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シリーズ:廃城のガーディアン
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廃城のガーディアン

作者:梟 由香里

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    ご主人様は『必ず帰る』と言っていました。
    だから私はご主人様が帰ってくるまで、いつまででもこの城を護り抜きます。

    戦闘用魔導人形のロゼッタの長い長いお留守番。


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    廃城のガーディアン 9131文字

     

     激しく金属がぶつかり合う、鋭い音が辺りに響き渡っている。
    「ぐわっ!」
     次の瞬間、男の悲鳴が上がり、それに続くように恐れ慄く複数の人間の声が森の中に消えて行く。
     その後に残されたのは、大型犬サイズの青い四足の異形に体を飲み込まれる男と、人間味の無いのっぺらぼうのような容姿をした人形で、その背後には大きいが古びた城がそびえ立っていた。
     そして彼等が立つのは森と城に横たわる河にかけられた黄ばんだ煉瓦作りの橋の上だった。
    『任務完了、不許可侵入者を排除しました』
     喋る口を持たぬはずの人形から女の声がそう言うと、手にしていた大鎌に付着した敵の血を振り払う。
     そう、彼らは――彼女等はこの城の門番であり守護者だった。
    「グルルル……」
     青い四足の異形が完全に男を飲み込み終わり、男を飲み込むためにほぼ真っ二つだった身体が閉じて普通の四足の獣のような姿になる。
     しかし獣と言ってもその身体に毛は一本も生えてはおらず、代わりに不思議な紋様が刻まれていた。
     不思議な文様が刻まれているのは人形も一緒だった。
     顔と首元、腹部に幾何学模様が描かれている。
     この模様こそ単なる無機物だった彼等に命を与え、思考し、学習する存在たらしめている源である、魔力で描かれたルーンだった。
     ちなみに人型人形の方はロゼッタと言い、オートマタと呼ばれる魔導人形の女性型。
     女性型らしく胸元が心持ちふっくらとした造形をしており、真っ白の身体の腰に2つ魔力増幅と装飾を兼ねた緑の宝玉を付け、染み一つない華やかな赤いフリルのついたドレスのような白い裾と大鎌を握る腕には袖があしらわれていた。
     青い犬のような異形は正式名称シューティングスター・メルクリウス。しかし長いのでメルクリウスやメルと呼ばれている。
     獣型のオートマタだ。
     ロゼッタはメルクリウスについては状況に合わせて呼び方を変えている。
    『メルクリウス、その男を早く魔力源化して私に魔力を分けてください。次またいつ襲撃があるかわかりません。次の準備を』
    「アォン」
     メルクリウスは短く吠えると身体に刻まれたルーンを輝かせる。ロゼッタに魔力を送っているのだ。
     ロゼッタも身体のルーンと宝玉を輝かせながら受け取る。
     人間一体から得られる魔力は、飲み込んだ獲物にもよるが戦闘回数に治すと大体二回分くらいだった。
     だから襲撃がある時は出来るだけ敵を捕獲しメルクリウスに捕食させている。
     実のところ魔力源は元々別の所から補給していたが、今はそれはあまり使わずに、メルクリウスに搭載されている非常用魔力生成装置の魔力で動くようにしている。
     何故、彼等はそんな面倒くさくてコストパフォーマンスの悪い方法を取って戦っているのか?
     答えは城にあった。
     今、彼等が護っている城には主が居らず、本来の魔力供給源であり、司令塔であるスフィアを制御する人間が居ないからだ。
     主を失ったスフィアは新たな魔力の補給が出来ず、こうやってロゼッタとメルクリウスが存在しているだけで残存している魔力を砂時計のようにジリジリと減らしている。
     だから戦闘時にスフィアの魔力に頼るのは自分達の寿命を削るに等しい行為なのだ。
     いつだったか主が城を離れる時に『必ず戻ってくるから、それまで城を頼む』と言っていたので、主が戻るまでロゼッタもメルクリウスも倒れるわけにはいかないのだ。
     しかし主が城を離れてそろそろ19.000日……人間の寿命で考えればとうの昔にその灯火は消え失せているはずなのだが……。
     でも主は『必ず戻る』と言っていたので、ロゼッタはその言葉を胸に日々城の守護にあたっている。
     最初はロゼッタ以外にも人形近衛兵やメルクリウスの仲間が居たのだが、スフィアの残存魔力を考えて隊長機権限でロゼッタ自身とメルクリウスの中でも一番優秀な一匹を選んでそれ以外の個体の活動を停止させた。
     別に何処かへ挙兵するわけでも無くこの城を護るだけなら、一般人形近衛兵数百人分と言われる自分とメルクリウスが居れば時々やってくる不届者程度の相手はそれで充分だと判断したのだ。
     ロゼッタは一軍の長を任されるだけあり、造られたオートマタでありながら人間と同等かそれ以上の知能や判断力を兼ね備えていた。
     現実、主に虚城を任されてから現在に至るまでこの橋から先に通した者は居ない。
     全て排除し、護りきっている。
     不届き者は毎日来るわけではないが――いや、一時期毎日一日何組もの様々なパーティが引切り無しに押し寄せてきた時期もあったが、それも乗り切って今は静かな警備の日が続いている。
     あの時はメルクリウスの非常用生成装置では魔力供給が間に合わずに貴重なスフィアからの魔力に手を出すのを避けられず、非常に歯がゆい思いをした。
     基本ロゼッタは橋の入口に立ちふさがるように周囲を警戒しているが、最近城に意識を向ける生体反応が無い日は橋を離れて城の中に入って主との思い出に浸る事もある。
     まあ、念のためロゼッタが場を離れてもメルクリウスに警備を続行させておいているが。
     主が城から居なくなるのと同時に主の家族も、城に仕えていた召使も消えてしまった。
     一体何があったのかは知らない。
     ただ……主が城を離れる時、非常に物々しかったのは憶えている。
     国から派遣されたと思われる兵士数人と一緒に主のみならず奥様もぼっちゃま、お嬢様、一家全員馬車で連れて行かれてしまった。
     でも主は『必ず戻る』と言った。
     だからロゼッタはその命をスフィアの魔力が尽きようとも貫き続けるつもりだ。
     だが、スフィアが力を失えばスフィアに統べられている自分達はガラクタに帰す……それが問題だった。
     ロゼッタはスフィアが納められている動力室を訪れると、金糸の台座に抱かれた淡い水色を放つスフィアに念じた。
    (スフィアよ……一日でも長くこの城を護らせて……)
     戦うための知能はあっても目も鼻も口は勿論、本来感情も持たぬはずのロゼッタだが、長い時を経て様々な事を学習した結果、感情ではないか? と自分でも感じるものを得ていた。
     今スフィアに語りかけた事は、命令の順守を超えた――きっと人間で言う『願い』なのかもしれない。

