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シリーズ:【軽くBL】花金にご注意
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【軽くBL】花金にご注意

作者:瀬根てい

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
    • タグ:
    • BL
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    わんこ系大学生×元不良サラリーマン……になるはずだった短編です。
    サラリーマンの拓真は花の金曜日を上司に潰され、帰り道に喧嘩していた若者たちに巻き込まれたあげく、図体ばかりでかい大学生に懐かれて。


    登録ユーザー星:5 だれでも星:7 閲覧数:1401

    【軽くBL】花金にご注意 0文字

     

     花の金曜日を上司との飲みに潰されて、拓真は溜まった息を吐き出した。
     気管を通り鼻を抜ける息にまでアルコールが染み込んでいる気がして、不快な気持ちが沸いてくる。
     スーツには完全に煙草の臭いが染み付いてしまった。元喫煙者とはいえ今は吸っていない。喫煙者でも他人の煙を嫌がる人がいるのに、止めた身では一層嫌悪を感じてしまう。
     嫌煙家ではないから、目の前でさも当然の如く煙草を吸い、煙を吐き出しながら喋る上司に嫌悪したという方が正しいのかもしれない。
     そんな気持ちを表には出さず笑顔で、時には力強く共感する。そうすれば上司の覚えもよく、今後の仕事も円滑に進むのだから単純だ。折角の美味い酒が不味くなったのは、対価に比べれば他愛もない――と思いたい。
     様々な理由で自分を納得させた拓真は、住処に帰るべく足を進めた。
     駅前の飲屋街を一本外れるだけで人通りはなくなり、呼び込みもないから格段に歩き易くなる。治安がいいとは言えないけれど、今は通りを抜けるまでの呼び込みや酔っぱらいの集団を避けるだけの気力がない。というか、面倒だった。
     身長は日本人の平均よりやや上だが、逞しいわけではない。それでも、昔の名残で自分を守る術は身についている。もっと言えば、撃退するだけの力もある。
     そういった理由でこの道を選んだが、やっぱり大通りを通ればよかったと拓真は後悔した。どの理由が欠けても結局はこのルートを選んだだろうから、結局はこうなっていたのだけれど。
     建物の影で言い争う若者たちの声に、溜息を禁じ得ない。またアルコールが鼻に抜けていき不快さが増す。
     大勢対一人なのだろうか。殴る音はしても、言い返す声は聞こえない。
     ――集団リンチだったら面倒だな。
     なるべく離れて、知らん顔で通り過ぎようと足を踏み出したのと、大きな人影が飛び出してきたのは同時だった。
     咄嗟に持っていた鞄を落とし、突っ込んでくる体を両手で支えた。足を踏ん張り衝撃に耐えるが、荒事から離れて久しい身には荷が重い。
    「くっそ!」
     なんとかやり過ごしたけれど、普段使わない筋肉を酷使したせいで腕が小刻みに震えている。
     鞄は思ったよりも遠い所にあり、恐らく傷が付いてしまっただろう。ぶちぶちと糸の切れる音と衝撃を感じたから、スーツもどこか解れたかもしれない。
     ふつふつと怒りが沸いてくる。
     ――いや、落ち着け。大人なんだ、冷静に、大人になれ。
    「おい、お前――」
     両手で体を押し退けて、努めて冷静に声を掛ける。
     振り向いた青年は、背中を曲げていても拓真よりも若干目線が上だった。見下ろされているのが気に食わないが、今解決すべき問題は別にある。
     青年が拓真の顔を凝視していて、言葉を紡げない。
    「なんだよ……言いたいことがあるなら、先に言わせてやる」
    「待ってて、ください」
    「は?」
     言葉の意味がわからず、拓真は眉間に皺を寄せて聞き返した。 
    「おいおい。俺らを馬鹿にしてんのか。それとも、見かけだけの腑抜けかあ?」
    「でくの坊かよ……あ? なんだ、おっさん」
     青年とやりあっていたらしき若者たちがぞろぞろと現れ、拓真は「また厄介事が増えた」と内心ぼやいた。どうやら集団リンチまではいっていないようで、そこは安心する。
     関係はわからないが、青年と若者たちの仲が友好でないのは確かだ。
    「つか、誰がおっさんだよ。俺はまだ三十路前だ」
     ささやかな反論は、綺麗に無視されてしまった。
    「彼女とは関係ない」
    「ふざけんな! レイコが嘘付いてるっつーのか!」
    「俺に覚えがないならそうだろ」
     唾を飛ばしながら若者が吠え、青年はうんざりしたように何度も繰り返したであろう言葉を返している。
     会話の内容から察するに
    「女絡みかよ」
     くだらない、と拓真は首を振った。
     このくらいの年頃なら仕方がないのかもしれないが、通りすがりの一般人の自分を巻き込むのはいただけない。
     しかしくだらない茶番劇は、意外な形で急展開を見せた。
     それまでやられっぱなしだったであろう青年が拳を握り、若者の一人をあっさりと沈めたのだ。一連の動きは流れるようで、拓真は瞬きするのも忘れて魅入ってしまった。
    「こっの、くそ野郎!」
     倒れた若者たちが怒りを露にし、どこに隠れていたのかぞろぞろと仲間が現れる。
     そこからは戦場だった。青年は複数相手にも昼まず拳をふるい、時には足で応戦する。しまいには仲間と認識された拓真まで敵の標的にされ、拓真は迫りくる若者に口元が緩むのを抑えられなかった。
     腰を落とし、軸足を踏み込み体を捻りながら拳を突き出す。
     手に当たる確かな手応えに、拓真は笑みを隠せない。

