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シリーズ:勇気を出して~勇者マサオとの回想録~
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勇気を出して~勇者マサオとの回想録~

作者:かにゃんまみ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    ホラーじゃない。ひきこもりマサオのはじめてのおつかいの前身作。


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    勇気を出して~勇者マサオとの回想録~ 7482文字

     

     ようこそ! まずあなたのことを教えてください。
     あなたの名前と性別は? くすのき まさお 男
     あなたの好きな言葉は? 千里の道も一歩から。
     勇者の名前は何にしますか? マサオ
     
     どうもありがとう。それでは冒険の世界へ行きましょう。


     子供の頃から成績もよく、特に数学と物理が得意だった。
     当然理系の大学にも現役合格する。

     就職もままならないこのご時世に、一早く就職先も決まり、俺は誰もが羨む存在だった。
     情報処理関係のIT企業は引く手数多で、次々と仕事が舞い込み、俺は充実した毎日を過ごしていた。
     可愛い彼女もいて付き合いも順調でそのまま結婚し、二人の子供を授かった。まさに人生順風満帆とはこういうことを言うのだ。

     そのうちに自分の能力に年収が折り合わないのではと思いだした。
     今思えばこの自惚れが良くなかったのだ。

     流行りのweb業界の会社に破格の値段でハンティングされた。
     最初の数年は順調にプロジェクトも進んでいた。
     しかし、IT業界は浮き沈みが激しく、スマホなどで課金するゲームがもてはやされていた一部上場の会社が数年で売上が低迷しあっけなく倒産。

     それでも俺は自分の力はそんなものでないと転職先にも今以上の年棒のいいところを狙い続けた。
     幾度か今より低い給料のところから誘われるも、自分の価値はそんな低いものではないと振り切り、そうやって職が決まることもなく数年経つった。
     まだその頃は全く世の中は自分の能力をわかっていないとむしろ世間に唾を吐く思いだった。

     次第に募集も給料も当てが外れ徐々に下がっていった。
     年を重ねる毎に契約社員すら引っかからず、バイトすらおぼつかず、妻は子供たちを連れ別居後離婚。
     俺はすっかりすべてのことに絶望してしまった。

     実家に戻り、部屋に塞ぎ込んだままの俺は、結局周囲に当り散らすだけの親の年金で暮らす引きこもりニートに成り下がっていた。
     離婚した妻や子供たちだけでなく、親からも視線を逸らされる日々。

     そして繰り返されるのはひたすらの後悔の念。
     ああ、あのバイトを断らなければ、いや、そもそも契約社員でも正社員の道があったはずだ、いや、そもそも就職先が少しぐらい賃金が下がったって。
     いや、そもそもヘッドハンティングが悪いんだ。

    「ああ、やり直してぇ……人生をやり直してぇ」
     壁に向かってブツブツ言ったところで時間が戻るわけもなかった。

     耐え難い寂寥感とどうにもならない現実。
     貯金箱の蓋を開けると残金538円。
     しばらくそれを握り締めていた。
     手を開くと手のひらが鬱積して赤くなっていた。

     憤りと焦りとどうしようもない苦悩が入り混じった感情のまま情けなさで体のちからが抜けた途端、500円玉がコロコロとベッドの下に落ちてしまった。
     それを拾おうと埃だらけのベッドの下潜る。
     まるで虫が這うように埃を纏いながら、500円玉を血眼で右往左往探し埃まみれの500円玉を見つけてすぐに掴み取った。
     そんな小銭に執着した自分の手を恥じつつ、たまらなく自分が惨めになって、いい年をして声を上げて泣いていた。

     帰りたい戻りたい……あの頃に帰りたい。

     埃と父親の部屋からくすねたエロ本雑誌にまみれて泣くだけ泣いたら、ふと目の端に懐かしいものが転がってることに気づいた。
     それはベッドを越えて机の下に赤い箱を覗かせている。
     手を伸ばせるだけ伸ばしたらいきなり腕が吊った。

    「いててて……クソっ」

     手で取るのを諦めた。
     部屋を見回すと、堆く積まれた漫画の本の間に押しつぶされるように床の掃除用の柄が挟まれていた。
     それを引き抜くと長い棒で赤い箱をベッドの下に引き寄せた。
     埃だらけの箱を手に、ベッドから這い出ると、体の埃を払いカセットの箱の埃や蜘蛛の巣も払う。
     箱は薄汚れて若干色落ちしている。

     掠れながらもきっと元は派手な箱のデザインだったのだろうと考えると、俺は思い出した。
     これは昔学生の頃やっていたロールプレイングゲームのカセットだ。
     まだカセットの電池は生きているかなどと考えながら、部屋のクローゼットの中にごちゃっと押し込んだ様々なゲーム機の本体を捜す。
     少し埃が被っていたのでウェットテッシュで拭き取り、カセットをセットして電源を入れるとついた。

