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シリーズ:トリップ先にお酒と果実がいっぱいあったもんで
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トリップ先にお酒と果実がいっぱいあったもんで

作者:相坂桃花

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    双子の兄と共に祖父母の家に遊びにいった二十歳の夏休み……。
    突如和風チックな異世界へとトリップしてしまった、あたし飯島早苗(いいじまさなえ)
    とある事情から超絶美形の虎男、永久(とわ)とうさぎ美少年因幡(いなば)さんと一緒に住むことになったんだけど……
    え? 村おこし? 女の子がいっぱい来るような企画を考えろ?
    よっしゃ任せろ!スマホに保存されている情報を頼りに、村おこしだー!!!
    御山(おやま)で採れる豊富な酒と果実を元手に、あたしの奮闘する日々が始まった……!


    登録ユーザー星:24 だれでも星:27 閲覧数:7637

    トリップ先にお酒と果実がいっぱいあったもんで 59208文字

     




    1夏休みになったもんで

    「だからだね、今度の主人公はバーで働いていた美しい青年にしようと思っているのだよ。過去に傷を持つバーテンの美青年が、突如異世界にトリップしてしまう! そこで繰り広げられる冒険譚。現実世界で培ったアルコールの知識をふりかざし、ヨイショされていく主人公。お姫様と秘密の恋。そのうち、旅先で出会った青年騎士に不思議と惹かれていってしまう……お姫様と騎士の間でゆれ動く主人公の気持ちはどこにいきつくのか、こうご期待」
    「こらこらこら。主人公の美青年がどーして騎士に惹かれちゃうんだ」
    「そっちの方がぼく好みだから。妹こそ、なんでぼくの妹なのに、美青年同士の恋愛に胸がキュンキュンしないんだい? ぼくの妹なのに」
    「世の中の女子が全員、そーゆうのが好きだとは限らないと知るがいい」
     無人駅のホームを抜けて、目的地へと歩き出しながらそんな会話を交わす。
     揺れに揺られて到着した山奥にある、無人駅。
     駅に降り立った瞬間、その空気の違いに“これだな”と思ってしまう。
     うちからじゃ遠く離れているから、頻繁(ひんぱん)に来ることはできないけれども、それこそ赤ちゃんの頃から、何度もやってきた村の空気は忘れようにも、忘れることはできなかった。
     地元じゃ感じられない、澄んだ空気の匂い。土の匂い。草花の匂い。
     思いっきり息を吸い込んで吐き出すと、長時間揺られ続けて強張っていた身体の緊張が、ほぐれていくのを感じる。
     つい先日二十歳になったばかりのあたし、飯島早苗(いいじまさなえ)は夏休みの長期休暇を利用して、双子の兄とともに、都会から遠く離れた山奥にある、おじいちゃんとおばあちゃんの家にお泊りしに向かっていた。夏休みいっぱい、こちらでお世話になるつもりだ。
     それぞれ持つ、旅行用の大きな荷物がそれなりの負荷になっていた。
     隣を歩く、あたしと同じ年齢の兄を呆れた目で見ると、兄は女の子が放っておかない王子様系の甘い顔で、ふぅと肩をすくめてみせた。
    「妹は人生を五割ほど損しているよ。ウエルカム、腐(ふ)の世界。ああ、そうだ。妹のスマホにお勧めのボーイズでラブなお話を十篇ほど送っているから、あとで熟読しておいておくれ。そのうち、ぼくが膝を詰めて感想を聞きに来るから」
    「……そういや、フォルダになんかメールたまってたな……って、ベースはラードな話はノーサンキューって言ってるでしょ! 普段、兄ちゃんの創作品を読んであげてるんだから、勘弁してよ。兄ちゃんのために、資料まで一緒に探してあげてるのに」
    「ふふふ。まさに妹の鏡だね。さすが、ぼくのかわいい妹。ぼくは知っているよ、今度もぼくのためにお酒に関する資料を図書館で集めてくれたことを。それを借りて、そっとぼくの部屋に置いてくれたことを! ああ、なんて健気なんだ」
    「妄想です、それは。兄ちゃんに頼まれて資料を探した記憶しかないんだけど。お小遣いでつられて探してあげた記憶しかないんだけど。どこの妖精さんだ、あたしは。つか、あたしの集めた資料はそんな話に使われる予定だったのか」
     ただでさえ、地面には傾斜があるのに、兄と会話をしていると余計な体力を使ってしまう。顔も頭もよくてスポーツ万能だってゆーのに、どーしてこうも中身は残念な野郎なのだろうか。いつの間にか、男同士の恋愛に胸を高鳴らせる人種になってるし。
     とは言っても、あくまでも二次元での同性愛ものが好きらしく、三次元では彼女が途切れたことがないリア充野郎なので、そういう意味では心配していない。
     ただし、このアクのある性格のせいか、長続きしない欠点はあるけれども。
