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シリーズ:流転王子_04_希望の朝
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流転王子_04_希望の朝

作者:小春十三

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    これにて完結


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    流転王子_04_希望の朝 12551文字

     

     ラピスの広場には大勢の人だかりができていた。
     かつての王、ヒューゲルの忘れ形見、グラウス王子の処刑。悲壮なものもいれば、国の変遷なのだと斜に構える者、単純な露悪趣味など様々。
     急場作りのステージではファイアスの紋章入りの外套を着た司祭が帝国律法を片手に雲行きを見ていた。
     ラピスはファーレン山脈の麓に位置し、季節の変わり目に激しい雷雨が訪れる。
     それは若き王子が死に急ぐことを先王ヒューゲルが怒り、嘆いているのかもしれない。
    「汝、ヒューゲルの子、グラウス・ラズラードに間違いないな」
     壇上に担ぎ上げられるグラウスは手枷足枷、さらに屈強の兵士に両脇を固められている。
    「我が名はグラウス・ラピス・ラズラード。誇り高きヒューゲル・ラピス・ラズラードの子だ」
    「汝はファイアス帝国に仇を成すため、ラピス国国務大臣、ライザックの暗殺を企てた。相違ないな?」
    「何を言う! ライザックこそがヒューゲルに反逆の罪を着せ、国家転覆を企てた逆賊だ! 今一度審議を求める!」
    「審議は認められない。グラウスよ、今一度問う、ファイアスに牙を向けたことを悔い改めるのであれば、逆賊の咎を雪ごう」
    「我が父はファイアスに忠誠を誓っている。それは私も同じだ」
    「ならば重ねて問う。汝はラピス国家に反逆を企てたことを悔い改めるな?」
    「何度でも言う。ライザックこそが逆賊であり、奴こそがファイアスに仇を成す存在だ!」
    「ふむ。ならばもう問うまい」
     堂々巡りを辿る審議は最初から出口が決められている。せいぜい醜く泣き叫べば王家に期待するものも居なくなると踏んでいたライザックだが、彼の変わらぬ凛々しさと毅然とした様子に聴衆は皆同情的になる。
     しかし、刑の執行は秒を読む段階。グラウスの両隣に立つ兵士が彼の首を断頭台の枷に押し付ける。ここにきてようやくグラウスは覚悟を決めたのか無様にもがくこともせず、それでもなお父の仇を睨みつける。対するライザックは歪な笑いを浮かべ、あつらえた椅子で踏ん反りかえっていた。
    「グラウスよ。罪深き所業を悔い改めることなく旅立つ汝にも、エルジュランドの神々の慈悲深き思し召しがあらんことを……」
     司祭は壇上を降り、続いて兵士も降りる。
    「どうにもできない」「グラウス様、おいたわしや」「これでラピス王家も終わり」
     民衆のささやく声は彼の耳に遠く響く。
     斧を構えた兵が振りかぶり、刃を吊る綱目掛けて振り下ろす。
     死に直面したグラウスは恐怖から、視線を斧を振る兵士に向けてしまう。
     ――!?
     瞬間が緩慢になり、視界が澄み切る。青い稲妻の鎧に身を包んだ兵士の口元がニヤりと笑ったのが見えた。
     ――ズダーンッ!
     さめざめとした空気を破る轟音。悲鳴を上げる聴衆。いまだ吊り上げられたままの刃。グラウスは……生きている。
     斧を構えていた兵士がよろめき、膝を着く。肩を抑えており、分厚い鎧のへこみ具合からその衝撃が読み取れる。
    「上だ! 火薬銃で狙われている! ラピスの残党だ! 皆、動くな、伏せろ!」
     広場に響く男の声。民衆は頭を押さえてうずくまる。
     続いてライザックの元へと投げ込まれる怪しげな玉。シュウシュウと音を立てて白い煙を吐き出し、視界を奪う。
    「ラ、ライザック様を守れ! 城へ戻るのだ!」
     視界が覆われ混乱する場に凛とした声が響く。兵士は皆それに従い、ライザックを取り囲むようにして立つ。
     突然の混乱により民衆はひれ伏し、兵士は立ち尽くす。その広場において自由に動き回るのは……?