     かなり昔、まだ学生の頃やったゲームのオープニングファンファーレが派手な画面と共に狭い部屋に鳴り響く。
     俺は慌ててテレビの音量を下げた。

     
    「懐かしいな……」


     コントローラーへ手を伸ばすと、画面の中の続きのボタンを押した。
     ゲームは既に魔王を倒した後の世界で、そこから世界を自由に飛びまわることができるオマケのコンテンツだった。
     レベルを上げたり、ちょっとした洞窟モンスター討伐ゲームができるようになっている。

     場所は勇者の村の教会だった。
     しかし、画面に例のごとく縦に並んで立っているはずの勇者のパーティがいない。
     俺は画面を見て訝しんだ。

     俺の反応に気づいたかのように教会の壇上に立っている神父がこちらを見上げた。
     神聖な教会の音楽と共に、セリフのカーソルが流れる。

    「勇者さまをお探しですか?」
     俺は何が起きたかも自覚できず、アホみたいに「そうだけど」と返事をしてしまった。

    「勇者さまなら出会いの酒場でおまちしています」
    「ああ、なんだって?」

     わけもわからずとにかく教会を出ると俺は自然にカーソルを動かしていた。
     真ん中にプレイヤーがいるはずのなにもない景色だったが、確かに自分を中心に動いている。
     それはまるで俺自身が動いているようだった。

     過去の記憶とは凄いものである。確かこの街の画面右斜め上が酒場だったはずだと思った。
     そしてそれは間違いなく懐かしい街の音楽に乗せ、看板と建物が姿を現した。

     俺はそのまま酒場に足を運んだ。

     ふっとテレビ画面と同時に部屋の中までが暗くなる。
     ザッザッザッと音がした。

     俺は怖くなって咄嗟に目を閉じたが、すぐに誰かが俺を呼ぶ声が正面から聞こえた。


    「雅男さん、雅男さん、お懐かしい! 大変お久しぶりです」

     恐る恐る目を開けると眼前には妙に荒いテクスチャーのカウンターがあった。
     酒屋のオヤジが単調な顔でそれでもそれが笑顔とわかるほどで、ニコニコしながらお酒を出す。
     酒屋のオヤジは立っていながら行進しているようで、パターン数は2で動いていた。
     気づくとあたり一面が酒場らしき風情である。
     グラスと思われるものが棚に陳列し、お酒の瓶や樽が棚の上にある。
     確かな事は世界が何もかも四角いすべてドット絵になっていることだ。

     俺は目を瞬せたが、目が悪くなったわけでもないらしい。
     辺りを見回しても客も誰も彼もがドット絵だった。

     この異常な事態に普通の人間なら気が狂うかも知れない。
     でも俺は別になにもかもどうでもよくなっていたので、驚く程この世界を当たり前に受け止めていた。
     
     そして、なんだかいい匂いがする。

     酒屋の親父が目に涙を溜め、懐かしそうに俺の姿を見て優しく俺にお酒を勧めた。
     酒のグラスを見るとドッドの濃淡が奥へ行くほど茶色くなっている。
     そのグラスを手にしようとして俺は「あっ」と思わず声を出した。
     俺の手もドット絵だった。角いが可愛い手をしている。グラスを握った手はちゃんと濃淡で描かれていた。
     
     お酒は少し泥臭い匂いがした。
     俺は飲めればなんでもいいやとドット顔の親父に勧められるまま一気に飲み干した。
     しばらく俺は酒を煽り続けた。とにかく飲めればなんでもいい。
     もはや常識など糞くらえだ!


    「いけないお酒の飲み方をしてるのう」と隣から声が聞こえた。
     ふと横を見ると年を取った一人の白い髭を生やした老人が隣に座っていた。

    「ふんほっとけよ、誰だお前は?」
    「フォフォフォ忘れたかの。わしは勇者マサオじゃよ」
    「マサオ? 俺と同じ名前じゃないかよ、真似すんなクソじじい!」
    「お主がつけたんじゃろ」
    「知らねぇよ」
     
     目の前の四角を上手く円状に見せた鍋の中に、豆腐なのか白菜なのか肉なのかとにかく小さすぎてよくわからないが、白と薄緑、桃色の具材がグツグツと煮えていた。

    「何か辛いことでもあったかのう」

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    作者紹介

    • かにゃんまみ
    • 作品投稿数:37  累計獲得星数:309
    • 初めまして。2014年の3月末位から初めてここに投稿させていただきました。

      ツイッターかにゃんまみで登録しました。BL小説書きの方とフォローしたいです。よろしくお願いいたします。

      長い間BLの小説を趣味で書いています。
      絵を描くのも好きですが、小説を書くのも大好きです!
      職業はゲームのドットやアイコン背景画のデザイナー?(^^;しがない絵描きです)
      フロンティアワークスさんのゲーム。三千界のアバターのシナリオのお仕事もさせていただいています。

      BLサイトはhttp://bluemoonlight.sakura.ne.jp/です。
      不束者ですがよろしくお願いいたします。

      最近好きな物。あいうえお順。種類雑種;



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      イトケン
      エルキュールポアロ
      小山慶一郎
      堺雅人
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      ユリアリプニツカヤ
      ポルノグラフティ
      (他にも色々あるけど……)
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