    「ふぅ。それにしても、暑さは大したことないけど、こうも日差しがあるとぼくの玉のお肌が紫外線で傷ついてしまうね。ぼくの美貌が損なうことは、人類にとって大きな損失だよ」
    「大丈夫大丈夫。多少日焼けしたくらいで、兄ちゃんのビボーは損なわれないって」
     適当に返事をすると、ふぅ……と肩をすくめられた。
    「わかってないね、妹。若いころのケアが年をとってからモノを言うんだよ。妹こそ、ちゃんと日焼け止めをしているかい? 妹は化粧しない系女子なんだから、日焼け止めくらいはしないとダメだよ。妹の美肌が、紫外線にさらされるなんて、そんなことは許されない。紫外線カケル妹とか、ぼくは妄想で楽しむことはできるけど、ああ、やっぱりダメだよ妹」
    「かける?」
     なんか勝手にかけ算されてしまった。よくわからんので、スルーしておく。
     こういう時突っ込んで聞くと、大抵の場合で痛い目をみるのだ。あたしが。
     まあ、確かに兄の言う通り肌質と髪質には、それなりに自信がある。
     誰もが認める美形の兄と違って、どこからどー見ても平凡な地味系眼鏡なあたしにとって、人に自慢できる数少ない長所だ。
     双子だってゆーのに、二卵性のせいかあたしと兄じゃ、顔立ちがまったく違う。
     まぁ、別に自分の顔嫌いじゃないからいーけどね。人間顔がすべてじゃない。
    「しかし、ここはいつまで経ってもかわらないね。昔のままだ」
     何年経っても、ほとんどかわることのない風景に、ここだけ時間が止まったままではないかという錯覚をしそうになる。
     アスファルトではない地面は柔らかく、足裏を押し返してきた。
    「こういう大自然はいいね〜。はるか昔、ぼくが全盛期だったころを思い出すよ。ぼくってば、昔はかなりブイブイ言わせていたんだけど、すっかり丸くなっちゃって。でも、こういう澄んだ空気を吸うと、エネルギーが補充される感じがして、久々に大暴れしたくなるなぁ〜」
    「…………昔って、いつだ」
     あたしと同じ年数しか生きていないクセに、何を言ってるんだろうかこの男は。
     たまにガチで電波なことを言い出すから、油断できない。
     ……こういう電波な部分も、彼女と長続きしない理由なんだろうなぁ。
     まあ、過去に彼氏が一度しかできたことがないあたしが言うセリフじゃないかもしれないけど。しかも、そんなに長く続かなかったし。
     眼鏡をかけた地味な外見が問題なのか、モテ期など未だにきたことがない。
    「飯島さんて眼鏡で委員長キャラだよね〜」とか言われたことは数多いが、それはあくまでも見た目だけである。つーか、眼鏡イコール委員長ってどういうことだ。
     眼鏡で三つ編みお下げでも、まったく真面目じゃなくて、勉強よりもスポーツが得意なタイプだって山ほどいることを、声を大にして言いたい。
     ま、まあ……確かにはずっと、副委員長をやっていたりはするけど……。
     それは、他の人たちがやりたがらなかったから、手を上げたに過ぎない。
     みんなでやりたくないのを押しつけあって、無駄な時間を過ごすよりも、さっさと手を上げて、あたしがやります! って言った方が、てっとり早いと思ったのよね。
     そしたら、そのあとずぅっと副委員長をやるハメになったんだけど…………。
     あれ。
     そしたら、あたしのあだ名って委員長じゃなくて、副委員長って呼ぶ方が正しいんじゃねぇの?
     ったく。今考えると、委員長! とか呼ばれて返事をしていたあたしの馬鹿!
     そういえば、本当の学級委員長だった男子がすんごい複雑そうな顔をしていたなぁ……。
    「……ふぅ。あたしってば、罪な女」
     悪いことしたなぁとか思って呟くと、兄が心配そうに顔をのぞきこんできた。
    「どうしたんだい妹? 目を開けたまま、白昼夢でも見たのかい? いや、起きた状態でも見る夢を白昼夢というのだから、目を開けたままでも見ることは可能だね。そんなことよりも、いきなりどうしたんだい? ぼくのかわいい妹には、罪深き女になるような官能的で耽美な要素は欠片もないと、兄であるぼくが力いっぱいに説明してあげるから。妹を罪深き女などと罵った破廉恥極まりない下種の名前をぼくに教えたまえ。ぼくがきっちりと話をつけてきてあげるから」
     いじめられているのかい?
     などと、労わるような目を向けられ…………たんだが。
     本気で殴り飛ばしていいかな……いいような気がしてきた。
    「おや? どうしたんだい? 口元がヒクついているよ? それに顔も少し赤くなってきているね。ああ、やっぱり歩くには少し暑かったかな? ぼくが背負ってあげようか? なぁに、ぼくはこう見えても力持ちだからね。夏の暑さを乗り切るためにはスタミナよね! とか言って、焼き肉やらホルモンやらを大量に食べて体重が三キロも増えてしまった妹を背負うことも、不可能じゃな……」

