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シリーズ:ある温泉宿
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ある温泉宿

作者:緑山 咲夜

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    正直に言います。実話です。とりあえず無防備では行きたくない処です。心残りが無いとは言えないあたり、歩くお札付きでなら、もう一度行こうかと悩んでいる所でもあります。


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    ある温泉宿 6161文字

     


    あれは、久しぶりの父を連れて温泉でも行こうと思った冬も
    終わりの日でした。
    平日の休みを取り、車に父を載せて近郊の某温泉宿に行きました。
    そこは、ガイドでも出ている宿で、でも周りに何も無い山奥で
    鄙びた感じと人気の少なさが気に入り、
    初めての宿でしたがそこに決めました。


    高速で2時間。
    あっという間に着いてしまい、場所確認も済んだので
    どこかに遊びに行こうかとも思ったのですが、
    時間がどうにも中途半端なのと
    私の運転がかなり怪しいのとで、
    無理をしないでチェックインをして
    宿の近くを散策することにしました。

    宿が3件だけの小さな温泉町で、
    ガイド通りに周りには本当に
    何も無い宿でした 。
    宿から道を下るとすぐに細い川があり、
    河原がそこそこには
    広がっていました。
    バーベキューの跡や、
    テントを張った跡らしきものもあり、
    夏にはここでキャンプなども行われるようでした。
    細い川の中は上流らしく
    ゴツゴツして岩も点在していて
    所々が急流になっている箇所も見られました。


    ふと、人の気配を感じて川の下流に目を向けると、
    男の人がぼんやりと川の足を浸けている姿が見えました。


    冬に何しているのだろう・・・・。
    ちょっと興味が沸き、
    父に河原に下りてみようと誘って、
    足場の悪い草で少し滑る階段を
    ゆっくり下りていきました 。


    ここでもいくつかのバーベキュー跡を見つけ、
    夏は賑やかなのかもね。
    と笑いながら、私は視線を父からその男性に向け・・・・
    おかしな事に気づいたのです。




    男性は冬だというのに、
    半袖でズボンを捲らずに
    川の中に立っているようでした。




    そして、気づいたのです。
    男性の身体を通して、
    男性の向こうにある岩が透けて見えているのを。



    ああ、霊だったのか・・・。



    父も居るので、詳しく見ることは出来ず、
    もう戻ろう、と言う父に合わせて来た道を戻りながら、
    チラチラと川の中の男性を見て何度か振り返りました。


    物悲しいその後ろ姿は、害を為す類ではなく何か未練を
    残して亡くなった人のようで、重くて悲しい気だけが
    その人を包んでいました。

    きっと、ああやって川の流れに己の思いを流して
    居るのだろう・・・・と思ったのです。



    川などの流れのあるものに、穢れや想いを
    流すのは、大昔からの風習にもあるように、
    祭事でもよく使われます。

    昔の人は、現代よりももっと色々なことを
    生活の中に取り入れて生きていますから、
    自然、想いを振り切れないと川や山に行き、
    己の思いを流そうとする傾向があると思いました。
    もっとも、霊にとって、
    湿気のある所はとても居心地の良い
    ところなので、そういう意味合いで
    やってくる者も大勢いますが・・・。



    見た所、川の中の男性は
    もうずいぶん長い時間を
    川に入って過ごしているようで、
    これより後、どの位の時間を
    あの川の中で過ごすのだろう・・・・
    と気の毒になります。
    残念ながら、あの状態では自力での成仏は
    難しいように思います。




    宿に戻り、部屋に入ると少しばかりの
    違和感を感じました。
    それは、この部屋に何か居るというものでは無く、
    何かのテリトリーに入ったような奇妙な感覚でした。

    思ったより、この辺は霊が集まっている所だったのかも・・・。
    と、割と暢気に父とお茶を飲みながら、
    景色を眺めていました。



    この時の暢気に構えていたことを後で
    かなり後悔することになるとは
    その時は気づきませんでした。


    食事の前にひと風呂浴びるか。と言うことなり、
    父と、大浴場に向かいました。
    源泉かけ流しの湯で、
    少し滑りのあるいいお湯との評判でした。




    確かに質のかなり良い温泉でした。
    ただ、ここの風呂場が大変なところだったのです。




    父と別れ、脱衣場で服を脱ぎながら
    私は素で後悔していました。
    ガラス戸を隔てた向こう。
    お風呂場から、
    とんでもなく嫌な気配が漏れていたのです。



    でもせっかく来た温泉なのに、
    入らないのも嫌だったので
    いつものように無視していればいいか。
    と割り切って
    中に入っていきました。



