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シリーズ:ヘヴィノベル
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ヘヴィノベル

作者:不知詠人

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    近未来の日本。
    学校教育ではライトノベルをはじめ、
    ポップカルチャー作品の鑑賞が義務付けられ
    文学作品は青少年に有害な図書として18禁の扱いを受けていた。

    中3の主人公、松陰翔太とクラスメートの前島美鈴は
    ふとした事から教育現場を支配する「日教連」の秘密を
    仲の良かった女教師から託され、それを「全革連」という
    学生の秘密組織に届けるよう頼まれる。

    日教連に追われながら全革連の本部へ旅立った
    二人の冒険の旅の結末は?


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    ヘヴィノベル 40692文字

     

     前に社会の先生にそう言ったら「社会人になって自分で金を稼ぐようになった時、ぼったくりの被害に遭わないために必要な知識なんだ」と言われて、こっぴどく怒られた。でも、園田先生だけは大笑いして「そこが面白いのよ、この話は」と俺に言ってくれた。そんな事もあって、俺は園田先生が変な意味じゃなく気に入っていて、今日も保健室へやって来たのでありんす。
     保健室のドアをノックして「先生、俺っすけど」と声をかけたらすぐに園田先生が開けてくれた。中に入ると、先生の机の上には相変わらず18禁本が拡げられていた。そりゃ先生はもう大人なんだから、こういう本読むのは別にかまわないだろうけど、保健室の先生とはいえ学校に堂々と持って来るのはどうか、と他の先生たちは問題にしているようだ。
     今日先生の机の上にあったのは「みだれ髪」とか言う短歌集。なんでもエッチな内容の歌が多くて、学校教師の労働組合の全国組織である日本教職員労働連合、略して日教連が札付きの18禁に指定させた物だ。
     ついでに作者の与謝野晶子ってのは、日露戦争とかいう大昔に日本が戦った正義の戦争にケチをつけただけでなく、明治天皇を侮辱した内容の「君死にたまふことなかれ」という詩を作った「自虐史観」とか言う間違った考え方の元祖なんだそうだ。
     日教連は日本一新の会のリーダーだった、大阪市長時代の橋ノ下という政治家が条例を作るはるか以前から、日の丸、君が代を国旗、国歌として尊重するように運動してきた団体だと学校の先生たちからは聞いている。
     養護教諭とはいえ、学校の先生がこんな歌集を堂々と読むのはそりゃ問題になるだろうな。けど園田先生は全然気にする様子もなくて、ま、先生のそういう所が俺は好きなんだけどな。
     先生が渡してくれた「送り狼と香辛料」の第1作は妙に古びていた。相当年季が入った古本だが、ただで貸してもらえるのだから文句は言えない。何気なくパラパラとページをめくった俺は最初のイラストを見て、椅子から転げ落ちそうになった。何だ、この本は?
     そこには、物語の主人公の一人である狼が変身した美少女の姿が描いてあったのだが、服を何も来ていないスッポンポンでもろに描かれていたからだ。いや正確には人間じゃないとは言え、これは何だ?どうしてライトノベルにこんなエッチ丸出しのイラストが付いているんだ?
     俺の動揺を見透かしたように園田先生が長いストレートの髪を揺らしながらクスクスと笑った。
    「それはイラストが全面改訂される前の版よ。あたしも好きだったからね、学生時代には」
    「ちょっと待って下さいよ。先生だって学校教師なんだから、日教連に入っているんでしょ?1990年代から未成年の性の乱れを取り締まってきたのが日教連なんでしょ?これはいくらなんでもまずいんじゃないですか?」
    「性の乱れを取り締まってきた、ねえ……」
     園田先生はなぜか、ふっとため息をついた。が、すぐにまたいつものいたずらっぽい笑顔に戻って俺に言った。
    「なんにせよ、君はそれを見ちゃったのよねえ?さあ、口止め料に何をもらおうかしら?」
    「て、先生、俺をはめたんですか?」
    「あはは、冗談よ。ただ、ついでにもう一つ秘密にして欲しい事があるんだけどな」
    「かなわねえな、先生には。まあ、いいですけど。何ですか、秘密って?」
     園田先生はそれには直接答えず、首を後ろに回してベッドの周りを囲んだカーテンの方に向かって言った。
    「大丈夫そうよ、出ていらっしゃい」
     ゆっくりと白いカーテンが両側に開き、そこから出てきたのは前島美鈴だった。俺は言われるまでもなく、先生の意図を理解した。
    「こんな手の込んだ事しなくたって、前島の事を言い触らしたりする気はないですよ。分かりましたよ、お互いに秘密って事で、それでいいんでしょ?」