     ものの数分で勝負は付き、拓真は遠くで聞こえるサイレンで我に返った。
     そこら中で踞る若者の群れ。
     立っているのは、自分と青年のみ。
     ――俺は巻き込まれただけだ。
    「行こう」
    「は? 行くってどこに――」
     青年はいつの間にか鞄を回収し、拓真の手を取って裏道へ駆け出した。
    「なん、なんだ、よ! お前は!」
     途切れ途切れになる問い掛けは、青年に届くことなく消えていく。
     ぜいぜいと喉を鳴らし、拓真は青年に引かれ嫌でも足を進めなければならない。きつく握られた手は、振りほどくこともできなかった。
     ようやく立ち止まったのは、線路沿いにある小さなカフェで、夜も遅いこの時間でもまだ営業をしていた。
     促されるまま店に入り椅子に座ると、青年も腰を下ろして背を丸めた。が、相変わらず目線は上だ。
     出された水を一気に飲み干し、人心地につくと拓真は腕を組んでふんぞり返った。
    「どういうつもりだ。俺はさっさと帰りたいんだよ」
    「あの、拓真さん、ですよね?」
    「……てめえ、誰だ」
     すっと目を細め、青年を一瞥した。
     黒髪を野暮ったく伸ばしている青年は、明るい所で見ればそれなりに見目がいいとわかった。ただ、背中を丸めているから根暗にも見える。
     記憶の隅々まで探しても、青年と会った覚えはない。
    「あの、俺、子供の頃、拓真さんに助けてもらって」
     自分の記憶になくても、青年はしっかりと覚えていたようだ。子供の頃というなら、成長していてもおかしくはない。よって、自分は悪くない。
     都合良く結論付けたものの、やはり青年の言い「助けた」記憶は見当たらない。
     若い頃はそれこそ色々やっていたから、小さなことは忘れていく。「助けた」のも拓真にとっては日常の一部だった可能性がある。
     邪魔だからどかしたら、たまたま青年の行く手を阻んでいたものだったとか。道を聞かれて答えただけだとか。
    「十年くらい前なんですけど」
    「うわ……」
     十年前といえば、忘れたい過去ナンバーワンの時代だ。
     物事の判断が自分基準だった高校時代。嫌な予感しかしない。
    「カツアゲされてるとこを、助けてもらったんです。俺、その頃小学生で、まだ体ちっちゃくて」
     後半はもう右から左に抜けていて、青年が何を言ったのかはあまり覚えていない。
     友人たちとやんちゃしていた高校時代。いっちょまえに舎弟なんかいて、そいつらが悪事を働いたら拳で制裁していた。
     今になって思えば、なんという理不尽な子供だったのだろうと思う。過去に戻れるなら、正義を翳して偉そうに説教たれていた自分を連れ去って「やめなさい」と言いたい。
    「俺、ずっと拓真さんに憧れて、たんです」
    「やめなさい」
     間髪入れずに言うが、目を輝かせた青年の前で都合の悪いことはなかったことにされてしまうらしい。
    「あの……俺を、舎弟にしてください!」
     勢いよく頭を下げ、テーブルに額をぶつける様は異様だった。
     店内にいた他のお客が何事かとざわめき始める。
    「サラリーマンにそんなもの必要ありません」
    “サラリーマン”を周りに聞こえるよう強調して、拓真はぴしゃりと言い放った。
    「じゃあ、パシリでも、子分でも、おもちゃでも――」
    「待て待て待て待て! おかしいだろ、特に最後の!」
     きょとん、と首を傾げられても男が――しかも自分よりでかい――やっても憎らしいだけだ。
    「待て?……犬?」
    「なんでそうなるんだよ」
     拓真は机につっぷして項垂れた。
     酔いも高揚した気持ちも当に冷めていた。残っているのは倦怠感と、妙な疲れだけだ。

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    作者紹介

    • 瀬根てい
    • 作品投稿数:14  累計獲得星数:171
    • web、同人、電子書籍でBL小説を書いています。
      精神面でも喧嘩でも強い受けが好き。少年からおやじまでこよなく愛する節操なしです。
      少しでも楽しんでいただけたら光栄です。
    • 関連URL
      サイト:http://moxic.net/

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