    まだ16時を少し回った時間だからでしょうか、
    私の他には誰も居ません。
    大きく切られた外風呂に続く窓や明り取りと
    蒸気を逃がす為に切られた天井近くの横長窓から
    光が入っているというのに、
    何故か、内風呂は薄暗くて異様な空気に包まれていました。
    ぐるりと見回してその原因がすぐに分かりました。




    風呂場の上の3箇所にべったり悪霊の類のものが
    3体、明らかな悪意をこちらに向けていたのです。


    「出て行け!!!」


    刺さるような念がまっすぐに向けられました。
    出て行け。と言う悪意は、
    まっすぐに入ってきた者を
    意識して睨みつけているのです。




    これは、かなりヤバいな。と思っても、
    どうこうするにはかなりの時間を使って、
    この霊体と向き合わなければならないほど、
    長い年月をここに居る霊のようでした。
    しかも明らかに私を認識しています。



    これは、私だけに限らず誰でも、
    起こりえることなのですが、
    向こうがはっきりとこちらを認識している場合、
    危害を加えてくる事が多々あるからです。



    こちらが気づいているとバレたら、
    憑かれる可能性が高いと読み、
    ひたすら無視をすることに決めました。
    君子危うきに近寄らず、です。



    それにしても、恐ろしい程の霊気です。
    なるべく霊から遠い場所で
    身体を洗い始めたのですが、
    斜め後ろの上と横の上に張り付いている霊は
    古い女性の霊で、
    うっかり髪を洗うのに下を向いたら
    背中のすぐ傍まで降りてきて、睨み付ける始末。

    よくもまぁ、こんなのがずっと居て話題にならない。
    と思った程でした。
    霊は人に取り憑くときは、
    ほとんどが後頭部首の付け根から入ります。
    なので、背中を相手に晒すのは非常に危険です。



    内風呂は早々に退散する事にして、
    外の露天風呂に出るドアを開けると・・・・・。





    ・・・・・・思わずため息が出てしまいました。




    悪い気は無いのですが、
    ここにもきちんと着物を着た女性の霊が
    かけ流しのお風呂に半身で浸かっていたからです。
    でも、内風呂の悪霊からすると
    穏やかな霊のようでしたので、
    私はこちらの方と同席する事に決めました。




    長い髪の先が湯に浸かって、
    ゆらゆらと揺れています。
    風呂の入り口に座っているその女性は、
    何か未練があって、
    それを流したくてここに居るようでした。
    サラサラと流れる音だけが聞こえる露天風呂に
    半身だけ浸かって座っている女性は、
    内風呂の霊達と同じ位、古い霊のようでした。





    もうどの位の月日を、
    ここにこうしているのでしょうか。
    お隣に座らせてもらいながら、
    私は横目でその女性を眺めたり、

    目の前の景色を眺めたりしながら、
    この人の悲しみが家族を
    水の災害で亡くしたものだと、
    女性から流れ出る気配で
    感じました。

    まだ若いその人は、
    耐え切れずに後を追ったのかもしれません。
    ずっと癒えない痛みを流れる温泉で
    流し続けているのでしょう。



    残念ながら自殺した人が成仏するのは、
    難しい部類に入ります。
    もちろん、いつまで経っても
    家族と会うことは叶わないでしょう。
    その時の思いが「死ぬ位」に重いので、
    どうしても囚われてしまうのです。



    そのお風呂の成分が露天風呂のそこかしこに
    沈殿しているようで、
    ぬるぬると滑るですが、
    なぜか、横並びに座っている私のお尻が
    その女性に向かって滑っていくのです。
    何度座り直しても、ものの15秒で滑り出します。
    足に力を入れてもダメでした。


    流石に重なり合ってしまうのは
    気持ちの良いものではないので、
    しかたなく、その女性の霊に一礼して
    場所を変えて座り直してみました。
    ・・・・・滑りました。女性の霊に向かって。
    今度は足から引っ張られるように。

    当の女性はじっ・・・と
    自分の胸のすぐ前の流れていく湯を
    見たまま動く様子も無く、
    興味もそこにしかありません。
    引っ張っている自覚も無いようでした。
    なのに・・・・やはり引きずられます。


    此れほど、多くの強い気配を持った霊達がいる場所は
    数年ぶりでした。
    不覚以外の何者でもありません。

    なかなか、趣がある宿です・・・・。



    幸い、父はそういうものを一切、
    寄せ付けない体質なので、
    行動を共にしている限りは、
    私は取り憑かれる事も無いので、
    さして心配しませんでした。

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    コメント

    • Danny さん コメントありがとうございます。流石に鳥肌ものでした。個人的範囲での行動でしたら教える事はできます・・・・。笑
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    • 怖かったです。その温泉宿の場所知りたいです。
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    作者紹介

    • 緑山 咲夜
    • 作品投稿数:73  累計獲得星数:107
    • 雑食化が酷くなりつつ・・・。
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