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※シナリオ形式
〈人物〉
・桑野カク(12)
・桑野愛(めぐみ)(40)
・桑野栄(しげる)(40)
・糸杉ルリ(12)
・糸杉恵美子(40)
・糸杉武夫(40)
・源九郎義経(31)
・坂本龍馬(31)
・織田信長(47)
・武蔵坊弁慶(35)
・片岡常春(35)
・伊勢三郎義盛(35)
・老婆(70)
※略称用語
N=ナレーション
M=モノローグ
〜神円町・柱山〜
この町には古より続く、一つの伝承がある
常夜の穴
この世とあの世を繋ぐ場所
生者の魂は、その常夜の穴を通り、
冥界へと導かれる
この世とあの世を繋ぐ穴。その境界線を引くのが、
狭間の杭
この杭によって、あの世とこの世が隔てられ、
両世界の秩序が保たれている
もしも、この杭を抜けば、
死者の魂が解き放たれ、
やがては生者と還る
故に、
この町には古より続く、一つの訓えがある
何人も狭間の杭を、抜くべからず
○カクの回想・交差点
立ち尽くす、桑野カク(12)。服はボロボロだ。
その目は見開かれている。
カクM「母さんが死んだ」
血まみれで道路に倒れている、桑野愛(40)。
カクM「父さんも死んだ」
ぐしゃぐしゃに潰れた自動車。その運転席で血を流す桑野栄(40)。
自動車は、大型トラックの後方に突っ込んだ形で静止している。
辺りには、人だかり。頭を抱えたトラック運転手、急いで電話をする者、スマホで写真を撮る者。
カクM「僕だけが生き残った」
カクの額から、だらりと血が流れ落ちる。
○同・神円総合病院・安置室
カクM「僕は毎晩、泣いた。泣いて、泣いて、泣いて……そのうち涙も枯れた」
二人分のベッド。白いシーツがかぶせてある。
カク、ベッドを前にして、何も出来ない。
カクの頭部には包帯が巻かれている。
○同・病室
カクの周りには人だかり。みんな同級生の小学六年生たち。お見舞いに来ているのだ。
カク、同級生たちに笑って見せる。
カクM「でも、いつまでも悲しんではいられない。もう母さんも、父さんもいないんだ」
カクを病室の入り口から、遠目で見ている、糸杉ルリ(12)。
○桑野家・居間
カクM「これからは一人で生きていかなくちゃいけない」
カク、立ち尽くす。
部屋には誰もいない。
○神円小学校・六年二組
カク、同級生たちに手を挙げ、下校していく。
カクM「僕は悲しくても笑って」
○桑野家・寝室
カク、父親のネクタイやスーツを段ボールに詰め込んでいる。
カクM「過去を忘れたフリをして」
○同・居間(夜)
カク、一人でコンビニ弁当を食べている。
カクM「少しずつ現実という言葉の意味を理解して」
○同・玄関(朝)
カク、扉を開け、振り返って見る。
誰もいない室内。
カクM「二人の空白を受け入れ、生きていく……」
○神円町・柱山・入り口(夕)
カク、立て看板を見つめる。そこには『常夜の穴』の伝承が記されている。
○斎場(夜)
愛と栄の写真。そして二人の棺。
二人の葬儀が同時に執り行われる。
カクM「……なんてこと、できるかああぁぁぁ??!!」
ポツンと空いた遺族者席。
そこにカクの姿はない。
皆がきょろきょろと辺りを伺っている。
○神円町・柱山・山道(夜)
カクM「この町には、一つの伝承がある」
坂道を颯爽と駆け上がる、カク。
カクM「常夜の穴」
汗を流し、息を切らせている。泥だらけだ
カクM「この世とあの世を繋ぐ場所。生者の魂は、常夜の穴を通り、冥界へと導かれる」
カク、暗い森の中を走る。
木の根につまずき、転ぶ。
だが、立ち上がって、走り続ける。
目の前には古びた鳥居。
その脇に老婆(70)がちょこんと座っている。
老婆「真に欲する者にのみ、それは現れるだろう」
カク、歩き始める。
老婆「だが、坊主……およしなさい」
カク、老婆を無視し、鳥居をくぐる。
カクN「狭間の杭。この杭によって、あの世とこの世が隔てられ、両世界の秩序が保たれている」
走るカク。頭には母と父の笑顔がちらつく。
○カクの回想・交差点・自動車内
カク、後部座席に座っている。
助手席には、母の愛。振り返ってカクを見て、
