upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:401号室
閲覧数の合計:1890

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

401号室

作者:タカば

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    新居を見つけるときに実際にあったことをモチーフにしました。
    事故物件ではないようなのですが……さすがにそんなことのあった部屋には住んでないです。


    登録ユーザー星:13 だれでも星:0 閲覧数:1890

    401号室 5992文字

     

    「おにいちゃん、こっちこっち」
     美月に促されて、惣一は住宅街を奥へと進んだ。幹線道路から一区画奥に入ったそのエリアには綺麗なマンションが何軒も建っている。美月は、その中でもひときわ大きな鉄筋コンクリートの前で立ち止まった。わざとらしいしぐさでくるりとこちらを振り返ると、マンションを指す。
    「じゃーん、ここが春からの私のお城候補!」
    「すごいマンションだな。何階建てだ?」
    「10階建てだって。最上階とか、眺めがすごくいいらしいよ」
     あと一か月ほどで大学生になるはずの妹は、子供のようにはしゃいでいる。初めての一人暮らしが楽しみでしょうがないらしい。反対に惣一はどうしても心配が先にたってしまい、表情が曇る。
    「セキュリティとか、大丈夫か?」
    「完全オートロックだってさ。まあ、そのへんを確認してもらうためにおにいちゃんを連れてきたんだけどさ」
     美月が一人暮らしすることを、過保護な父は惣一以上に心配していた。今日惣一が来たのも、父親の代わりにマンションの設備を確認するのが目的だ。
    「どうせ、お父さんからいろいろ言われてるんでしょ? でも、この物件は完璧なんだから! しっかり安全だって確認してよね」
    「はいはい」
     心配性二人の考えることなど、妹にはお見通しらしい。惣一はずんずんと進んでいく美月の後におとなしく従った。
    「管理人さーん」
     オートロックドアの手前のロビーで、美月は受付に声をかけた。初老の女性が窓から顔を出す。
    「はい、どなた?」
    「4月から入居の仮契約をしている柏木です。兄に部屋を見せたいのですが、よろしいですか」
     惣一が会釈する。管理人は検分するように惣一の顔をじろじろと見た。
    「うちは女性専用のマンションでしてね。部屋には親兄弟しか入れてはいけないルールなんです。失礼ですが、身分証を確認させてください」
    「……どうぞ」
     惣一が免許証を出して渡すと、管理人は念入りに内容を確認する。かなり規則が厳しいようだ。
    「確かに、お兄様ですね」
     管理人は免許証を返すと立ち上がった。すぐに奥から鍵を持ってくる。
    「この鍵を使って中に入ってください。帰るときはまた管理人室に声をかけて鍵を返却してください」
    「はい、わかりました」
     美月は受け取った鍵でオートロックのドアを開ける。二人はエレベーターに乗り込んだ。
    「男の客にはいちいち身分証まで確認するのか。厳重だなあ。管理人を雇う人件費も馬鹿にならないだろうに」
    「あの管理人さん、大家さんでもあるんだって。だから管理人の人件費はほとんどかかってないみたい」
    「え、大家さん?」
    「十年くらい前に娘さんを事故で亡くしたあと、娘さんと同じようにがんばって勉強する女の子のためにこのマンションを建てたんだって。入居者が学生の場合は家賃がすごく安くなるんだって」
     いい物件でしょ? と笑いかけられて惣一は苦笑するしかない。確かにマンションの警備は完璧だ。
    「あ、ついたよ」
     チーン、と音がしてエレベーターは4階に止まった。廊下に出ると、シンプルながらも落ち着いたデザインのドアが奥へと並んでいる。
    「私が借りる部屋は『401』だよ」
    「一番奥の角部屋か? 贅沢だな」
    「へへー、すごいでしょ!」
     にっこり笑うと、美月はドアの鍵をあけた。
    「はーい一名様ごあんなーい」
     まだ自分の部屋ではないくせに、すっかり主気取りの妹は鍵を開けると惣一を部屋の中に促す。
     家具も何もない、がらんとしたワンルームが惣一たちを迎えいれた。
     リフォームしてまだあまり時間がたっていないのだろう、真新しい壁紙のにおいが惣一の鼻を刺激した。
    「……明るい部屋だな」
     ぐるりと見回してみた第一印象はそんなところだった。部屋の南と東にしつらえられた窓からたっぷりと注ぐ光。部屋全体のデザインも悪くない。床はすべてフローリング、壁は上品なクリームホワイト、キッチンカウンターなどの備え付け家具も明るい木目調で揃えられている。ベランダも広くとってあるから洗濯物を干すのにも便利だろう。
    「いい部屋でしょ? 駅から徒歩五分でオートロックつきで、しかも女性用マンションってすごくない?」
    「確かにすごいな」
    「もー、お父さんが出した条件を満たす部屋を探すの大変だったんだから!」
     ぷう、と美月は頬を膨らませる。
     美月が一人暮らしするにあたって父親が出した条件は、「駅徒歩五分以内」「オートロック」「女性用マンション」の3つだった。よくある条件のように見えるが、全部そろえるとなると難しい。惣一は父親が美月に一人暮らしをあきらめさせるために出した条件だろうと推測していた。
    「でも、家賃は結構高いんじゃないのか?」
    「へへー、それがなんと4万円!」
    「なに?! よんまん?!」
    「すごいでしょー!」
     美月は惣一に向かってブイサインしながら勝ち誇ったように笑う。
    「おいおい、事故物件とかじゃないんだろうな」
     周辺の家賃相場を思い出しながら惣一は妹を見る。こんなに設備のいいマンション、倍額でも安いくらいだ。そしておいしい話には裏があるものと相場が決まっている。
    「さっきも言ったでしょ? この部屋は女子学生のために大家さんが建てたの。安いのはそのおかげ! 不動産屋さんにもきいたし、近くに住んでる先輩にもきいたけど、事件の記録はないって」
    「それならいいんだけどさ」
     言いながらも、惣一はあとでマンションの履歴を調べようと心に決める。妹の言葉を疑うわけではないが、彼女の『調べた』がどこまで正確かはわからない。
    「ねえねえ、こっち来てみてよ! この部屋、洗面台もキレイなんだよ」
     惣一が納得したと思ったらしい、美月は脱衣所に入るとぱちんと照明のスイッチをいれた。電球色の照明がシンプルな脱衣所を照らす。
    「トイレと風呂、別なんだな。贅沢な部屋だなー……って、おい、電気つけていいのか?」
     この部屋はまだ正式に借りてはいない。だから本来ブレーカーも落とされているはずだ。
    「不動産屋さんが、部屋を見る間はブレーカー入れていいって言ってた。帰る前に落としていけばいいみたいだよ」
    「まあ……いいならいいんだけど」
    「おにいちゃんはいろいろ気にしすぎ! 私だってちゃんと部屋くらい見つけて来れますー」
     いろいろ疑ったせいか、へそを曲げてしまったらしい。妹は口をとがらせるとそっぽを向いてしまった。
    「悪かった。お前はすごいって」
    「本当にそう思う?」
    「思うって」
    「じゃあキスして」
     見上げられて、惣一の顔が赤くなった。実をいうと、惣一は美月と血がつながってない。彼女は継父の連れ子だ。
     だから、二人が付き合うのに血縁的には問題ない。しかし世間的な問題があり、あまり表だったつきあいはしていなかった。
     キスするのだって、これでやっと数度目だ。
    「……美月」
     軽く唇を落とすと美月は微笑む。
    「へへ……家を出たらもうちょっと二人きりの時間が作れるね」
    「一人暮らしの理由はやっぱりそれか」
     あきれる惣一を、美月が見上げる。
    「嫌?」
    「いやなわけ……」
     ドンッ!
     惣一が美月を抱きしめようとした瞬間、壁を叩くような大きな音が部屋全体に響いた。
    「なんだ?」
     惣一はとっさに美月をかばうようにして辺りを見回す。
    「隣の部屋から……かな。騒いでたからうるさい、とか……」
    「それ、おかしくないか? ここ、鉄筋コンクリートだよな?」
     確認ついでにさっき壁を叩いてみたが、ここは安いプレハブマンションと違って壁が厚く、そう簡単に音は響かない。たとえ隣で思い切り壁を殴ったとしても、こんなに大きな音にはならないだろう。
    「じゃあ何だっていうの」
    「いや、部屋の中から聞こえなかったか、今の」
     たとえば部屋の中に立った誰かが壁を叩いたような。
    「そ……そんなわけないじゃん! この部屋には私たちしかいないんだよ?」
     ここは狭いワンルームマンションだ。家具もないから隠れる場所などありはしない。
     そのはずだ。
     否定しながらも、美月も惣一と同じように感じていたらしい。彼女の顔も青ざめていた。
    「……だけど」
    「私ここに住むんだよ? もう変なこと言わないで!」
    「そう、だな。だいたい部屋の中は見たし、そろそろ帰ろうか」

