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シリーズ:引き籠もり公爵の受難【第二回】
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引き籠もり公爵の受難【第二回】

作者:斑鳩青藍

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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     引き籠もり公爵の元に、新たな使用人がやって来た。
     天然キャラ全開で、早くも公爵リュシオンの機嫌が悪くなる。


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    引き籠もり公爵の受難【第二回】 6942文字

     

     「貴方の事は、紹介者の方から聞いていますよ。ようこそ、ハルカ。それで―――、えっと…」
     不意に、青年の端正な顔が歪み始める。ハルカの背後にいたもう一人と視線が勝ち合った為だ。
     ―――言うべきか、言わざるべきか。
     青年の中で、妙な迷いが生まれる。この少年は、確実に爆弾を落とす。いや、もう半分落ちかけている。修正しようとする前に、少年の方が早かった。
     「僕どうしようかと思っていました。噂通りだったらどうしようかと」
     「噂というと?」
     「口が悪くて、性格も悪い。人間嫌いで、引き篭もりだとか…あ、すみません」
     「い、いえ…」
     青年の顔は、必死に何かと戦っていたが、ハルカは知る由もない。爆弾をついに落とした事に気づいていない。青年はついに耐え切れず笑い声を立てた。それも遠慮がちに。
     「あの、公爵さま?」
     「失礼…、私はこのロズウェル家の執事アージェントと申します」
     「え…」
     「お前―――、いい度胸だな。散々入り口を塞いだ挙句、俺に噛み付き、これから世話になろって言う当主の欠点をよくもまぁ並べやがって」
     「は―――?」
     「噛みついた…、ハルカ、その方が当のロズウェル公爵殿下ですよ」
     ぷるぷると笑いを必死に堪えるアージェントは、今頃遅い修正をした。
     「はい―――?」
     一層不機嫌極まりない男に見下ろされ、ハルカの顔から血の気が一気に引いた。
    ※※※
     ロズウェル公爵家は、三公と言われる三つの公爵家の中でも筆頭家と言われている。三公爵家供、大公を輩出するボルジア大公家の流れを組むが、ロズウェル家から歴代大公を三人輩出している。故に、血縁関係では最も濃く、現当主は現リュシュテンブルク公国大公クレマン・ボルジアの息子だと言われている。
     だが、そんな彼にいつかおかしな渾名がついた。毒舌家、性格が悪くて口も悪いなど。
     殆ど公の場に姿を見せぬ為、引き篭もり公爵と呼ばれているのだが、性格も災いしてその評価たるや散々なのは確かだ。
     「―――笑いすぎだ、アージェント」
     ロズウェル家の若き青年執事は、未だ笑っている。
     「し、失礼…、くく…」
     「す、すみませんっ。僕、まさか貴方が本物の…」
     「ハルカもこう言ってます。許してあげては…、ねぇ?公爵殿下」
     どうも笑わずにいられないアージェントが、顔を逸らし肩をぷるぷる震わせている。いくら勘違いとは言え、本人がいる中、口が悪いだの性格が悪いだの言ったのは、アージェント以外言ったのは初めてだったのだ。
     しかも、噛み付いたとは―――、実に新鮮である。
     「…いいだろう。悪いと思うならその代価、体で払え」
     「そんな、僕そっちの趣味ありません」
     ついに、アージェントが爆笑した。