    「なんだ、何が起こってるんだ?」
    「レグル君、ちょっと待っててね」
     戸惑うグラウスの背後に誰かが近づく。身動きを封じられた彼は振り返りたくともそれは叶わない。しかし、そのハスキーな声には聞き覚えがある。アイラだ。
     彼女は彼を戒める首枷の止め具をはずし、グラウスを解き放つ。
    「アイラ、また君に助けられるなんて……」
    「今度の出し物はギロチン脱出マジックだね」
    「やめてくれよ……」
     してやったりと笑うアイラだったが、急にまじめな顔になると、まだ不自由な彼に抱きつき、唇を押し付ける。
    「ん? んぅ〜」
     今は盛っているときではないと知りつつも、彼女のやわらかく甘い唇に触れると拒む気持ちが起こらない。それどころか生きている実感が沸き、自ら舌を絡めてしまう。
    「んぅ〜、んちゅぅ〜、ちゅちゅ、ずずず……ずちゅ……、んはぁ、はぁ……」
    「アイラ、どうした……ぐぁ!」
     キスの後はにっこり満面の笑顔と平手打ち。さっぱり読めない彼女の行動にグラウスは困惑してしまう。
    「ほらほら、恋人たちの再会は後でしっぽりすっぽりやってくれないか? 風が吹いたら煙幕も消える。手品師がネタ見せるわけにはいかないだろ?」
     頬に真っ赤なもみじ模様を残すグラウスにマルコの冷静な声が聞こえる。
    「マルコまで、いったいどうして?」
    「おいおい、もう少し気の利いたことが言えないのか? 今回、お前が主役だろうに……」
     マルコは髪留めを外すとやれやれといった様子で手枷の鍵穴をかちゃかちゃといじる。すると頑丈そうな鉄枷はあっさりと落ちる。
    「ちょ、なんでこんなこと」
    「俺は男を抱えるつもりはないの。ほら、自分で走れ」
     それは足枷も同じで、ものの数秒とかからない。
    「鍵穴攻略は得意なんでね」
    「マルコ、馬鹿なこといってんじゃないよ。レグル、さっさと逃げるよ!」
     このチャンスを逃すわけにはいかないと一座の皆に続くグラウス。しかし、ライザックを庇う兵士の一人が、褐色の肌をしていたのをみつけ彼は踏みとどまる。先ほど斧を構えた兵士が、急に気になりだしたから……。
    「ちょっとグラウス君、何してるの!」
    「すまない、確かめたいことがあるんだ。アイラは先に行ってくれ」
    「もう、レグル君ってば一人じゃなにもできないくせにぃ〜!」
     踵を返すグラウスに気づいたアイラは逡巡するも毒を食らわば皿までと決め、彼を追うことにする。
    「まちなよアイラ」
    「止めないで」
     引き返す彼女の手首をチーヤがぎゅっと掴み、何かを掴ませる。
    「止めないよ。ただ、こいつも出番が欲しいってさ」
     手に握らされる丸い玉。先ほどの功労者、煙球。どうして彼女がこのような物をもっているのか? 先ほどの火薬銃による狙撃など合わせて考えると一座の面々の素性が気になりだしてしまう。
    「ありがと、チーヤおばさん!」
     けれど今はそんな暇もない。自分にできること、やりたいことは愛する男の背中を支えてあげること。アイラは後ろ手を振りながらグラウスの後を追う。
    「姐さんだっての。次の公演じゃ罰として雑用一ヶ月だからね!」
     嘯くチーヤは満足気に笑うと、ホーマンの待つ馬車へと走った。

    ++

     混乱の最中、ライザックは息もたえだえになり、両脇を兵士に抱えられてようやく城へと戻る。
    「ふぅふぅ、おい、すぐに兵を出せ! グラウスを捕らえるのだ!」
     民衆の前で大恥をかかされたライザックは興奮さめやらぬ様子で兵に号令をかける。けれど、兵達は下がらず整列を崩さない。それどころか帯刀した束に手をかけ、今にも切りかかってくるような殺意を向ける。
    「何をしている! こうしている間にも賊は遠くへ行ってしまうぞ。そうだ、国境の兵に早馬を走らせるのだ。けしてラピスから出すな!」
     口角から泡をとばして叫ぶ大臣を前に、やはり誰一人として動こうとしない。
    「貴様ら、わしを誰だと思っているんだ。ラピス王国の国務大臣の言うことが聞けないのか!」
    「きけませんな」
     前に出た一人が腰の剣を抜きながら冷たく言い放つ。
    「な、なんだと。まさか貴様もグラウスの一味か!」
    「ライザックよ、この顔を忘れたか?」
     兜を脱ぎ銀の髪を自由にさせる。褐色の肌と鋭く冷たい青い目には、ライザックも見覚えがあった。
    「貴様はカリウス……」
    「王子の顔は忘れていないようだな」
     細い剣を元家臣の喉へと向けるカリウス。
    「くくく、お久しぶりでしょう、カリウス様」
     脂汗を流していたライザックだが、状況を理解することで冷静さを取り戻す。
     武芸、学術、政治に優れた王子。その肌のせいでラピスの民からの支持は薄いが、家臣の間では一番期待されていた。それはライザックも同じこと。

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    作者紹介

    • 小春十三
    • 作品投稿数:4  累計獲得星数:
    • 小春十三と申します。エッチなお話やドラクエの二次創作をしております。ドラクエ二次創作はピクシブにて掲載中。リンクよりお越しください。
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