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シリーズ:大阪気質
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大阪気質

作者:伊藤康弘

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    登録ユーザー星:0 だれでも星:25 閲覧数:168

    大阪気質 1038文字

     

    「ほら、ここがひっかけ橋。で、グリコの看板」
    「あー!テレビに出てくるヤツだ!」
    子供のように喜ぶ太郎。
    「正式名称は戎橋なんやけどな。で、あのビルがブラック・レインで悪の巣窟になっていたとこ」
    「覚えてないよ」
    「ケイト・キャプショーが踊っていたとこだよ!」
    「誰だよ、それ」
    「DVD見直せ!大阪人の心の映画や!」
    「オレは東京人だから」
    「あのなー、ミナミのまん中でそういうこと言うなや」
    「なんで?」
    「東京は敵だからだよ」
    「大阪の敵は名古屋だろ」
    一瞬、太郎を殴り殺したくなったが必死に抑えて、
    「んじゃ、メシ食おう。どこにする?」
    太郎、辺りを見回して、
    「あんまり腹減ってないからマックで…」
    思わず太郎の口を手でふさぎ、
    「マクドやな!」
    太郎、手を払いのけて、
    「なにすんだよ、マックだよ!」
    太郎の顔が苦痛にゆがむ。
    人を殴ったことは初めてだった。
    「てめえ、なにすんだよ!」
    吠える太郎に構わず辺りを見回し、
    「ただじゃ済まないぞ」
    「こっちの台詞だよ!」
    「大阪でその言葉を使ったら、ただじゃ済まねーんだよ」
    「わけわかんねーこと言うな!って、痛っ」
    振り返る太郎。
    年輩の女性が鬼のような形相で傘の先端を太郎に向けて突きだしている。
    「なにすんだよババア!」
    「すみません!こいつなにもわかってないので!」
    太郎の背後、連なる飲食店から出てくる従業員たち。皆、手に包丁やナイフを持っている。
    「やべえぞ」
    「なんだよ!どうなってんだよ!」
    「殺されるんだよ!」
    「なんで!?」
    「大阪ではマクドナルドはマクドなんだよ!」
    「はあ?」
    「交番!交番に逃げよう!」
    太郎の手を掴み橋のたもとにある交番を見ると警官が出てくる。片手で構えられている拳銃。
    ためらいもなく発砲を始める警官。
    血煙をあげて倒れ込む太郎。
    死体を投げ捨てるが周りを囲む輪は狭まっていく。
    橋の欄干に飛びあがる。
    そして一気にジャンプ。
    水しぶきをあげる道頓堀川。
    水面から顔を出す。
    欄干に群がる人々。
    橋から遠ざかろうと泳ぎだした足を誰かに掴まれる。
    ヘドロだらけで顔の右半分が欠けているが白髪頭にメガネ、白いスーツ…カーネル・サンダースだ。
    体を引き寄せられると背中まで手をまわされギリギリと締めつけてくる。
    死を目前にすると走馬灯のように過去の記憶が甦るというが、嘘だ。
    オレは「なすすべもない」を漢字でどう書くのか考えていた。
    欄干の群衆が唱和しているのは応援歌だ。
    「バース、かっ飛ばせバース、ライトレフトへホームラン!」
    そしてオレの肋骨と背骨が惨めな音をたてて砕けた。

    (終わり)

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