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シリーズ:国道666
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国道666

作者:ファイブス

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

     山間の国道で事故を起こした二人組み。自転車に乗った男を撥ねたのだ。なんとか事故をもみ消そうと二人が考えた策とは…


    登録ユーザー星:39 だれでも星:12 閲覧数:3500

    国道666 2820文字

     

     はねた衝撃はほとんど感じなかった。男が宙を飛び、落下する。
     受け身がなっていない。あれじゃ首の骨が折れたぞ。
    「なんでアクセル踏むんだ!」良雄が言う。
    「まちがったんだ」
    「……」
     絶句した良雄の顔を見て徹はハンドルを握ったまま笑い出した。

     徹をドライブに連れだしたのは良雄だ。三ヶ月前に免許をとったばかりで、運転するのが楽しくてしょうがない。今は仕方なく父親のカペラに乗ってるが、いずれ金を貯めてムスタングを買うつもりだ。
     徹は免許を持っていない。教習所には通ったのだが熱意がなかった。一 年の期限で仮免許を取っただけだ。もったいないと自分でも思っているが、 他人には、乗りたい車がなかったんだとうそぶいている。
     運転の技術を忘れないために、たまに、ねずみとりのない安全な道で良雄に運転を代わってもらう。最初は嫌がっていたが何度も繰り返すうちに習慣になっていた。
     見通しの良い山間の道だった。自転車は突然飛び出してきた。もし、運転していたのが良雄でも避けられなかっただろう。パニックに対応するには経験が必要だ。二人にはそれがない。

    「ごめん」
    「俺、見てくる」良雄が車を降りる。
     徹も後に続く。手前に自転車。その向こうに男が倒れている。
     良雄が男の顔を覗き込む。「だいじょうぶですか」
    「死んでるよ」
    「血は出てないぞ」
    「首の骨が折れている」
    「なんで見ただけで分かるんだよ」
    「こんな角度に曲がるわけないだろう」
    「……」
    「目だって開きっぱなしだし」
     クラクションが聞こえた。後ろから軽トラックが走ってくる。
    「自転車、取ってきて」徹が言った。そして死体を抱き起こし、座らせる。
     良雄が自転車を押してきた。死体の前に停めるよう指示を出す。
     軽トラックが徐行してくる。
     パンクした自転車を直してるところだ。徹は自分に言い聞かす。
    「空気入れ取ってくれ」良雄に言い、タイヤに向かう。
     軽トラックが走り去る。
    「そんなもんないぞ」
     徹が見上げると、もう一度良雄が言う。
    「空気入れなんて持ってないぞ」
     徹は思わず笑い出した。

     死体と自転車を積み、再び走り出したカペラ。
     徹は助手席にいる。「どこか、離れた場所に置いていこう。そうすれば警察も捜査できない」
    「きっと、つかまる」
    「現場から離れりゃ大丈夫だよ、ブレーキの痕もヘッドライトの破片も落ちていない。痕跡がなけりゃたどりようがない」
    「埋めるか」
    「そこまですると、発見されたとき面倒だよ。警察だって必死に調べる」
    「そうか」
    「ただの、ありふれた交通事故」
    「お前、すごいな」
    「なんでそんな冷静なんだよ」
    「二回目なんだ」
    「……」
    「嘘だよ」

