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シリーズ:復讐の隠し味
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復讐の隠し味

作者:Hiro

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

     旦那の浮気現場を目撃した女は、恐るべき復讐を実行しようとしていた……。


    登録ユーザー星:9 だれでも星:2 閲覧数:359

    復讐の隠し味 3219文字

     

     バカみたいな鮮やかなピンクを、口に塗りたくった若い女。そんな女が街中で恥じらいもなく肌をさらし、スーツ姿の男にまとわりついていた。
     男は女の挙動を困ったふうにしながらも、無理にそれを振りほどこうとはしない。
    「いったい、なんなのあの女」
     前方で行われる光景にあたしは足をとめる。
     歩行の流れをとめたあたしに、行き交う人々の怪訝な視線がむけられる。だが、そんなの今は関係ない。
     女はあたしの視線などに気づかず、なおもベタベタと男に絡みついている。よくもあんなことが人前でできるものだ。女の倫理観を疑う。
     いいや、ちがう。そうじゃない。問題は女の方じゃない。男のほうだ。
     なぜなら、自らにまとわりつく女を受け入れているのはあたしの旦那であるのだから。

       ◇
     
    「絶対にゆるさない」
     リビングの床にバックを叩きつけ、爪を噛む。
     あの後、ふたりを捕まえようと人混みをかきわけて追ったのだが、どこかの店に入ったらしく見失ってしまった。いったいふたりでどこへ消えたというのだ。その行方を考えると怒りにたぎった血が、頭の血管を破裂させてしまいそうになる。
     だいたいなんだ旦那のヤツは。
     キミだけを永遠に愛し続けるとかいいつつ、結婚して三年も経たないうちに他の女に手を出すなどありえないだろ。あの男の言う永遠とはなんと短いものなのか。
    「旦那のヤツ。いったいどうしてくれよう」
     あたしは裏切り者に加えるべき制裁を考える。
     離婚届をつきつけるか?
     いや、それでは女のもとへ走る手助けをするようなものだ。制裁は離婚ではなく、あいつがあたしを裏切ったことを心の底から後悔するようなことでなきゃならない。
     では、それにはなにをすればいいだろう。
     携帯のメモリを全部消去す?
     財布から金や免許を抜いておく?
     職場に浮気現場の写真をバラまくか?
     あるいは、スーツに針でも仕込んでやろうか?
     いくつもの手段が頭を駆け巡るが、どれも子どものイタズラの延長にしかすぎない。
     もっと、心の底から自らの罪を悔いるような罰を与えなければ。
     だが、そんなことを考えていてもあたしの主婦としての習慣は、いつの間にか夕食の準備をはじめさせた。当然のように身につけたエプロンを外し、台所の床にたたきつける。
    「なんで、あんな男のために」
     あいつは裏切り者だ。そんな相手のためにメシなど作ってやれるもおか。この渦巻く怒りを晴らさぬかぎり、メシなど作ってやるもんか。
     そんな時、黒い影が目の前を通りぬけていった。
     次の瞬間、あたしの頭にひらめいた。
    「これよっ!」
     旦那はゴキブリが嫌いだ。
     もちろんあたしも嫌いだが、ゴキブリを見ただけで情けなく慌てふためく旦那ほどではない。
     故に、裏切りの報復にこれ以上適したものはないだろう。
     あたしは熱心に家中のゴキブリを探しだし、片っ端から寸胴に放り込んでいく。パスタをゆでる為に買ったおおきな寸胴の底には、光沢のある茶系の身体が幾重にも重なり、頻繁に触手や手足を蠢かしている。
     我ながら、よくぞこれほど捕まえたものだ。
     気の弱い人間なら、これを見ただけでトラウマになることは間違いない。当然、ゴキブリ嫌いの旦那も同じことになるだろう。いまからその反応が楽しみだ。
     だが、見せるくらいではあたしの気は晴れない。せめて、あたしがこいつらを捕まえるために払った労力の分は苦しんでもらわねば。
     そのためにはどうしたらいい?
     あたしは考える。
     そして、裏切り者への報復として、相応しい作戦を思いついた。
    「こいつらをあいつの好物《ハンバーグ》に入れてやろう」

       ◇

     見事な夕食ができた。
     ゴキブリ入りハンバーグの他にも、ゴキブリを芯にして巻いた玉子焼き。佃煮風にしたゴキブリとゴキブリ入り味噌汁。そして、うす茶色の炊き込みご飯も当然ゴキブリ入りだ。炊き込みご飯に入れたゴキブリは、ご飯に色が移ったせいか白くなっている。まぁ、これはこれで気持ちが悪くていいだろう。
     若干、色が茶色ばかりなのが気になるわね。プチトマトをそえて、付け合わせにキャベツくらいは刻んでおこうか。
     これでよし。
     それにしても、ここまで手をかけた料理は久しぶりかもしれない。

