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シリーズ:常夜の穴
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常夜の穴

作者:hibiki

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    ※シナリオ形式

    〈人物〉

    ・桑野カク(12)
    ・桑野愛(めぐみ)(40)
    ・桑野栄(しげる)(40)

    ・糸杉ルリ(12)
    ・糸杉恵美子(40)
    ・糸杉武夫(40)

    ・源九郎義経(31)
    ・坂本龍馬(31)
    ・織田信長(47)
    ・武蔵坊弁慶(35)
    ・片岡常春(35)
    ・伊勢三郎義盛(35)
    ・老婆(70)

    ※略称用語
    N=ナレーション
    M=モノローグ



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    常夜の穴 17686文字

     


    〜神円町・柱山〜

    この町には古より続く、一つの伝承がある

     常夜の穴

    この世とあの世を繋ぐ場所

    生者の魂は、その常夜の穴を通り、

    冥界へと導かれる

    この世とあの世を繋ぐ穴。その境界線を引くのが、

     狭間の杭

    この杭によって、あの世とこの世が隔てられ、

    両世界の秩序が保たれている

    もしも、この杭を抜けば、

    死者の魂が解き放たれ、

    やがては生者と還る

    故に、

    この町には古より続く、一つの訓えがある

    何人も狭間の杭を、抜くべからず


    ○カクの回想・交差点
       立ち尽くす、桑野カク(12)。服はボロボロだ。
       その目は見開かれている。
    カクM「母さんが死んだ」
       血まみれで道路に倒れている、桑野愛(40)。
    カクM「父さんも死んだ」
       ぐしゃぐしゃに潰れた自動車。その運転席で血を流す桑野栄(40)。
       自動車は、大型トラックの後方に突っ込んだ形で静止している。
       辺りには、人だかり。頭を抱えたトラック運転手、急いで電話をする者、スマホで写真を撮る者。
    カクM「僕だけが生き残った」
       カクの額から、だらりと血が流れ落ちる。

    ○同・神円総合病院・安置室
    カクM「僕は毎晩、泣いた。泣いて、泣いて、泣いて……そのうち涙も枯れた」
       二人分のベッド。白いシーツがかぶせてある。
       カク、ベッドを前にして、何も出来ない。
       カクの頭部には包帯が巻かれている。

    ○同・病室
       カクの周りには人だかり。みんな同級生の小学六年生たち。お見舞いに来ているのだ。
       カク、同級生たちに笑って見せる。
    カクM「でも、いつまでも悲しんではいられない。もう母さんも、父さんもいないんだ」
       カクを病室の入り口から、遠目で見ている、糸杉ルリ(12)。

    ○桑野家・居間
    カクM「これからは一人で生きていかなくちゃいけない」
       カク、立ち尽くす。
       部屋には誰もいない。

    ○神円小学校・六年二組
       カク、同級生たちに手を挙げ、下校していく。
    カクM「僕は悲しくても笑って」

    ○桑野家・寝室
       カク、父親のネクタイやスーツを段ボールに詰め込んでいる。
    カクM「過去を忘れたフリをして」

    ○同・居間(夜)
       カク、一人でコンビニ弁当を食べている。
    カクM「少しずつ現実という言葉の意味を理解して」

    ○同・玄関(朝)
       カク、扉を開け、振り返って見る。
       誰もいない室内。
    カクM「二人の空白を受け入れ、生きていく……」

    ○神円町・柱山・入り口(夕)
       カク、立て看板を見つめる。そこには『常夜の穴』の伝承が記されている。

    ○斎場(夜)
       愛と栄の写真。そして二人の棺。
       二人の葬儀が同時に執り行われる。
    カクM「……なんてこと、できるかああぁぁぁ??!!」
       ポツンと空いた遺族者席。
       そこにカクの姿はない。
       皆がきょろきょろと辺りを伺っている。

    ○神円町・柱山・山道(夜)
    カクM「この町には、一つの伝承がある」
       坂道を颯爽と駆け上がる、カク。
    カクM「常夜の穴」
       汗を流し、息を切らせている。泥だらけだ
    カクM「この世とあの世を繋ぐ場所。生者の魂は、常夜の穴を通り、冥界へと導かれる」
       カク、暗い森の中を走る。
       木の根につまずき、転ぶ。
       だが、立ち上がって、走り続ける。
       目の前には古びた鳥居。
       その脇に老婆(70)がちょこんと座っている。
    老婆「真に欲する者にのみ、それは現れるだろう」
       カク、歩き始める。
    老婆「だが、坊主……およしなさい」
       カク、老婆を無視し、鳥居をくぐる。
    カクN「狭間の杭。この杭によって、あの世とこの世が隔てられ、両世界の秩序が保たれている」
       走るカク。頭には母と父の笑顔がちらつく。