     リュシュテンブルク公邸に、これも珍しい人物の姿があった。大公クレマンは表情を引き締めたが、その人物もまた機嫌が悪い事は直ぐに理解った。でなければ、わざわざ出てこないからだ。
     「―――次期大公を、あのリュシオンに決めたとか」
     「やはり、貴女の意見を聞かず決めた事にお怒りに?叔母上」
     そこにいたのは、一人の老貴婦人である。今尚、公国中枢に多大なる意見力をもつ嘗ての大公女テレ−ズ・コーラル公爵夫人である。
     「そんな事をいっているのではありません。時期尚早と言っているのです、大公殿下。国の混乱を招く事になるとは思わないのですか?」
     「他にというと、叔母上の所のダルトン・コーラルか、サージル公爵家のテオドールですか。どちらも、私と同じいい年ですよ」
     「二人には息子がいるでしょう」
     「叔母上としては、孫を大公にと?」
     「大公殿下、妾はそんなに野心家ではありませんよ。凡そ半世紀ぶりに大公家が入れ替わる。公国の運命を担うであろうそんな時に、その主をそんなに簡単に決めていいものかと言っているです」
     「三十年前も、似た事を言われた」
     三十年前と聞いて、テレーズ・コーラル公爵夫人の眉がピクリと動いた。全ては公国の為―――、大公家で育った彼女はその教えをこれまで崩す事はなかった。鉄の女、女帝と揶揄されながらも彼女の意見は正しいと、クレマンも思っている。そして、今回もそうなのだろう。
     三十年前、恋人と愛し合いながら結婚に至らなかったクレマン。以後その女性が忘れられず、妃を迎える事がなかった。彼のこの叔母に対する唯一の抵抗。
     「理解りました。ですが叔母上、私は決して彼が私と彼女の子供だったから選んだのではないと言う事を、いつか御理解になるでしょう」
     それ以外に、あの者に何の魅力があるのか。テレーズ・コーラル公爵夫人には理解らなかった。
     半世紀振りの大公選出―――、いつもは静かなリュシュテンブルク公国の首都だが、噂好きな民衆はさっそく囁き合う。
     「―――そりゃあ、何と言っても有力候補はサージル公爵家だろう」
     「大公家に近いからなぁ」
     「ロズウェル公爵家は?」
     「あの引き籠もり公爵様?ないな。毎晩女を部屋に連れ込んでいるそうだからな」
     ―――また、噂が増えている。
     嫌な汗を背筋にかきながら、少年は珈琲に口をつけ、前に座る男の仏頂面の顔を見ると逃げ出したくなった。何せ、知らなかったとは言え、本人に向かい悪口を並べ、その本人に散歩に付き合えと外で二人っきりにされた。
     「と、とてもいいお天気でよかったですね」
     「誰かの頭と同じようにな」
     ―――まだ怒ってる…。
     「こう言う場所をご存知とは知りませんでした」
     「普通の奴は知らんだろうよ」
     ―――確かに。
     思わず、心の中で相槌を打つ。ここで「そうですね」など言ったらとんでもない事になりそうな気がする。噂を大声で言っている男たちはまさか、庶民が集う食堂に噂の公爵がいるとは思っていないのだ。
     リュシオン・ロズウェル―――三公筆頭公爵。噂の大半は当たっていると言える。毒舌家で引き籠もり、人間嫌い、―――後の噂は人々の勝手な想像だ。
     執事のアージェントに言わせれば、リュシオンがそうなったのは理由があると云う。
     ―――ちゃんとしていれば、立派な公爵様に見えるんだけど。
     いつもの黒地のジュストコールをブラウスの上に羽織り、背に流した黒髪は手櫛で簡単に直したのみ、腰に佩いた剣だけが立派なのがアンバランスだ。
     ―――散歩に剣など必要なのかな?
     「ハルカ」
     「は、はい」
     「俺から離れるな」
     「は―――?」
     人気のない道に差し掛かり、ハルカの心臓は爆発寸前だった。筆頭公爵に失礼を働いたのだ。殺される―――、いろいろな事が同時に頭の中を駆け巡る。
     「お前―――また妙な勘違いしてるだろ。いいから言う通りにしろ。本当に死にたくなかったらな」
     そう言って、リュシオンは腰の柄に手をかけた。行く手に数人の男が立ち塞がったのはその時である。
    ※※※
     ―――私が何故、あの人と結婚しなかったか理解る?リュシー。
     突然何を言うのだろうと、彼は母を振り返った。
     今まで一度も、父について語らなかったのに、だ。
     「三公のバランスを維持する為よ。大公殿下を支え、国を安定に導く。それが三公爵の務め。どれか一つが大きくなってはならない」
     ロズウェル公爵家と言う家に生まれた以上、守らなけばならないと母は云う。その時は理解らなかったが、今にして思えばあれは彼女自身への言葉でもあったのだと思う。故に母は、大公クレマンの求婚を固辞し続けた。
     「もちろん、あの方は嫌いじゃない。気さくで陽気で楽しい人。愛していたわ。でもね、駄目なの。ロズウェル公爵家と大公家は元は一つ。より、権力を持ったと周りは思うわ。だから、貴方には言わなかった。大人になるまでは、黙っていようと決めたの。本当の父親が誰か」
     リュシオンは、父親が誰か知らずに育った。当主だった祖父も教えてはくれず、それで困った事はなかったから彼も敢えて聞こうとはしなかった。既に父親が恋しいという歳ではなく、成人した彼はロズウェル公爵の当主となった。
     八年前のその日、大公が暮らし政務を行う公邸に始めて行き、大公クレマンと顔を合わせた時、リュシオンは察した。この男が父親だと。
     正式に親子だと公表した訳ではない。実子であると云う証拠はない。

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    作者紹介

    • 斑鳩青藍
    • 作品投稿数:7  累計獲得星数:7
    •  斑鳩青藍(いかるがせいらん)と申します(≧∇≦)
       ファンタジー系、中華風、和風BL小説好きで、自分でも執筆したりしています。応援コメント、感想、レビューお持ちしておりますm(。_。;))m ペコペコ…
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