upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:フルーツバスケット版権小説「僕から、僕を」(紫呉×はとり)
閲覧数の合計:1052

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

フルーツバスケット版権小説「僕から、僕を」(紫呉×はとり)

作者:西崎宮都

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    花とゆめ、高屋奈月著の漫画がアニメ化されたアニメ版「フルーツバスケット」の前半+妄想設定で、2002年ごろに書いてWebサイトにUPしていた作品の再掲です。草摩紫呉と草摩はとりが、マブダチ以上、恋人未満の設定。誕生日を一人過ごすはとりの家に、透が大きな黒い犬を連れてやってくる。

    BL(ボーイズラブ)ものなので、苦手な人はご注意ください。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:2 閲覧数:1052

    フルーツバスケット版権小説「僕から、僕を」(紫呉×はとり) 19418文字

     

    「どうかしたのか?」
    「慊人様が、お呼びです」
     いつものことか、とはとりはかすかに肩を落とす。普段なら仕方ない、とそのまま足を向けるのだが、今日は尋常ではない様子の紫呉が部屋にいるのだ。
    「なんとか、そちらでできないのか?」
     女中は首を振る。慊人の我が儘に逆らえる者は、この屋敷にはいない。
    「分かった。すぐに向かう」
     はとりは女中を下がらせ、部屋に戻った。
     犬は食べおえて満足したように、また部屋の隅で寝そべっている。
    「紫呉」
     犬はそっと顔を上げる。
    「慊人の所へ行かねばならない。お前の処置は、その後だ。いいか?」
     はとりは扉を開けてもすぐには見えない場所へ、犬を移動させた。
    「あまり動くな」
     分かった、と言うように、犬は小さく吠えた。
    「行ってくる」
     顔を上げて自分を目だけで追う犬が愛おしくなり、はとりは立ち上がったもののまた座り直し、何度か犬の頭を撫でてやった。
    「お前、ちょっとはげてるぞ」
     犬は言われたことを気にしないように、はとりの手に頭をあずけた。





    「遅かったね、はとり」
     慊人は着物が乱れているのも気にしないように、布団の上に座っている。
    「申し訳ありません」
    「どうして僕が呼んだら、すぐに来られない?」
     慊人はゆっくりと立ち上がり、はとりの方に近づいてくる。はとりは正座したまま、動かなかった。少々殴られるくらい、もうとっくの昔に慣れた。
     慊人ははとりのすぐ前で足を止めた。
    「動物のにおいがする!」
     嫌悪感を隠そうともせず、慊人は高い声を上げた。先ほどからずっと犬の紫呉がそばにいたし、最後に撫でてから手を洗っていない。自分では気が付かないうちに、においが移っていたのだろう。
     はとりは何も言わず、視線の位置も畳のすみから外さなかった。
    「出ていけ。気分が悪い」
     はとりの膝を軽く蹴り、慊人は背を向けた。これくらい、大した痛みではない。はとりは何も言わず、立ち上がり、一礼した。
     においがついた言い訳として何か言っても気分を害させるだけだろうし、犬がいるなんて言うつもりは毛頭ない。慊人がこれ以上何も言わないのをいいことに、はとりは黙って部屋を出た。
     部屋に戻ると、犬ははとりが帰ってきたのが分かったように、すっと物陰から出てきて、はとりの足に体をすり寄せる。はとりはしゃがんで、犬の背中を軽く撫でた。
    「お前のおかげで、慊人から逃れられたよ」
     はとりが喜んでいるのが分かったかのように、犬は頭をはとりの肩にすり寄せてきた。





     翌朝。はとりは、自分のものではないぬくもりをそばに感じ、目を開けた。何かやわらかいものに包まれているような、心地よい夢を見ていた気がした。まだ夢の世界なのかと思いつつ、はとりはまだ薄暗い部屋の天井を眺めてみた。やはり隣に、何かいる。ゆっくりとそちらに手をやると、温かいものに触れた。半覚醒状態のまま、それが動物の毛であることを認識する。
    「……お前、か」
     黒犬は、夜のうちにはとりの布団の中に潜り込んだらしい。はとりが触れても、まだ目を覚まそうとはしなかった。小さな鼻息と共に、ゆっくりと背中が上下していた。
     昨日のうちに原因でも調べようか、と思っていたが、疲れていたので、結局何もしないうちに寝てしまった。朝になったら元に戻っているのではないかと期待したのだが、犬は犬のままだ。
    「どうしたものか……」
     考えているうちに扉がノックされ、女中が朝食を運んできた。またご飯とみそ汁とは二杯目を持ってくるように頼んだが、彼女は何も言わずに引き下がった。
     焼き魚のにおいにはひかれないのか、犬はまだ布団の中である。先に自分のみそ汁茶碗にご飯を入れ、混ぜておく。あまり熱くない方がいいだろう。猫舌、とは良く聞く話だが、犬は熱い物は平気なのだろうか。
     女中が、二杯目のご飯と汁とを運んでくる。少し怒ったような顔つきで猫まんまを箸で混ぜているはとりを見て、また何も言わずに扉の近くに盆を置き、下がった。はとりは扉が閉まる音ではっと気が付き、まるで猫まんまを今から食べようとしているかのような自分の姿を見られたことを、かなり恥ずかしく思う。
     一度見られたら、これまでずっと、いや、これからもずっと、猫まんまを二杯も食べる男だ、と思われかねない。台所のいいうわさ話の一つを提供してしまった、と思うのは、気持ちがいいものではない。
    「お前のせいだぞ、紫呉」
     女中の足音が去っていくのを確認してから、はとりは少し布団を持ち上げた。何事もなかったかのように寝ている姿が少し恨めしく想い、軽く頭を撫でてやる。犬はようやく目を開け、のんびりと動いた。
     混ぜ終わった猫まんまを、布団から少し離して置いた。犬はちらっと目をやったが、まだ眠そうに目をしばたかせている。
    「そう言えばお前、結構低血圧気味だったか」
     返事の代わりに、あくびをするかのように、犬は軽く身を震わせた。





