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シリーズ:腹切ショー
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腹切ショー

作者:TOMS

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    悪徳医師と悪徳興行会社に操られ、奇妙な興行をさせられる男。
    裏稼業で莫大な富を手にする男。男の運命は壮絶な最期を迎える。


    登録ユーザー星:4 だれでも星:2 閲覧数:2575

    腹切ショー 3405文字

     

     「おれの時代はもう終わってしまったんだ
    な……。」
    かつて医者系のドラマで絶大な人気を誇っ
    た俳優の柴屋吾郎は、斜陽な自分を嘆いて
    いた。
     バブル崩壊のあと、莫大な借金をして自宅
    も抵当にとられ、無一文になり、家族にも見
    捨てられ、徐々に芸が荒れ、レギュラーも無
    くなった。
     大きな鬱に襲われ、この世には未練はない
    と、自殺を決意した。吾郎は、あらゆる死ぬ
    方法を模索していた。手首を切るべきか、線
    路に飛び込むか、崖から海に飛び込むか、マ
    ンションの屋上から飛び降りるか……。
     自殺の数は3万人と言われている。これは
    残念ながら、死に至ってしまった人の数であ
    る。現実の数字では、この3倍は自傷行為を
    実行をしているのだ。しかも、死にきれてい
    ないのがほとんどなのだ。自殺に失敗したら
    どうなるか、そのほとんどの人には障害が残
    ってしまうのだ。
     ある人は、眼球が飛び出てしまったり、あ
    る人は腰の骨を折って、車いすの生活を余儀
    なくされたり、頭を強く打って、植物状態に
    なったりしているのだ。医者の役作りの時に
    吾郎は、そのことを教えてもらっていたので
    いっそう怖かった。
     長い葛藤のあと最終的に選んだのが、腹切
    りだった。これは、時代が違えば現実に広く
    行われていた自殺の方法だからだ。三島由紀
    夫がこの方法で成功していたのが吾郎の動機
    にもなった。そうと決まれば、その衝動を抑
    えることは出来なかった。

     五郎は、白いシャツと白い下着の格好で、
    風呂場にいた。手には30センチはある刺身
    包丁を手にしていた。
     本来、切腹は敵に捕獲され、斬首されるこ
    とを避けるための自決に限られていたという。
    俳優として、売れなくなった自分は、芸能界
    から追放された落ち武者なのだ。敵は視聴者
    だ。自分に見向きもしなくなったファンなの
    だ。売れなくなったのは自分のせいではない
    と考えようとした。
     何度か包丁を突き立てたのだが、恐怖が邪
    魔をして、ためらい傷だけがどんどん増えて
    いった。不思議に痛みは感じなかった。何十
    回、刺しただろう……。ついに吾郎は腹をか
    っさばいた。介錯人がいないのでその痛みは
    続き、今まで40年間生きてきた中で、一番
    痛いと感じた。阿修羅の形相だった。風呂場
    に自分の血が広がるのを見て恐怖が大きくな
    った。
     最後に愛人の長谷川恭子の事が頭に浮かび
    未練の残っていた吾郎は、すぐにスマホで彼
    女に連絡をした。
    「恭子、俺、腹をかっさばいてしまった。最
    後に、君の声が聞きたくなって……。」
     驚いた恭子はすぐに、駆けつけてきた。吾
    郎の情けない姿を見て、怒りと悲しみが同時
    にやって来た。
    「吾郎、あなた、何を考えているの?」
    でも、恭子は、すぐに冷静になり、吾郎にサ
    ラシを巻いて応急処置をした後、自分の車に
    載せ、真夜中の道を急いだ。

     町の小さな山口外科病院の院長はすこぶる
    金回りのいい医者だった。表の顔では、通常
    の業務をしていたのだが、実のところ裏社会
    の病人を一手に引き受ける悪徳病院だった。
     証拠隠滅の為に、死体の歯形を偽装したり
    生活保護者に多額の薬を処方しては、国から
    の補助金を間接的にだましとっていた。事件
    性のある表に出せない病人を、多額の治療費
    で請け負っていた。認可されていない違法な
    薬品を河川敷のブルーシートで暮らすホーム
    レスをさらってきたては試用し、データをと
    り、製薬会社から莫大な礼金をせ占めていた
    りしていたのだ。恭子は、吾郎のスキャンダ
    ルの発覚を恐れてこの病院の戸を叩いた。
     
     山口院長は、吾郎が既に金が無いのは承知
    で手術をしてやると言ってくれた。吾郎は、
    不審に思いながらも、痛みに耐えられず、院
    長のなすがままに手術を受けた。悪徳医者で
    も、表の顔は実力のある医者である。 手術
    はなんなく成功し、吾郎は命を取り留めた。