愛「カクったら、また鬼ごっこで走り回って、転んで。ほら膝すりむいたんですよ」
運転席には、父の栄。バックミラーでカクを見ながら、
栄「いいんだ、カク。走れ。お前は男の子なんだから」
笑い合う栄と愛。
交差点、信号は青。
しかし、目の前にトラックが突っ込んでくる。
○神円町・柱山・山頂(夜)(回想戻り)
カク、森を抜けた。
そこには円形のくぼみ。『常夜の穴』だ。
その中心には、一本の杭が地面に刺さっている。
杭は十字架状で、銅製。柄には読めないが、文字が彫ってある。『狭間の杭』だ。
カクM「この杭を抜けば、死者の魂が解き放たれ、やがては生者と還る」
カク、片手で杭を握る。
× × ×
インサート。事故の光景が蘇る。
潰れた自動車。
倒れている愛。
血まみれの栄。
× × ×
カクM「僕は」
と、もう一方の手も杭にかけ、
カク「……独りは、イヤだよ」
と、杭を引き抜く。
その瞬間、杭を抜いた小さな穴から、突風が吹き出し、カクは後方に飛ばされる。
カク、杭を持ったままその穴を見つめる。
穴から黒い煙が噴き出し、それは天へと立ち上り、大きな雲となり、どんどん広がっていく。
○斎場(夜)
煙は斎場の上空にも流れて来る。
斎場の棺に入った、栄と愛の二人。
その真っ白な顔が、少しずつ色づき始める。
○神円町・柱山・山道(夜)
杭を持ったまま、山を下るカク。
鳥居をくぐると、先程の老婆がいる。
老婆「坊主、しかと覚えておけ。その杭は狭間の杭。この世とあの世を別つもの。よって死者はその杭に触れることすら、ままならん。ゆめ手放すな」
カク、一度杭を見て、歩き出す。
その歩みは、やがて疾走に変わる。
○斎場・前(夜)
カク、やってくると、中から続々と参列者が飛び出してくる。
叔母も出てくる。叔母がカクに気づき、
叔母「あ、カクちゃん?!」
カク「どうしたの? おばさん」
叔母「あ、あれは間違いなく……カクちゃんの……いや、そんなことない。私は何も見てない。見てないよ」
と、逃げ出していく。
カク、斎場へ足を踏み入れる。
○同・内
もうみんな逃げ出したのか、何の音もしない。
カク、恐る恐る入って行く。
そこには空になった、二つの棺。
声「カク」
カク、ハッとなり、振り返る。
そこには死に装束を着た、愛と栄。困惑した顔で、
栄「俺たち、死んだはずじゃ? これは」
愛「カク? 本当にカクなの?」
カク、自然と涙が零れ落ち、
カク「そうだよ。僕はカクだ」
と、愛と栄に向かって走り、飛びつく。
カク「僕はカクだ。母さんと父さんの息子だよ」
愛と栄、そしてカクは互いを抱き、笑いながら、ただただ泣く。
○各地の墓地(夜)
京都府 阿弥陀寺には、『織田信長』の文字。
墓石が揺れている。
京都府 霊山護國神社には『坂本龍馬』の文字。
揺れていた墓石が、倒れる。
神奈川県 白旗神社には『源義経』の文字。
倒れた鎮霊碑が砕け、下の地面が露わになる。
そして、その土の中から、突如腕が飛び出す。
同時に日本各地の墓地で、次々と土の下から腕が飛び出してくる。
○神円小学校・六年二組(翌日)
カク、男子生徒と箒で野球をしている。
男子A「カク、やけに楽しそうだな」
男子B「なんか良い事あったか?」
カク「え? べ、別に!」
と、ボールを投げる。
カクの投げたボールを、男子Aが打ち返す。
打たれたボールを、カクが取りに走る。その瞬間、教室に入って来たルリと激突。二人は床に倒れ、カクがルリを押しつぶす。
カク「いってぇ……」
倒れた二人は互いを見るが、顔が近い。
周りからはヤジが飛ぶ、
男子たち「ひゅーひゅー、昼間から熱いねぇ!」
ルリ、赤面し、カクを突き飛ばす。
ルリ「は、離れなさいよ!」
カク「なんだよ、わざとじゃないだろ!」
ルリ「教室で野球する方が悪い! もう最低!」
と、走っていく。
カク、参ったと頭を掻く。
すぐ教室の外では、ルリが立ちつくしたまま。
└「お前の様な目の死んだ勇者がいるか!!」脱力系ドS勇者の敵も勇者。勇者同士のバトルロイヤルコメディ
└勇者は宿屋にお世話になろうとしたが…
└勇者と勇者が出会ったら
└二人の勇者は結局見た目だけ勇者っぽい