     すると、玄関の鍵が開く音と「ただいま」という声が聞こえた。
     どうやら旦那が帰ってきたらしい。
     あたしは自らの企みがばれぬよう、猫なで声をだしてそれを向かえる。
     ダイニングに直接やってきた旦那は、お土産にとケーキの箱を携えていた。
     あたしはそれを嬉しそうな表情を作って受け取ると、お礼をつげる。だが、その表情の裏では名探偵さながらに相手の思考を読み取っていた。
    ――いつもはしないご機嫌とりをするのは、やはり後ろめたいことがあるにちがいない。
     ふっ、この程度であたしを騙そうとは片腹が痛い。だが、あたしは相手の罪悪感の表れにに気づくそぶりはまるでださない。
     代わりに、夕食がハンバーグと炊き込みごはんであることを教えてやると、旦那は喜んでみせた。
     ハンバーグが好物だけに子どもっぽい。つきあい出した頃は、そこが良かったのだけれど。
     …………。
     いかんいかん、あやうく情に流され、決意がゆらぐところだった。
     裏切り者には死の制裁が必須だ。殺すまではしないが、せいぜい苦しんでもらおう。なに、万が一の時はちゃんと保険もかけてあるし問題ない。
     愛しいゴキブリ入りハンバーグに目を降ろすと、そこから二本の触手がはみ出し、ピクピクと動いているのがみえた。
     しまった、肉に包んだせいで焼きが弱かったのか? なるべく、生に近い食感を味合わせてやろうとしたのがいかなかったのかもしれない。
     生きたままのゴキブリが口に入り、口のなかを這いずり回ったとしたら、予想外のファインプレーとなったろう。だが、このままでは旦那の口に入るまえにゴキブリの存在が気づかれてしまう。
     あたしはすかさず旦那の視線の向いている先を確認する。すると、旦那はつけっぱなしになっていたテレビからながれる天気予報に気をとられていた。
     チャンスだ。
     相手の注意が逸れている隙に、触手のはみ出したハンバーグを素手で掴み、目が届かないようゴミ箱の中へと捨てる。
     ゴキブリ入りハンバーグをひとつ無駄にしたことにはなったが、なにハンバーグは沢山作ってあるのだから構わない。

     天気予報を見終えた旦那は、テーブルのおかずを確認すると「今日は豪勢だね」と、嬉しそうに言う。そして、ケーキ以外にもお土産があると告げた。
     なんだろう。まさかいきなり離婚届ということはあるまい。
     警戒しながら、さしだされた手をみると、そこには小さな箱がのせられていた。その中央には光り輝く指輪《リング》がひとつ。
     それは結婚三年目の記念の品だという。
     あたしは慌ててカレンダーを確認する。どうして忘れていたのだろう、今日は結婚記念日ではないか。
     じゃぁ、いったいあの女は?
     あたしが疑問に思っていると、旦那は指輪を買うまでの経緯を照れくさそうに話してくれる。なんでも、指輪選びに妹を付き合わせようとしたら派手になっていて驚いたらしい。旦那の妹は、結婚式に見ていたが当時は学生だったせいか、あんなに派手ではなかった。でも言われてみればたしかに面影はあった。なにより、この男はこんなにスムーズに嘘をつける性格はしていない。
     つまりは、すべてがあたしの思いちがいだったのだ。
    「愛しているよ」
     旦那はそう言って、あたしの手に指輪をはめてくれた。
     やっぱりあなたは裏切ってなかったのね。なのにあたしったら……。
     彼はプレゼントの照れ臭さを誤魔化すようにテーブルに座ると、自分の箸を手にしてハンバーグを半分に切り別けた。
     たくさん並べられていたせいだろう。旦那はまだ大きな塊から、ゴキブリが顔をだしているのにも気づかず、口へと運ぼうとした。
     いけない、旦那はあたしを裏切ってなんていなかったのに。
     裏切ったのは、彼の誠実さを信じられなかったあたし。
     罰を受けるべきはあたしなのよ。
     永遠の愛を守る為、あたしは彼の箸からハンバーグを奪いとると、そのまま自らの口へと放り込んだ。

    〈了〉

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    コメント

    • 面白かったです!ちょっと、怖いですが・・ハンバーグは良く作るのですが、さすがにゴキブリ入りハンバーグは作ったことありませんね・・
      触りたくないし!!
      一応誤字を発見したのでご報告。
      生に近い食感を味合わせてやろうとしたのがいかなかったのかもしれない。
      いけなかった
      ですよね?
      • 1 fav
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    • ご感想ありがとうございます。
      私は普通のハンバーグすら作ったことはありません。
      作品にリアリティをだすために、ちょっと作ってみようかな?

      誤字はイベント終わったら修正させていただきます。(イベント中は修整できない仕様)
      • 1 fav

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    • ひき肉だけではなく、安いバラ肉のようなものをある程度自分で刻んで(2~3㎜くらいに)混ぜるとよりおいしいですよ!肉のにおいが少ないものも多いので、牛脂を溶かして混ぜ込むと、よりいいと思います!
      • 0 fav

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    • はじめまして。ゴキブリの登場の所で、オウ、ノーーーーッ!と口に出てしまいました。
      • 2 fav
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    • はじめまして~……でしたっけ?
      ちょこちょこお名前を拝見させていただいてるので、そんな気がしませんでした(汗

      ちょっぴりアレな本作ですが、楽しんでいただけたなら幸いです♪
      • 0 fav

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