     後部座席を見て徹が言う。「あいつあんな顔だったか」
    「誰?」
    「彼だよ」
    「どうかしたのか」
    「笑ってるぞ」
    「気持ち悪いこと言うなよ」
    「死後硬直かな、笑ってるように見えるぞ、くちもとが」
    「きっと俺たちは破滅するんだ。だから笑ってるんだよ」
    「なるほど」
    「否定してくれよ」
    「お前にしては、いいこと言うな」
    「頼むよ、俺、怖くて死にそうなんだ。事故ってもしらないぞ」
     徹は暫く考えてから話し出した。「彼は、この世の者ではないんだ。国道に住む妖精なんだよ。この国道が出来たときから彼はいて、自転車に乗って走り続けてるんだ」
    「そいつを俺たちは轢いたのか」
    「そう。でも、彼は死なないんだ、妖精だから。時間がたつと生き還って再び走り始める」
    「ありがとう、気が楽になった」
    「どういたしまして」
    「いいことを思いついたぞ」
     良雄が聞く。「なに」
    「もう一度自転車で走らせるんだ」
    「……」
     理解できない良雄に向かい言葉を続ける徹。「自転車に乗っけるんだよ、死体を。そして他の車にぶつけるんだ」
    「どうやって」
    「走ってきた車に向かって、俺たちが自転車を押すんだよ。ガシャーンとぶつかるのを見て、家に帰る。あとはしらない」
    「そんなことうまくいくのか」
    「やってみよう」

     峠に停まるカペラ。
     良雄がトランクから自転車を取り出す。後部座席から死体を担ぎ徹が出てくる。
     坂の頂に二人は立つ。国道にぶつかる道だ。
     徹が言う。「半分くらいまで下ろう。タイミングが取りづらい」
     自転車を押しながら良雄が言った。「お前といると心強いよ。うまくいくような気がしてきた」
    「俺のせいだからね。なんとかきりぬけなきゃ」
    「俺が女だったらお前に惚れるな」
    「そう言われても」
    「わるい」

     走ってくるトラックを指さして徹が言う。「あのトラックが山の陰に消えてから、坂の下に出てくるまでの時間を計ってくれ」
     腕時計を見つめる良雄。
     徹は死体を地面に置き、自転車に跨る。「俺はこっちの時間を計る」腕時計を見ながら、足を浮かす。自転車が転がり始める。自分が死体になったつもりでスピードに身を任せる。次第に加速していく。
     俺は死体だ、目を閉じなきゃ。暗闇で風が吹いている。気持ちいいな。いつか、免許を取ったら自転車を積んでドライブに行こう。海につづく坂道で、またこうやって自転車に乗ろう。水を感じるまで目を閉じていよう。
     良雄が叫んだ。
     クラクションが闇を砕く。
     トラックが自転車の後輪をひっかけ、徹の体が地面に投げ出される。
     良雄が走る。
     徹の体が転がり出す。
     トラックが走り去っていく。
     良雄が走りながら、再び叫ぶ。
     ガードレールにぶつかって徹の回転が止まる。良雄が徹を抱きしめる。
    「徹!」
     徹は空を見ている。
    「徹!」
    「タイム計ってたか」徹が聞いた。

     大型トレーラーが走ってきている。
     自転車に乗せた死体に良雄が声をかける。「途中で転ぶなよ」
    「歯、磨けよ」
    「宿題しろよ」
     自転車を押し始める。
    「さよなら」
    「さよなら」
     二人の手が離れた。
     自転車が走っていく。
    「楽しそうな顔してたな」徹が言った。
    「あいつか」
    「ああ」
     エンジン音が近づいてくる。
     坂の途中で見守る二人。
     自転車のバランスが崩れた。
     良雄が唸る。
     トレーラーが姿を現した。飛び出してくる自転車を発見し警笛が鳴る。
     ブレーキが悲鳴をあげた。
     死体が顔を上げる。
     自転車は見事なハンドルさばきでトレーラーをかわすと、呆然と見守る二人の前から走り去った。

     良雄は徹を見た。
     彼ならこんなとき、きっと笑いだすだろうと良雄は思った。

                            <終わり>

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    コメント

    • 下の書き込みで、間違いがありました。
      右上ではなくて、左上ですね。
      お箸を持たない方(^_^;)
      • 1 fav
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    • YASさま
      ハハハ、お気持ちだけで嬉しいです!本当にありがとうございます!
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    • ちなみに僕の左右の認識は「心臓のあるほうが左」ですw
      • 0 fav

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    • 右上の★をポチッとしてるんですが、なぜか、カウントが30から進みません。
      MacやiPadでは駄目なんでしょうか?
      • 1 fav
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    • ディテールが、良いですね。
      面白いです。
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    • YASさま
      ありがとうございます!
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    • 全体的に軽い文章が受けているのだと感じました。