     何となく朝からペースを狂わされたこともあるし、人の姿に戻らない紫呉を一人部屋に残しておくのもどうかと思われるので、今日は仕事を休むことにした。
     過去に何か、十二支が変身したまま戻らなくなった、といった事例を聞いたことがなかったか、などぼんやりと考えていると、また扉がノックされる。はとりは慌てて犬を物陰に押しやり、扉を開けた。
     女中が運んできたのは、一通の手紙。切手は貼っておらず、差出人の名前もなかったが、草摩はとり様、と確かに書いてある。不審に思ったが、筆跡には見覚えがあった。
     たぶん、差出人は紫呉だ。何を考えているのか、と思いつつ、はとりはすぐに封を切る。まだのりが乾ききっていないような手触りがあった。
     どこででも見かけるような長細い茶封筒の中には、半分に切られた原稿用紙が折り畳まれて入っていた。かすかな煙草のにおいが鼻をかすめる。
     これはどう考えても、紫呉に違いない。彼の部屋の机の上には、半分に切られた原稿用紙が積み重ねられている。普段は、メモ用紙代わりとして使われているようだが。
    「もう、原稿用紙は使わなくなったけれどね。思いついたアイディアとかちょっと書き残すには、やっぱり原稿用紙なんだ」
     理由を聞いたところ、確かそんな答えが返ってきた。
    「もう、戻らないことに決めました。今度こそ、僕のすべてをあげます」
     原稿用紙の中央には、ボールペンでそう一言書かれていた。
    「莫迦(ばか)か!」
     はとりは手紙を力一杯床に投げつけた。
    「一体、何を考えている?」
     はとりは大股で犬に歩み寄る。横たわっていた犬は、そっと顔を上げた。
    「お前の存在が、どれほど俺を苦しめているのか、分かるか?」
     犬ははとりの剣幕に驚いたかのように、数歩下がった。その割にはまたのんびりとした調子で座り直し、相変わらずの何を考えているのか分からない目で、はとりを見つめる。その黒い瞳からは、何の感情も読みとれない。あいにくはとりは犬に関して全然詳しいほうではなく、犬の気持ちを読みとることなんてできはしない。だが、そのただ黒い、底が見えない瞳は、彼が良く知る人物と酷似しているように思えた。見つめれば見つめるほど、似ているような、いや、実際、今、紫呉自身とこうして向かい合っているような錯覚まで覚える。
    「……分からないだろうな。お前は」
     いつもひょうひょうとして、誰の手からもすり抜けて出ていく。決して捕まらない存在。いつも背中ばかりを追いかけ、一挙一動に左右されてばかりだ。綾女はまだ見当がつけられるが、紫呉は分からない。
     分からないから、気になる。気になるから、いつまででも見続けていたい。
     いつしか、そこには単なる友情以上の何かが介在していることに、はとりは漠然と気が付いていた。
     ――「僕は、はーさんが好きだからさ」――
     いつのことだっだだろうか。紫呉がそんなことを言ったのは。
     一体彼は、どこまでが本当で、どこまでが嘘なのだろうか。つきあいが長く、一番彼を見てきたのが自分だろうに、未だにそれが分からない。ふたを開けたらすべて嘘なのか、と思うこともあるが、彼は逆に、誰よりも純粋で、誰よりも嘘がつけない、壊れそうな一部分を持っていることは否めない。

    ←前のページ 現在 2/6 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    作者紹介

    • 西崎宮都
    • 作品投稿数:13  累計獲得星数:28
    • 西崎宮都(にしざきみやと)。ボーイフレンド(仮)など版権小説中心に書いています。特に西園寺生徒会長(西園寺蓮)×赤主人公のR-18(官能小説)。読みたいシチュエーション、読みたいカップリングなどコメントで募集。

      ※有料版(R-18)は、upppi運用変更に伴い、BOOTHでサンプルの確認、お買い求め下さい。
    • 関連URL
      pixiv(未完結・ショート):http://www.pixiv.net/member.php?id=12368939
      BOOTH(R18有料販売):https://miyato.booth.pm/

    この作者の人気作品

    小説 同人・パロディの人気作品

    続きを見る