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シリーズ:襲ヶ森の先の地蔵ヶ原
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襲ヶ森の先の地蔵ヶ原

作者:よもつひらさか

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    救いなんてありません。


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    襲ヶ森の先の地蔵ヶ原 2954文字

     

    「だいじょうぶ?」

    みんながそう口々に言い、心配そうに顔を覗き込むのが心地よかった。
    私は、見た目のひ弱さを利用して、よく朝礼中に倒れたものだ。
    体重は標準より少なくひどく痩せていたし、背も低かった。
    何より、色白で自分で言うのも何だけど、儚かった。
    みんな、私に優しかった。
    担任の先生にも、はっきり言って贔屓されていたと思う。
    私は、それがいつまでも続くと思っていた。
    私はみんなに守られて当然の存在だったのだ。

    それが、中学に入学と共に変化していった。
    みんな自分のことが忙しくなってしまったのだ。
    いちいち、私のことなど、心配している暇は無いのだ。
    部活動、勉強、自分の恋愛、趣味、この時期、思春期の少年少女は
    人のことなどにかまってはいられない。
    ただし、男子からはちやほやされた。私はそれだけが心のよりどころだった。
    だから、わざと男の子の気を引く術もすべて知っていた。
    冷たくしたり、優しくしたり、気まぐれに振舞ったり。
    男子を翻弄し、多くの男子から告白をされた。
    そうなってくると、女子は面白くないに決まっている。
    自分の努力の足りなさを棚に上げ、私をイジメの標的にしたのだ。
    ボス猿に従うのは、人間も同じらしい。
    ふがいない男子達は、怖気づいて一緒になって私を無視しはじめたのだ。
    それでも足りない女子たちは、私をトイレに閉じ込めて水をかけたり、
    イジメは加速していった。

    やむなく私は家に引き篭らざるを得なくなった。
    弱い者は淘汰される。とりわけ、私は本当にいやになるくらい華奢で、
    あの体ばかりデカい野獣女子には勝てない。
    当初は本当に絶望していた。
    私は、どうしようもない気持ちをブログに綴った。
    すると、同情のコメントをたくさんもらえた。
    それだけで最初は嬉しかった。
    しかし、ネガティブなだけの、つまらないブログなど、時が経てば
    誰も読まなくなる。私は仕方なく、自分の顔の一部を晒した。

    誰か、私を助けて。慰めて。寂しいよ。
    口にはしなかったが、苦しい思いを綴った。

    顔を晒したとたんに、男性の愛読者がたくさんついた。
    「元気出して。」「一人で悩まないで、僕が聞いてあげる。」
    いろんな優しい言葉の数々。
    私は小学生の頃を思い出していた。
    しかし、人間と言うのは気まぐれで、時と共にまた飽きられてしまう。

    寂しい。
    誰も私のことなど、わかってくれない。
    言葉なんて、うわべだけよ。

    私は、絶望して、左の手を薄く切ってみた。
    たくさん血が出た。私は、携帯で左手の写真を撮った。
    そして、ブログにアップした。
    何百ものアクセスがあり、心配の言葉がかけられた。
    「死なないで!」「自分を傷つけちゃだめだ!」
    嬉しい。もっと、もっと私を見て。
    優しくして。

    私はその頃から、同じ夢を見るようになった。
    それは、私がある森に迷い込む夢だ。
    細い山道は、まるで木々に飲み込まれるように続いていく。
    どうしようもなく心細い。引き返そうと振り返ると、そこにはもう、道は無い。
    深く暗い森が広がっている。帰れない。どうしようもない不安。
    森に飲み込まれた。
    お腹が空いた。喉が渇く。誰もいない、どこまでもまっすぐな道。
    不安に押しつぶされそうになって蹲ってしまう。
    そこで目が覚め、夢だと気付いて安堵する。

    夢の中まで私は孤独なのだ。

    私は不安を解消する手段のように、自分の手を切りつける。
    血が流れている。
    生きている、よかった。
    生きる証明のように感じた。
    そして、新しい傷をブログに勲章のように載せる。
    心配というカモフラージュの下に隠した下心を垣間見せぬように、
    男共は私のブログに書き込みをしてくれる。
    その頃には、手や顔の一部だけでなく、ミニスカートの足の画像や、
    か弱い女を演出する体のアイテムは全てアップしていった。

