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シリーズ:ゴールデンゴールデン
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ゴールデンゴールデン

作者:k5

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    カフェでふと思い立って書いた超短篇小説です。
    変な話なので、時間が有り余っている時にどうぞ。


    登録ユーザー星:1 だれでも星:1 閲覧数:91

    ゴールデンゴールデン 2418文字

     

     僕はあるカフェで小説を読んでいた。
    僕はカフェで何時間も小説を読んだり、あれこれ考え事をする事が好きなのだ。足しげく通ううちにポイントカードもずいぶんたまった。

     今日も貯まったポイントで買ったグランデのドリップコーヒーをすすりながら何時間も「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を読んでいた。
    僕が昼過ぎに席に着いた時には家族連れやカップル、昼休みにきたのであろうスーツ姿の人たちが5、6組いた。
    時間がたっていくにつれぽつぽつと客たちは減っていった。
    そうして、僕が座ったカウンターに西日が射してくる頃、カフェに来て3時間ほどたった時には、気づけば僕とゴールドのヘッドホンをした女の子の二人だけになっていた。
     
     僕はそのゴールドのヘッドホンがやけに気になった。初めて女の子が視界に入った時、思わず数秒の間見入ってしまったほどである。
    頭にがっしりとしがみついたヘッドホンは女の子が着ている柔らかい色合いのチャコールのニットや小動物のようなボブヘアー(僕はその髪型を見たときなぜかリスを連想した。)とは明らかに異彩を放っていた。
    それは、柔らかな朝の森にぽつんと置かれたApple製品ような違和感と調和が妙なバランスでとれた光景だった。
    僕はその妙なバランスが好きらしかった。不審がられるかもしれないと思いながら僕はそのバランスを何度も楽しんだ。

     それを繰り返すうちに僕は不思議な事に気づいた。
    ヘッドホンが光っているのだ。
    はじめは、西日が当たってきらめいているのだろうと思っていたが、違った。
    それはまぎれもなく光っていた。
    その光は深海に生息する発光魚のようにぼんやりしていて生命的であった。息をするようにひっそりと光っているのだ。
    僕はあまりの事に気がおかしくなってしまったのでは思い、もう冷えてしまったドリップコーヒーをごくごく飲んだ。

     だが、状況は変わらなかった。依然としてゴールドのヘッドホンは寝息を立てるようにぼんやり光っている。 

    僕は混乱した。
    混沌とした頭でもしかしたら、僕は歴史的瞬間を目の当たりにしているのかもしれないとふと思った。
    そして、いったん事実を受け入れてしまおうという気分になった。
    疑うより受け入れた方がおもしろいに違いないのだ。
     
     まず、僕は仮説をたてて見る事にした。全く科学的な根拠はないがただ、口を開けて驚愕しているだけでは全くおもしろくない。

     今の世の中がおもしろくないだいたいの理由は全く新しい考えや信じられない事を目の当たりにした時、多くの人が反射的に疑い、受け入れずやり過ごしてしまう事にある思う。
    僕が日本に住んで居るからなのかもしれないが、皆身近な事にしか興味がない。
    今日何食べるとかだれがだれとつきあったとか今月の給料とか年金とかだ。
    僕はそんなことより夕日と朝日のどちらが綺麗かとか僕とあの子が見ているゴールドは同じゴールドなのかとか、なぜ人はキスがしたくなるのかとかゴールデンヘッドホンはなぜ光るとかそんな事を考えていたいのだ。

     いづれにせよ今僕は光るゴールデンヘッドホンの謎を解かなければならない。そのためには仮説をたてて検証していく必要がある。
    まず、第一の仮説にヘッドホンが女の子の本体という可能性である。
    これがいちばん現実的ではない案なのではあるが、検証のしやすさでもいちばんなのである。ヘッドホンを女の子から取り外してしまえばいいのだ。
    そうすれば、もし本体なら女の子の体と思われる部分はちょうど電池の抜けたロボットのようにカフェのカウンターに突っ伏す形になるはずである。
    検証方法は簡単なのだが、問題はどう実行に移すかである。
    「失礼」とおもむろにヘッドホンを外そう物なら、たちまち不審者扱いである。
    「失礼ですがヘッドホンを外していただけませんか」と声をかけるのも手ではあるが、こちらも明らかに不審である。
    やむ終えない強攻策としては素知らぬ顔で近づき、素早く取り去ってしまうかである。
    もし仮にヘッドホンが本体ならば、その瞬間、彼女の言語能力は失われ、不審者扱いされる事もない。
    だが、その可能性は極めて薄いのだ。しかも、その後ヘッドホンをつけ直した時には何らかの報復を受ける可能性もあるのだ。
    物語的にはそちらの方がおもしろいが。

     エッシャーのような思考の階段に囚われていると左の方から声が聞こえてきた。
    「今、カフェにいるんだけど、」
    僕は階段から抜け出せたようだ。女の子は電話をしている。それもヘッドホンを外して。
    「うん。ちょっと待っててすぐ行くね。」
    そう女の子は電話の向こうの誰かに言い、席を立った。
     僕はまだひとつしか仮説を検証していないと心の中で嘆いたが、同時に内心少し安心していた。
    結局僕の探究心とはそんな物だったのだ。
    本物の探究心を携えた人は対象を取り逃がしたりしない。
    どこまでも答えが見つかるまで追求するはずだ。
    たとえ不審者呼ばわりされようとである。

    そう考えるとなんだか悔しくなってきた。
    僕はぎいと派手な音を立て立ち上がり、返却カウンターに居る女の子めがけて歩いていった。
    「そのヘッドホンとても素敵ですね。」そう僕は言った。
    「ありがとう。これお気に入りなの。あなたのめがねも素敵よ。ゴールドのめがねなんていい選択ね。」
    「どうもありがとう。」そう言った時、ヘッドホンがもう光っていない事に気づいた。
    あの深海魚のような発光は消え去り、代わり照明が反射してぎらついた機械的な光を放っていた。

     階段を下りていく女の子とヘッドホンを見送りながら、僕は自分の探究心に乾杯した。
    そうして冷えきってしまった残りのドリップコーヒーを飲み干した。

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