      死体が実は…といったオチは良く使われているものなのでそこが残念です。

      都市伝説にそんな終わり方の話があったような。ですから意外性はありませんでした。
      • 2 fav
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    • 螺旋さま
      厳しいご意見ですが
      ありがたく受け入れます。
      ありがとうございました。
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    • 軽快な会話文とラスト!
      思わず笑ってしまいました!
      楽しい話をありがとうございます。
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    • 南部さま 
      ありがとうございます!そうなんですよね。実は楽しい話なのでホラーコンテストに相応しいか不安だったりもしますが…
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    • カーティスさん
      ありがとうございます!手放しの絶賛、面映いです!ありがとうございました!
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    • 恐怖と笑いの心地よい組み合わせ!
      あちゃーっ、ラストは…見事に予想を裏切ってくれましたね!
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    • ラストが最高でした!!!
      すごいなって思いました!!!
      私のホームページに
      宣伝として載せても
      いいですか?
      • 1 fav
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    • らんたんさま 
      ありがとうございます!
      宣伝していただけるなんて感激です!
      ぜひお願いいたします!
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    • ラストが秀逸ですね。予想がつきませんでした。
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    • ユニモさま ありがとうございます!僕も「ラストどうなるんだろう」と思いながら書いた作品ですw
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    • なにより冒頭が上手いです。
      一気に引き込まれてしまいました。
      途中のくだりもラストへの加速部分も、そして一番の見せ場であるラストも。全て良かったです。
      個人的に、あのラストはとても良かった。不気味さとユーモアが引き立っていました。

      ★とコメントの数がとても多い作品だったので、私も便乗したいと思います(笑)
      • 1 fav
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    • チャチャ丸さま ありがとうございます!冒頭部分だけはかなり前に書いたのですがその後の展開が思いつかず、結果キャラが動いてくれてラストへと導いてくれた作品です。書いていてとても楽しい作品でした。
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    • クルマが「カペラ」なのがグッドですw あっ、もちろんストーリーもグッドです。
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    • リコさん、ありがとうございます。僕自身無免許なので「カペラ」というのがどういう車種なのか知らないのですが一番情けない響きということで「カペラ」を選びました。細かいところまで読んでいただき感謝です!
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    • 独特な感じでいいですねこの雰囲気。
      二人の会話がいい味を出しています。
      怖さはあまりないですけど、ちょっと意味不明で不思議なテイストが面白かったです。
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    • 犬見さん、コメントありがとうございます。そうですね。これはホラーというよりファンタジーに近いかもです。ジョナサン・キャロルなどが好きなので、そんな作品に近づけたらいいなと思っています。
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    • 導入部の怖がらせ方がうまい。オチも面白いです。予想以上に怖かった。
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    • ありがとうございます!オチは数日悩んでアレになりました。自分でも気に入ってます。怖いと言ってくださるのは嬉しいです!
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    • 始まり方が好きです。面白かった!
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    • あのオープニングは学生時代に書いたものの後が続かなくうん十年寝かして完成させました。ありがとうございます!
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    • すげードキドキしながら読んだ分、オチで笑いました。
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    • ありがとうございます。これをホラー部門に応募していいものかと悩んだのですが、発表の場もなく眠っていた作品だったので「アリ」だと思い出品しました。ありがとうございました!
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    • ありがとうございます。これをホラー部門に応募していいものかと悩んだのですが、発表の場もなく眠っていた作品だったので「アリ」だと思い出品しました。ありがとうございました!
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    • 今朝実家から帰ってきてこのページを見て嬉しい驚きです。実家にはPCがなく反響を知る術がなかったので。閲覧してくれた皆さん、評価してくれた皆さんに最大級の感謝を!ありがとうございます!
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    • すごく好きな雰囲気の作品でした!
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    • うまいです。。
      欲言うともう少しドキッとしたかったです。
      (^^;;;
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