    ←前のページ 現在 1/2 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    • 「肝試し」があまりに怖かったので、昼間に読みました。でもやっぱしコワかったー

      初版も見せて頂きましたが、確かに改訂版のほうがいいですね。
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 臨場感があり、どきどきしました。怖かったです。
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 怖い気持ちになっていただけてよかったです。
      実際に体験した恐怖もまざっているのでより臨場感が出せたと思います。
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • かめかめさん、リュウベさん、ご指摘ありがとうございます。
      誤字も含めて改定しました。

      ・・・・更なる誤植があるかもですが。
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 縦書きで7ページ目です
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 7ページ最後の照明が証明になってます
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • コメントありがとうございます。
      実話怪談ぽく投げっぱなしにしてみたのですが、少し盛り上がりに欠けるみたいですね。

      オチを少し考えて改良したいと思います。手始めに部屋番号を「801」に変えましょうか(おい)
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • なぜか401号室をャォィ部屋と読み間違えたのは、きっと脳が疲れていたせいです(汗 
      作者様に対して妙な偏見はもってませんよ? 

      あと、体験談をもとにしたっぽいお話ですけど、オチらしいオチもなく、作品的に中途半端な印象が…。
      フィクションにしてはやや現実感に欠け、ノンフィクションにしては見せ場がないです。

      ……なんだか、勝手に偉そうなこと言ってすみません(汗
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    作者紹介

    • タカば
    • 作品投稿数:5  累計獲得星数:105
    • 普段はゲーム作ったり、遊んだりしてます。
      サイトでもいくつかサウンドノベルを公開しておりますのでついでにどうぞ
    • 関連URL
      :http://geboku.egoism.jp

    この作者の人気作品

    小説 ホラーの人気作品

    続きを見る