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    コメント

    • カールさん、受賞のお祝いコメントありがとうございます(*´ω`*)
      楽しんでいただけたようで、安堵しております。これからも、日々勉強し、精進してまいります(●´∀`●)
      • 1 fav
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    • ねこまんまさんのイラストで初めて気がついて探しましたよ!w
      いやいやいやいや~~~、安心の一作!
      ワタクシ、ライトノベルにはちょっと抵抗があったんですが、見事に払拭されましたね!
      というか、最初に読んだライトノベルがことごとく素人の作品だったのがいけなかったのか・・・とにかくどれもこれも、すべて読みながら想像ができないものだったんですよ~。
      必ず、ん?どういうこと??ってなっちゃうんで、今の人はこれでも通じるんだなぁ・・・とか思ってました( ̄▽ ̄;
      でもやっぱり違いましたね!w 作家目指したり意識してる人はちゃんと書いてますよね!
      走ってるシーンに 「タッタッタッタ・・・」なんて表現、
      • 3 fav
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    • 使いませんよね!ww
      あーそうか!わかりました!
      昔で言うところの「新井素子」だ!
      今更ながらに、ライトノベルってのがどういうものかわかりました・・・w(遅
      あっ!それなら自分の作品にも、それっぽいのがあるかも!

      しかし、これを読んで「お礼に鯛焼きを・・・」の掛け合いがよくわかりましたよww 読み直すと二度おいしいですねw
      黄色いもふ尻野郎、( ゚д゚)ホスィ…ww
      • 1 fav

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    • コメントありがとうございます(●´艸`)ヾ
      少しでも楽しんでいただけていればいいのですが…。ライトノベルはとてもふり幅の広いジャンルだと思いますので、きっとカールさんのお好みに合う作品もいっぱいあると思います。効果音等は作品の雰囲気に合うか合わないかで、使い分けをしておりますので、次の作品では「タッタッタ!」とか出てくるかもしれません。その時は笑って突っ込んでやってください(笑)
      「お礼に鯛焼き」では、できあがているキャストなので使い勝手がよ……げふげふ。奴らが出たがったので、やつらが出たがったので、手前味噌ですが、失礼させていただきました。
      どうぞ黄色いもふ尻野郎をよろしくお願いします。
      • 3 fav

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    • いやぁ、言葉にはしませんでしたが、面白かったですよ!ずっとニヨニヨしながら読みましたですよ!
      まぁ、面白くなかったらコメント書きませんがww

      言葉が足りなくて申し訳なかったですが、「 タッタッタ!」でもいいんですよ、ちゃんと統一されてるのならw それは未熟なんではなく、手法になりますもんねw

      あと一番大事なことを忘れておりました!
      相当遅いですが、
      *:..。o☆★o。..:*受賞おめでとうございます!*:..。o☆★o。..:*
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    • この度、拙作にてありがたくも受賞をさせていただくことになりました。
      正直、うれしいという気持ち以上に、おっかなびっくりでオロオロしておりますヽ(д`ヽ)
      身に余る光栄に色んなとこが、キュッとなっています。
      これから、この作品がどうなるか未知の領域ですが、少しでもよいものになるよう精進いたします。
      閲覧ならびに応援してくださった方、これから興味を示してくださる方。
      本当に、本当にありがとうございます(つд;*)

      相坂桃花拝
      • 3 fav
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    • コメントありがとうございます。読んでいただけて、とても嬉しいです。少しでも楽しんでいただければ、幸いです。どのこにも愛情を注いでおりますが、特定で好きだと言っていただけると、また格別におもはゆくなります。うちの因幡うあーにも、伝えておきますね。
      つーか、思いっきり気恥ずかしいわねこたん!!
      • 2 fav
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