     園田先生は俺の両手を握って一方的にブンブン上下に振った。
    「さすが松陰君。君なら分かってくれると思ってたわ」
     前島はほっとしたのか、よほど不安だったんだろう、近くの椅子にへたり込むようにして座って放心したように宙を見つめていた。園田先生は雰囲気を変えようとしてか、インスタントコーヒーをカップに3杯作り、俺と前島にも手渡した。俺は別にのどは乾いていなかったし、この暑い中ホットコーヒー飲みたくはなかったが、断るとまた気まずくなるのを恐れて無理やり口に流し込んだ。
     前島は優等生で俺とは共通点がないから、同じクラスなのにろくに話した事もなかった。それに問題教師に見られている園田先生と前島が仲が良かったのも意外だった。この二人に共通している事って?あ、そうか、二人とも日教連が目のかたきにしている種類の本を読んでいるって事か。
     だけど先生はともかく、前島は未成年だから、文学作品読むのはまずいだろう?そう思っていると前島がとんでもない事を言い出した。
    「ねえ、松陰君、今の学校教育っておかしいと思った事はない?」
    「は?おかしいって何が?」
    「あたしはライトノベル自体は決して嫌いじゃないわ。中にはとても感動的な物語だってあるのは分かる。でも、どうして太宰治や三島由紀夫の作品を読んじゃいけないの?あれだってすごく感動的な物語よ。どうして、これは読んでいい、これは読んじゃだめ、それを自分で決めちゃいけないの?」
    「い、いや、俺は頭悪いから、そんな事を訊かれても……」
     俺の狼狽を察した園田先生が横から話しかけた。
    「それは社会のルールでそう決まっているから。多分ほとんどの人はそう答えるでしょうね」
    「あ、さすが先生。そうだよ、前島。社会のルールだから」
     だが園田先生は予想外の言葉で俺を遮った。
    「じゃあ、松陰君。そのルールって何か知ってる?」
    「え?そりゃ法律とかでしょ?」
    「いいえ」
     園田先生は珍しく真剣な顔つきで長い髪を震わせるように頭を横に振った。
    「文学作品を18禁にしろって決めた法律なんかどこにも無いわよ」
    「え?いや、でも、現に本屋には18禁コーナーがあるでしょ!」
    「18禁コーナーというのは元々は大人限定のエッチな本のための物よ。文学作品を18禁にしているのは、あくまで出版社の自主規制という形でしかないの。ライトノベルやコミックやアニメだって、学校教育の教材として使わなければいけないという法律は無いわよ。いつの間にかなんとなくそう決まっただけ」
    「そ、そうなんですか?」
     俺には意外を通り越して信じられなかった。だったら社会のルールって、一体何なんだ?学校の先生が「これが正しい」って教えている事に、実は根拠がなかったっていう話になっちまうじゃないか?
    「ねえ、松陰君。ファシズムって言葉知ってる?」
     不意に園田先生が聞いた事もない単語を口にしたので、俺は余計混乱させられた。
    「ええと、日本一新の会の橋ノ下代表の事でしたっけ?」
    「それは『ハシズム』。確かに強引なところのある政治家だけど、あれとファシズムを一緒にしちゃダメよ」
    「だったら、分からないですよ」
    「日本語に訳せば『全体主義』。つまり一人の人間が、あるいは一つの組織が自分たちのいう事は一から十まで全て正しい、だから全員言うとおりにしろ。そんな感じで政治をやる事ね」
     これには前島の方が早く反応した。
    「昔のドイツのヒットラーみたいな物ですか。確か、ナチスとかいう政党」
    「さすが前島。優等生はいう事が違うな。ええと、俺に思いつく例と言えば、宇宙戦艦ヤマトのデスラー総統ぐらいか?」
    「あはは、そうね。例としては間違ってはいないわ」
     園田先生は一瞬コーヒーを吹きそうになったが、気を取り直して話を続ける。
    「日本の歴史でもファシズムの時代はあったわ。特に昭和初期の戦前戦中。軍部が政治を完全にコントロールして、ヒットラーのナチスドイツと手を組んで第二次世界大戦に突き進んだ」
    「あの、先生、あたし分からない点があるんですけど」
     前島が段々饒舌になってきた。こいつ、こんな難しい話によくついて行けるな。やっぱり俺とは頭の出来が違う。
    「戦争末期に日本のヒットラーって言われた人がいましたよね?でも日本にヒットラーみたいな人物がいたとしたら、当時の天皇でないとおかしくないですか?」
    「ああ、東条英機ね。開戦当時の総理大臣だった。でも戦前の憲法は天皇が国家の元首であり主権者だと定めていたのだから、日本のヒットラーは昭和天皇だったはずよね。でも、日本には実はヒットラーのような絶対的な独裁者はいなかった。そこが問題だったと見る説もあるのよ」

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