     退院の日がやってきた。吾郎は院長室に呼
    ばれた。治療費の話だ。一生働いて返すつも
    りで話しをすると、院長は、銭はいいからこ
    の契約書にサインをしろと持ちかけてきた。
    吉元興業会社との契約書だった。その興業で
    得た金額の50%で今回の手術と入院費は返
    せるというのだ。
     院長は吾郎のレントゲン写真をみせながら
    語り出した。
    「近頃の興業は、出し物もやり尽くされてマ
    ンネリ化しているんだ。大きな刺激が求めら
    れている。この興業を闇でやるから契約する
    んだ。いや、契約しろ。」
    吉元社長も続けた。
    「CGの全盛時代は当たり前になり、飽きら
    れかけているんだ。よりリアルな非日常が求
    められている。お前には裏の興業を担っても
    らう。」
     山口院長と吉元興業会社が苦肉の策として
    考え出したのが『切腹ショー』というものだ
    った。切腹を生で解説して興業とするという
    のである。吾郎のはまり役になると勧めてき
    た。
     レントゲン写真を見せられ説明をされた。
    「腸と胃の間に10センチ程の隙間を手術で
    つくってある。この隙間を短剣で斬り裂けば
    内蔵を傷つける事なく腹をかっさばく事がで
    きるんだ。」
    山口院長は続けた。
    「腸をその後に出せば死んだように見えるん
    だ」ショーの前には麻酔をかけるので痛みも
    さほどないという。腹を斬った後、30分で
    病院に戻り、手術をすれば命を繋げられると
    いうものだった。吾郎には選択の余地など無
    い。仕方なく引き受けた。

     この『切腹ショー』の興業は大あたりだっ
    た。裏社会の娯楽として、最高の興行収入を
    叩きだしたのだ。宣伝は一切せずに、口こみ
    での開催にもかかわらず、多くの富裕層に受
    け入れられた。表向きには、ストリップ劇場
    にして、吾郎の腹の傷が癒える、1ヶ月に1
    度は『切腹ショー』が行われるのだ。
     全国の裏興業者たちが、吾郎の演技を欲し
    た。思いのほか切腹が出来ることの需要は多
    かったのである。わずか1年と半年で、吾郎
    は治療費と入院費を返済した。
     山口院長はこれで潮時だと考えて吾郎に『
    切腹ショー』の興業の中止を告げた。

    「山口院長、俺はこの興業をやめるつもりは
    ないぜ。」吾郎はこの裏稼業が生きる光と受
    け止めていた。国内どころか、海外への進出
    を吉元興業会社との間に約束していたのだ。
    「治すのはわたしだ。取り分を7対3にさせ
    てもらうよ」山口院長はほくそ笑んだ。

     『切腹ショー』はラスベガスでも興業でき
    る程の人気がでたのだ!構成もプロの構成作
    家を雇った。もちろん裏社会のである。時代
    劇の切腹シーンを再現する舞台は、『ハラキ
    リ』と呼ばれ、ラスベガスでも人気の演目に
    なっていた。吾郎は、1年に一度腹を斬るだ
    けで、莫大な金が手に入る様になったのだ。

     もはや、これだけ大きな興業を裏で出来る
    はずもなかった。徐々に噂が表に出て、違法
    な興業をFBIが嗅ぎ付けたのだ。捜査の手
    が伸びて、山口院長と吉元興業会社は摘発さ
    れるのを恐れた。吾郎は、最後の興業だと告
    げられる。不満だが、FBIの捜査で摘発さ
    れては困ると考え、了解した。

     最後のラスベガスの夜。いつも通り、吾郎
    は腹をかっさばいた。と同時にいつもと違う
    感じがした。後ろから、介錯人が真剣を持っ
    て近づいてきたのだ。
    「ああ、やられた。山口と吉元だな。」

     捜査の手を断ち切るために、山口と吉元は
    トカゲのしっぽ切りのために吾郎の首を断ち
    切ったのだ。吾郎の首はゴロンと舞台の上に
    転がった。壮絶な最後に観客は一瞬凍りつい
    た。すぐに観客は、これも何かの仕掛けがあ
    ると考えた。
     
    観客の1人が叫んだ。
    「ハラキリ!ハラキリ!」
     真夜中のラスベガス。ホテルキングダムの
    大ホール。スタンディングオベーションが鳴
    りやまなかった。舞台に転がってる吾郎の生
    首は薄笑みを浮かべていた……。

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    作者紹介

    • TOMS
    • 作品投稿数:3  累計獲得星数:10
    • はじめまして。TOMSです。時間と空間を旅する
      ことが好きな。時の旅人です。この天の川銀河に産まれ
      るのはこの生涯で7度目です。よろしくお願いします。
      (*´ー`*)
    • 関連URL
      :http://ameblo.jp/timemaster2009/

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