    私は夕べもまた同じ夢をみた。
    この夢は満たされぬ、私の心の象徴なのだろうか。
    所詮、うわべだけの、言葉だけの優しさ。本当に私を心配してくれる人はいない。
    親ですらも。
    今日も私は、深い森に飲み込まれて行く。
    後ろから迫り来る深い森から逃げなくてはならない。ここはどこなんだろう。
    初めて、道の先に人の姿を見つけた。私は人恋しくて、その人に近づく。
    着流しを着た、痩身の背の高い男性が、キセルをふかしている。
    どこか時代錯誤な感じがする。
    「あの、すみません、ここはどこですか?」

    男性は、横目でちらりと私を見た。
    涼しげな凛とした目元。
    「ここは襲ヶ森。」
    一言そう言うと、またキセルを吹かしだす。
    「オソイガモリ?」
    男はふうっと煙を吐き出すと
    「森に食われる前に、逃げることだ。」
    と言い捨て、さっさと歩いていってしまった。
    待って、置いていかないで。

    私はそこで目が覚めた。
    誰なんだろう。過去にあんな人には会ったことがない。
    私が創り出した、理想の男なのかもしれない。

    私はまたいつものように、同情を引くように、精神の不安定なフリをする。
    男は、こういう女を放っておけないってわかってる。
    心地よかった。
    私は、左腕に新しい傷を刻んだ。

    私は今日もあの「襲ヶ森」の夢を見る。
    今日はいつもと違う。森が迫る速度が違う。
    追いつかれてしまう。私は走る。
    木々が私の体を掴もうと迫る。
    イヤだ、やめて!怖い!
    「誰もお前のことなんて、心配してねえよ。」
    「男はお前とヤリたいだけだよ。」
    「周りは迷惑してんだ。」
    「みんな偽善の仮面を被らなければならないんだよ。」
    「本当はお前のことなんて、どうでもいい。」
    「偽善で心を満たしてるのさ。お前は見下されているんだよ。」
    「あははは。あははは。」
    木々は口々に叫ぶ。

    やめて!やめて!違う!違うったら!
    私は、一人じゃない!

    走る私の先に、あのキセルの男が見えてきた。
    「た、助けて!森に、森に飲まれちゃう!」
    私はキセルの男に追いつき、着流しの袖をつかんだ。
    お腹が空いた。猛烈に喉が渇く。
    何か食べたい。喉を潤したい。

    「あそこに行けば助かる。」
    男は道の先を指差した。
    森の出口だ。
    日の光が差し込んでいた。
    「ありがとう。」
    私は、男が指差す先に走った。
    男は優雅にキセルを吹かしながらそれを見ている。

    やっと森の出口に出た。

    こ、これは?
    開けた草原いっぱいにお地蔵様が並んでいる。
    いつ追いついたのか知らないキセルの男が私の後ろでつぶやいた。

    「地蔵ヶ原。お前は救われた。」
    「じぞうがはら?」

    振り向くとそこには、キセルの男はもう居なかった。
    今まで私を追いかけてきた森も。
    何もない。お地蔵様と私以外。
    この世界には何もない。
    お地蔵様は、草の中から生える様に点在していた。
    大きくて古いもの、小さくて新しいもの。
    大小さまざまなお地蔵様。

    これは夢、夢よね。
    早く覚めて!
    お腹が空いた!喉が渇いた!
    お地蔵様と草原と空がぐるぐる回った。
    私はその場に蹲ることしかできなかった。


    「さて、次のニュースです。〇〇県の山奥に、何とも不思議な光景が広がっています。
    何の目的で作られたのかわかりませんが、野原一面にいつの間にか、お地蔵さんが
    点在していたとのことです。地元の住人も、元々、その場所はただの野原だったということで
    首をかしげています。山の地主が山を手入れをしようとして、見つけたとのことです。
    お地蔵さんだけに、移動するわけにも行かず、関係者を悩ませているとのことです。」


    私のお地蔵さんが生えた。
    この地蔵ヶ原に生まれた。
    お腹も空かないし、喉も渇かない。
    寂しいという感情もない。

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