     ホームメイドは勿論、庭師すら居なくなった城はアッという間に荒れ果ててしまった。
     どの部屋も埃にまみれ、美しかった庭園は雑草だらけになった。
     戦うために造られたロゼッタだったが、主を待つ内にこのままではいけないのではないかと考える様になった。
     主がいた頃の状態へ現状復帰し、いつでも最適な状態で帰りを待てるように出来ないか? と考えた。
     華やかで美しかった頃の様子はロゼッタの中に鮮明にインプットされているので、それを真似てみれば良いはずだ。
     そう思い始めたのは主がいなくなって1000日を超えたあたりからだった。
     しかし、記憶はしていてもなかなか上手くいかず最初は頭を悩ませた。
     特殊金属で出来た鎌は握っても箒を握った事の無かったロゼッタは木という脆弱な材質相手に力加減がわからず、作業する前に柄を握りつぶしてしまったり、柄を握る力加減をやっと覚えても振るう力加減を間違えて何本も壊してしまい、何とか使いこなせるようになる頃には倉庫にあった在庫の箒は最後の一本を残して全部使い果たしてしまっていた。
     残った最後の箒でしばらく掃除していたが、今度は経年劣化で壊れてしまい、仕方ないので魔力は使うが風魔法を応用して埃を吹き飛ばす事にした。
     安易な魔力消費は戦闘にも響くが、主の事を思うと何もせずにはおられず自分流だが慎重に掃除する事を覚えていった。
     箒での失敗で材質に合わせた力加減が必要だと学んだロゼッタは、何を触れるにも細心の注意をしながら掴む。
     どれもこれも壊れたら魔力で傷を修復できる自分達とは違って、元には戻せないから。
     食器を拭く練習はメイド達が使っていた食器で練習した。
     やはり最初は掴むだけで壊してしまっていたが、箒の時の経験もあってこっちは意外と早く壊さず綺麗にするコツを覚えた。
     次は洗濯。
     相手は布という、今までで一番柔な材質が相手だ。
     最初に手を付けようとした時、別の城から攻めてきた多数のオートマタ兵と戦闘した時より緊張たのを憶えている。

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    コメント

    作者紹介

    • 梟 由香里
    • 作品投稿数:59  累計獲得星数:10
    • はじめまして梟 由香里です。
      とりあえず登録してみました。

      色々雑食で、ギャグから痛そうなのまでムシャムシャしちゃう性質です。
      自分の事を語るのは得意じゃありませんが、投下する作品はシリアスな傾向にあるように自分では感じています。
      自分ではオチャメやってるつもりの時もあるのですが。
      色々読んでいただけると嬉しいです。

      基本的にはピクシブの方がメイン倉庫です。
      こっちにはある程度体裁の整っているのを選んで持ってきたり、整えて公開したりしてみています。
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      fleur de…(オリジナル/連載中/完結近し):http://upppi.com/ug/sc/item/9620/
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      参加イベント情報:http://upppi.com/ug/sc/item/9673/

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