    ○カクの回想・交差点・自動車内
       カク、後部座席に座っている。
       助手席には、母の愛。振り返ってカクを見て、
    愛「カクったら、また鬼ごっこで走り回って、転んで。ほら膝すりむいたんですよ」
       運転席には、父の栄。バックミラーでカクを見ながら、
    栄「いいんだ、カク。走れ。お前は男の子なんだから」
       笑い合う栄と愛。
       交差点、信号は青。
       しかし、目の前にトラックが突っ込んでくる。
     
    ○神円町・柱山・山頂(夜)(回想戻り)
       カク、森を抜けた。
       そこには円形のくぼみ。『常夜の穴』だ。
       その中心には、一本の杭が地面に刺さっている。
       杭は十字架状で、銅製。柄には読めないが、文字が彫ってある。『狭間の杭』だ。
    カクM「この杭を抜けば、死者の魂が解き放たれ、やがては生者と還る」
       カク、片手で杭を握る。
       ×   ×   ×
       インサート。事故の光景が蘇る。
       潰れた自動車。
       倒れている愛。
       血まみれの栄。
       ×   ×   ×
    カクM「僕は」
       と、もう一方の手も杭にかけ、
    カク「……独りは、イヤだよ」
       と、杭を引き抜く。
       その瞬間、杭を抜いた小さな穴から、突風が吹き出し、カクは後方に飛ばされる。
       カク、杭を持ったままその穴を見つめる。
       穴から黒い煙が噴き出し、それは天へと立ち上り、大きな雲となり、どんどん広がっていく。

    ○斎場(夜)
       煙は斎場の上空にも流れて来る。
       斎場の棺に入った、栄と愛の二人。
       その真っ白な顔が、少しずつ色づき始める。

    ○神円町・柱山・山道(夜)
       杭を持ったまま、山を下るカク。
       鳥居をくぐると、先程の老婆がいる。
    老婆「坊主、しかと覚えておけ。その杭は狭間の杭。この世とあの世を別つもの。よって死者はその杭に触れることすら、ままならん。ゆめ手放すな」
       カク、一度杭を見て、歩き出す。
       その歩みは、やがて疾走に変わる。

    ○斎場・前(夜)
       カク、やってくると、中から続々と参列者が飛び出してくる。
       叔母も出てくる。叔母がカクに気づき、
    叔母「あ、カクちゃん?!」
    カク「どうしたの? おばさん」
    叔母「あ、あれは間違いなく……カクちゃんの……いや、そんなことない。私は何も見てない。見てないよ」
       と、逃げ出していく。
       カク、斎場へ足を踏み入れる。

    ○同・内
       もうみんな逃げ出したのか、何の音もしない。
       カク、恐る恐る入って行く。
       そこには空になった、二つの棺。
    声「カク」
       カク、ハッとなり、振り返る。
       そこには死に装束を着た、愛と栄。困惑した顔で、
    栄「俺たち、死んだはずじゃ? これは」
    愛「カク? 本当にカクなの?」
       カク、自然と涙が零れ落ち、
    カク「そうだよ。僕はカクだ」
       と、愛と栄に向かって走り、飛びつく。
    カク「僕はカクだ。母さんと父さんの息子だよ」
       愛と栄、そしてカクは互いを抱き、笑いながら、ただただ泣く。

    ○各地の墓地(夜)
       京都府 阿弥陀寺には、『織田信長』の文字。
       墓石が揺れている。
       京都府 霊山護國神社には『坂本龍馬』の文字。
       揺れていた墓石が、倒れる。
       神奈川県 白旗神社には『源義経』の文字。
       倒れた鎮霊碑が砕け、下の地面が露わになる。
       そして、その土の中から、突如腕が飛び出す。
       同時に日本各地の墓地で、次々と土の下から腕が飛び出してくる。

    ○神円小学校・六年二組(翌日)
       カク、男子生徒と箒で野球をしている。
    男子A「カク、やけに楽しそうだな」
    男子B「なんか良い事あったか?」
    カク「え? べ、別に!」
       と、ボールを投げる。
       カクの投げたボールを、男子Aが打ち返す。
       打たれたボールを、カクが取りに走る。その瞬間、教室に入って来たルリと激突。二人は床に倒れ、カクがルリを押しつぶす。
    カク「いってぇ……」
       倒れた二人は互いを見るが、顔が近い。
       周りからはヤジが飛ぶ、
    男子たち「ひゅーひゅー、昼間から熱いねぇ!」
       ルリ、赤面し、カクを突き飛ばす。
    ルリ「は、離れなさいよ!」
    カク「なんだよ、わざとじゃないだろ!」
    ルリ「教室で野球する方が悪い! もう最低!」
       と、走っていく。
       カク、参ったと頭を掻く。
       すぐ教室の外では、ルリが立ちつくしたまま。

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