言葉だ。まさか、本人に言うとは。どうも海は、刺激したがる質のようで、云わなければいいものを余計な事を云っては、空と揉める。
     「てめぇは、脳天気のナルシスト野郎だろうが」
     「また一段と毒舌が冴えたねぇ。頼むからステージでは眉間に皺作らないでくれる?ウチはビジュアルも重視してるんだから」
     双子の口喧嘩は、天道家お馴染みの光景だが、お互い言っている事は間違っていなかった。これでよく、『BROTHERS』の中でやっていけるものだと陸は思うが、切り替えはそれは見事なものだ。
     「陸、そろそろ行かないと遅刻するよ」
     「いけね」
     パンを口に挟み、リュックを背負いつつ去っていく末っ子を見送りながら、海は改めて空に視線を戻した。
     「―――今月発売の『LEGEND』、もう見たか?」

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    作者紹介

    • 斑鳩青藍
    • 作品投稿数:7  累計獲得星数:7
    •  斑鳩青藍(いかるがせいらん)と申します(≧∇≦)
       ファンタジー系、中華風、和風BL小説好きで、自分でも執筆したりしています。応援コメント、感想、レビューお持ちしておりますm(。_。;))m ペコペコ…
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